セクハラ店主は太っ腹
武器屋で武器選びを店主に任せ、十数分。これといった希望武器もなかったため、ひとまず店主に任せることにしたのだが……
「やっぱあんちゃんには、剣だろうな」
言って店主が持ってきたのは、片手剣。トシロウにはそれが良い物かわかるはずもないが、見た感じ綺麗な剣だ。
銀色に輝く刃、白い柄、鞘……それを持ってきた店主の顔は、どこか自信ありげだ。
「それも、そんじょそこらの剣じゃ話にならねぇ。あんちゃん、剣は扱ったことないんだろう……が、使いこなせば一端の使い手になりうるだろうよ」
「そ、そうですかね」
正直、剣というか武器は生活に困らない程度に扱えればいいのだが……ここまで推してくれるのだ、無下にもできない。
「嬢ちゃんには……この杖だな」
「わあ、かわいい」
次にシャロに差し出されたのは、先端に赤い宝石のようなものが埋め込まれた、ピンク色の杖だ。それがかわいいかどうかは、彼女の感性に任せよう。
それを受け取り、シャロはくるくる回している。
「いい棒さばきじゃねぇか」
「おいエロ親父」
言い方に悪意を感じる。
「手触りもいいし、軽い。素敵です店主さん!」
「そうだろうそうだろう! それに、その杖は体内の魔力を制御するための杖さ。魔力を杖に流し込めば、その宝石に魔力が溜まっていくって寸法よ」
「わあ」
どうやらその杖は、単なるセクハラ道具ではなくシャロにぴったりのものらしい。その会話の内容がトシロウにはわからないが、二人の間では通じあっているので問題ないだろう。
それに、必要なことならば後でシャロに聞けばいい。
「それにしても……確かにこれも手にしっくりくる。相当良いものなんでしょうね」
「はっは、まあな」
ちょっとセクハラまがいの店主ではあるが、その腕は確かなようだ。さすが、カーミが紹介してくれただけある。
「それに、カーミ嬢からの紹介ってならこっちも下手な仕事はできないってもんよ」
紹介されたのだから当然と言えば当然だが、どうやら店主とカーミは顔見知りのようだ。二人の関係も気になるが、わざわざ聞き出すほどでもないだろう。
それにしてもこの世界、至れり尽くせりである。
「武器については初心者だし……これに決めます」
元々選んでもらうつもりで来たのだ、早々に選んでもらったならば言うことは何もない。
ということで、この白い剣を購入することとしよう。問題はお金だが……
「おぉそうかい。じゃあまあ、カーミの紹介ってことでこんだけまけたとして……こんなもんか」
「……お、おぉ……」
この世界の文字は読める……が、残念ながらその意味のすべてまではわからない。ここの、お金の単位が以前の世界のものとは違うため、どれくらいかわからない。
だが、シャロの反応を見る限り決して安くはないのだろう。
「や、安くなってこれですか……?」
「あぁ。ちなみにこれが本来の値段だ」
「家が買えるじゃないですか!?」
二人の会話を傍らに、とんでもない内容和訳話しているようだ。これらの武器の本来の値段は、家を買えるほどに値するらしい。
そこまで良いものでなくてもいいのだが……
「それをここまでまけてやろうってんだ、あり得ねぇことだぞ?」
「むむぅ」
悪徳物売りと騙されている客……の構図に見えなくもない。
が、実際はこちらにメリットのある話なわけで、家を買える値段からかなり安くしてくれているようだ。それはわかる。
わかるが……冒険者初心者どころか武器を持つのすら初めてなのだから、もう少し壊れても問題ないような武器にしてもらいたかった。
「初心者には重すぎないこれ……?」
「何言ってんだ、初心者が多少雑に扱おうがびくともしねえよ。ランクが違うんだランクが」
店主曰く、これらの武器はすんなり壊れてしまうほどやわではないようだ。見た目から、そこいらの武器と同じようには見えないが、ランクとやらが良いらしい。
だが果たして、安くなったところで買えるだけの財力があるかどうか。
「なあに、金は出世払いで構わないぜ」
まるで心を読んだかのように、店主が笑う。安くしてくれる上に後払いで構わないとは、どれだけ太っ腹なのだろう。
これは、紹介してくれたカーミにも感謝しなくてはならない。
「なら、ご厚意に甘えさせてもらいますよ」
「あ、ありがとうございます!」
「はっは、なあに。カーミの紹介に加え、こんないいケツした奴ならサービスもしたくなるってもんよ!」
……素直に厚意は嬉しいのだが、さっきからケツケツ言うのはなんなのだろうか。もはや口癖なのだろうか。
男であるトシロウはもはや気にしていないが、女性のシャロは話題に上がる度に顔を赤らめている。
確かに、シャロはスタイルが良いし、こうして見るといいラインをして……
「と、トシロウさん!?」
「な、なんでもない……」
邪なことを考えそうになっていた頭を壁に激突させ、邪念を振り払う。突然の奇行にシャロは軽く怯えるものの、まさか正直に理由を言えるはずもない。
決してやましいことはない。とはいえ……確認のためだけとはいっても、なんだかんだやはりやましいのだから。
「ま、そいつで底辺のモンスターでも狩ってりゃ、手に馴染むだろうさ」
「な、なるほど?」
要は、使って慣れろということだ。ぶん投げた、と思われるが実際には的を得た方法だ。
どれだけいい武器でも、下手な武器でも、結局は使ってみないとわからないのだから。
「ま、武器の調整から相談、何か聞きたいことがあるならまた寄れや。安くしとくぜ、ケツのあんちゃんに嬢ちゃん」
「あっはは、ケツの部分だけ消し去っといてください」
「ははっ。ま、頑張ってけや」
鼻で笑われてしまった。最後の最後までケツばかりの店主であったが、この先も世話になることもあるだろう。
なので多少のセクハラには目を瞑ってもいいかもしれないが、シャロはなんとか逃がしたい。
セクハラ太っ腹店主から軽いエールを受け、二人は武器屋を後にする。




