秋は涼しく、心もひんやり
私には、好きな人がいる。もう高校生なんだ、いても可笑しくない年頃だと思う。
その人は特別格好いいわけでもなければ、スポーツや運動ができるわけでもない。どうして、好きになったのかなんて覚えていない。
風がススキを揺らす音がする。涼しくなってきたせいか、体が少し震える。
一目惚れ、だったのだと思う。あいつは、屈託なく笑うから、だから、その笑顔に惹かれたんだと思う。
「ねぇ、お願いだから、早く来て」
その言葉をどうして言ったのかはわからない。寒かったからかもしれないし、淋しかったのかもしれない。あるいは両方。
あいつに、夕方五時にススキ畑の前で待つって書いた、手紙を渡して、そのまま直接ここにきた。今は、4時半を回ったところ。
――来てくれるのかな。
一度、そんなことを考えてしまったら、もう止まらない。来てくれないんだ。私は所詮、底辺なんだ。なんて。考えて、苦しくなって、涙が落ちた。
「わりぃ、遅くなった……まだ、十五分前だからセーフだよな」
早すぎるんだよ、と彼は言ったから、私は。
「来てくれてありがとう。私、私、あなたに伝えたいことがあるんだ! 好きなんです! あなたのこと……」
叫んだ。彼は――。