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7月15日(月) 海の日

 さざめく波の音。香る潮の風。

 足元に広がる真っ白な砂は、歩く度にサクサクと鳴り響く。


「ん……気持ちいい」


「あぁ……そうだな」


 吹く海風に目を細め、呟けば、後ろから付いてくる彼はそう答えてくれた。


「いきなり『海に行こう』って言われた時は、さすがの俺も焦ったけどな」


 そんなここは、香椎浜の『御島グリーンベイウォーク』。

 自宅の最寄り駅から電車で九分、徒歩で十三分、計二十分弱で訪れることのできる小さな砂浜だ。


「しかし、何でいきなり海だったんだ?」


 その中の、足元に落ちた貝殻を拾いながらそらは尋ねてきた。


「…………『海の日』だから?」


「何で、自分で疑問系なんだよ……」


 呆れたようにため息を吐かれてしまうが、そう言われても仕方がないではないか。意味なんてないのだから。


 今そらが、拾った貝殻を指先で遊びそうしてポイと後ろへ捨てたように、ただ何となく、気が向いたから行っただけに過ぎない。


「……この辺、あんまり来ないから知らなかったけど、未来的になったね」


 辺りを見渡せば、すぐ上の歩道では本格的なランニングをしている男性から犬の散歩をする女性、習い事なのか自転車を漕ぐ少年がいれば、少し遠くの岩場では釣りを行う同学年らしき人らまでたくさん見て取れた。


 また、近くには大きなショッピングモールもあり、車の出入りも激しい。

 高速道路の建築も行っているらしく、その作りかけの土台もあれば、向こうに存在する人工島からは見るからに色んな意味で高そうなマンションが眺められるなど様々なものが詰まっている。


「まぁ、都市開発されているらしいしな。いつまでも同じではない、ってことだろ」


 そう呟くそらの目には、何か眩しいものを見つめるように優しく、それでいて羨むような、諦めた何かを愛おしむような感情が込められていた。


「…………かもね」


 私は反射的に答えてしまう。

 気が付けば、いつの間にか私は波打ち際まで近づいていた。そらも、いつの間にか私の隣に立っている。


 二人して、私はしゃがみ、彼は立ったまま……押しては返す眺めながら。


 ――この時が永遠に続けばいいのに……。


 ふとそんなことを思ってしまうけれど、すぐに頭を振って自分で否定する。永遠など存在しない、と。

 太陽は沈み、そしてまた昇るように……世界はただ流転しているだけで終わりはいつか、必ず来るのだ。


 でも、だからこそ不安だった。

 いつとも知れない終わりは、いつ来るのか。確かに、着々とそれは傍に迫ってきているはずなのに、私には知覚さえできない。


「…………しょっぱい」


 海水に指先を浸し舐めてみれば、当たり前だけれども塩辛い。少し涙が出た。


「…………ね?」


「……あぁ、しょっぱいな」


 もう片方の指も浸し、彼の口に含ませれば、苦笑とともに頷いて同意してくれる。

 だからわたしも、頷き返す。


 でも、本当は……少しだけ塩の苦みを感じていた。


 ――いつまでも同じではない。


 その言葉が、私の心に妙なほど居座っていた。

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