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計画はご利用的に



 さて、とにかく……例のワーウルフ、正体がまさか子供であったとは、トシロウもシャロも知るよしもない。よって、逃がしてしまったことへの自分自身へのフォローとしておく。


 今度見つけたら、その時に捕まえればいい。幸いにも、目撃証言は多数あるのだ。この街に現れる頻度は、少なくないはずだ。



「けど……なぁ」



 ただ、捕まえるといっても……ワーウルフを……その子供の姿を目にし、思うところがないと言ったら嘘になる。


 ぼろぼろの、服とも言えない布切れ。ただそれのみを身に纏った子供は、まるでこの世の全てを恨む……そんな瞳をしていた。それは、子供が宿すにはあまりにどす黒い色だ。


 その辺りの事情を察するに、子供の背景に何があるか……あまり、いい想像はできない。故に、諸々の話を子供から聞く必要もある。


 カーミの言うように、理由があれば盗みを働いていいわけではない。しかしシャロの言うように、なんの理由も聞かずに罰する、というのも違う気がする。


 だからトシロウは、まず捕まえ、理由を聞く。それを決める。理由が聞いて何が変わるかはわからないが、何かは変わるかもしれない。



「よし。自分達も、あの子を捕まえる……いや、保護する方向でこの依頼に挑むとしよう」


「はい!」



 これも何かの縁だ、もしまたあの子を見つけたら、今度は見逃すことはしない。ちゃんと保護して、彼から話を聞く。


 これは依頼として発表されている以上、捕まえれば依頼金が出る。だがこれは、賞金欲しさにやるわけではない。トシロウの、そしてシャロの中の良心がそうさせる。


 そうして気合いを入れる中で、ポンポンと肩を叩かれた。



「やぁーやぁー。盛り上がってるねお二人さん」


「おぉ、ホーラ」



 いつの間にいたのだろう、背後にいたのはトシロウ達の新しいパーティー仲間であるホーラだ。彼女は、その青い髪を揺らしながら二人へと視線を向けて。



「どしたの、二人ともそんな意気込んじゃって」


「いやぁ、実は……」



 どうやら、会話の内容までは聞いていなかったらしい。本当につい今しがた来たのだろう。なので、かくかくしかじか……先ほど起こった出来事から先ほどの会話に至るまで、かいつまんで説明する。


 それを聞いたホーラは、ふんふんと頷き……一言。



「じゃ、そのワーウルフのぼろっちい子供を見つけたら捕まえたらいいんだね!?」


「言い方!」



 ホーラに話した内容と、彼女が理解した内容……別に違って伝わっているわけではないのだが、彼女の言い方に思わず頷きたくなくなってしまう。


 確かに服とも言えぬ布を纏ってはいたが。



「まーその子供の噂ってのは、アタシも聞いたことあるよ。あちこちで盗みを働く小汚ない子供、いやしい獣、迷惑しかかけない害虫……」


「ほ、ホーラ?」


「……って、いろんなとこで耳にするよ」



 ホーラによる評価が、あまりにも酷評であったために戸惑ってしまうが……それは、いろんなところでの評価であるらしい。


 実際にホーラの意見だとしたら、すごく怖い。



「被害にあったって思える店の人間はもちろん、冒険者も好き放題だよ。なんせ、子供のワーウルフ一匹捕まえればけた違いの報酬が貰える。みんなそれなりに目も光らせてるよ」


「ってことは、その子供を狙ってるのは自分達だけじゃない、と」


「そゆこと。むしろ、下手なモンスター退治よりもそっちのが厄介」



 言ってしまえば、子供を捕らえれば報酬が貰える。それも、そこいらのモンスターを退治するよりももっと多目の報酬金が。ならば、楽で稼げる方に集中するのは必死だ。



「ま、捕まえようと思って捕まるもんでもなし。時期を待つしかないと思うよ?」


「そうだな……」



 何事も、それに集中しすぎると周りが見えなくなるものである。その依頼ばかりに集中して他のものがおろそかになってしまえば、それこそ本末転倒だ。


 今はとにかく、先ほどのような幸運を願うしかない。



「では、あの子捜しは……」


「あぁ、積極的には捜さない。今までいろんな人達が追って、それでも捕まえられてないんだ。追えば捕まるってわけでもなさそうだし」



 追えば捕まるのなら今にも追うが、そういうわけでもないらしい。シャロの問いかけに、首を振り答える。


 こういうのは、気長に待つに限るのだ。物欲センサー、という言葉もある。捕まえよう捕まえようと思えば思うほどに、それは難しくなるのだろう。


 なので、この件を頭には入れても、積極的には捜さない。


 できるものとできないもの、それらを判別できなければ、ここでは生活していけない。ほどよく計画を立てなければ。



「じゃあじゃあ、今日もモンスター退治に出掛けない!? 出掛けない!?」


「そうだな……何か、いいものでもあれば……」


「それも、事前にピックアップしておきました!」



 やけにモンスター退治に行きたがるホーラは、すでにその候補を決めていたらしく、数枚の依頼書をテーブルに並べる。


 湖に生息するアリゲーター退治、道を塞ぐゴーレムをどうにかしてほしい、ドラゴンの卵探し等々……なるほどほとんどが、ホーラ好みであろうものだ。つまり、その体を目一杯動かしたいのだろう。


 ならば、その期待に応え……ホーラが選んだものから、これから当たる依頼を選んでいく。三人となったパーティーならば、多少難しそうなものもクリアできるだろう。

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