お風呂でご奉仕
「ちょ、ちょっと恥ずかしいかもですね」
「メイ、これが勝負に関係あるというの?」
そわそわするひかりと、訝しげにメイさんを見つめる琴音さん。
「もちろんだよ~! これは、決してメイさんの趣味でみんなにあられもないバスタオル姿になってもらったわけじゃないから~ねっ♪」
「いや、メイならありえるだろ。あたしはまだ疑ってんぞ」
「あらあら~。メイさんそうだったの?」
「だとしたら生徒会会計として抗議します!」
「いやいやそんなことないってば。でもメイさん眼福です♥」
「やっぱお前の趣味だろこら!」
インベントリからおなじみのハリセンを取り出したナナミに叩かれるメイさんは、それでも嬉しそうにニコニコ笑っていた。
そんな目の前のありえない光景に、僕はただただ沈黙しているほかなかった。
だって、普通はこうして男女が同じ浴室に入ることは少ない。
男子更衣室と女子更衣室は別のマップだし、性別によって自動的に浴室マップも別々に固定されているからだ。だから本来、僕たち男が入っている浴室にあっちの女子側の更衣室扉が開くことはないんだけど、パーティーメンバー設定とギルドメンバー設定で入浴する場合は別で、男女で混浴することも可能になる。もちろんメンバー全員が承認した場合のみだ。たぶん、恋人同士とかで入れるようにするためとか、ジェンダーフリーのこととかあるんだろうけど、ともかくパーティーメンバー設定で入ったことで、今、僕の目の前にはバスタオル姿の女の子たちが五人もいるという桃源郷が広がっていた……。
と、そんなところでひかりがそっと僕のそばにやってくる。
「ひ、ひかり」
「ユウキくん……あの、わ、わたし、おかしくないですか?」
「え? あ、う、うううん! もちろん!」
「そ、そうですか。よかったぁ……」
ホッと息を吐くひかり。けれど僕はひかりを直視出来ない。
そんなの当たり前だ。ひかりはまさにお風呂上がりなのかという感じで、白いバスタオルたった一枚をぐるりと巻いただけの格好なんだから! チラッと見れば、ひかりなんかもう胸元がすごいことになっていて、僕は思わずまた唾をのんでしまう。くっ、また理性と戦わなきゃいけないのか! ていうかこれ僕への試練なんじゃないの!?
あんまりここに長居しているのはヤバイ。僕はメイさんに話をうながすことにした。
「メイさんっ! そ、それで一体ここで何の勝負をするつもりなんですか?」
そんな僕の言葉にみんなの視線が集まる。
メイさんはニヤ、と微笑んで口元を押さえながら答えた。
「むふふ。それじゃあみんなもいろいろと疑問があると思うので、そろそろ最後の勝負の説明をします!
――第三勝負! 恋人は癒やし! 疲れた身体を癒やしてあげよう!
というわけで、最後の勝負では恋人として、パートナーして相方のユウキくんを癒やしてあげようという内容になります!」
『癒やし?』
声が揃う僕たち。メイさんは続けた。
「場所はここ、お風呂場! 癒やし内容は……なんと自由です! 身体を洗ってあげるとか、一緒にお風呂に入るとか、何でも好きにやっちゃってくださーい!
それから、今回は順番制ではないから、ひかりも琴音も一緒になってユウキくんを癒やしてあげて大丈夫だからね! あまり長いとのぼせちゃうし、ユウキくんも持たないかもしれないから、制限時間は三十分で! というわけで――勝負開始っ!」
ピピー、とどこかから取り出した笛を鳴らすメイさん。
いきなりの勝負開始についていけない僕たち。ていうか癒やしって何だ? 僕は一体何をされるんだ!?
なんて困惑している中、最初に動いたのは琴音さんだった。
「そういうことね……ひかり、悪いけど譲れないわよ」
「え?」
ひかりがまだ動揺しているうちに歩き出した琴音さんは、真っ直ぐに僕のところへ来て、がしっと僕の手首を掴んだ。
「ユウキくん、こっちへ」
「え、えっ? こ、琴音さんっ!?」
そのまま琴音さんに引っ張られた僕は、シャワーの前の風呂椅子に座らせられ、琴音さんはシャワーヘッドを手にしてお湯を出した。
「お風呂に入るなら、まずは身体を洗うことから始めないといけないものね。ユウキくん、私が身体を洗ってあげる」
「え、え、えええっ!?」
「ユウキくんを癒やしてあげることがこの勝負だから。私が気持ちを込めてちゃんとご奉仕するわ。そうね、やっぱりまずは頭から洗うべきかしら。こっち、向いてくれる?」
「で、でででもっ!」
「いいから」
隣の椅子を手に取り、僕と向かい合う形で腰掛ける琴音さん。座るその瞬間に、バスタオルの隙間から胸元や大切なところが見えそうになってめちゃくちゃドキッとする。いや装備だから勝手に外れるような展開にはならないはずだけどそれでもそりゃこうなるよ!
「はい、それじゃあ洗うわよ」
「え、あっ」
シャーと温かいお湯が僕の頭にかけられる。
琴音さんはまずお湯だけで僕の髪を軽く梳くように流し、それからシャワーを止めて備え付けのシャンプーを手に出した。琴音さんの手の中に粘度のあるシャンプーが収まる光景が、なぜか無性に鼓動を早める……!
「ユウキくん、目に入らないように気をつけていてね」
「は、はははいっ!」
そして琴音さんの両手が僕の頭を優しく包み、泡が広がっていくのが感覚でわかる。
頭を下げつつ目を閉じていた僕は、そこでそっと薄目を開けてみた。
するとまずは琴音さんの綺麗な足が見え、目だけを動かして上にいくと、琴音さんの大切なところに視線が移っていき、バスタオルはシャワーのお湯で湿り始めていて――
「わあああああダメダメダメだーッ!」
「きゃっ! ご、ごめんなさいユウキくん。どこか痛かった?」
「え? あ、いいいえそうじゃなくてっ! っていうか僕のほうこそごめんなさい! ぬ、濡れちゃいましたよねっ!?」
突然動いてしまったせいだ。琴音さんの手元が狂い、シャワーのお湯が琴音さんにも思いきりかかってしまって、琴音さんは頭もバスタオルも濡れてしまっている。
「気にしなくていいわ。そのためにもこういう装備をしてきているんだし。それより、ユウキくんの方は大丈夫?」
「は、はい……」
「そう。ならいいの。じゃあ続けるわね」
そうして再び僕の頭を淡々と洗い始めてくれる琴音さん。
もはやこんな状況で僕に琴音さんを止める術はない。というか、これが勝負内容になってしまっている時点で僕には何も出来ないんだ! そうだ! 決して喜んで受け入れてるわけじゃないんだ! 頭を洗ってもらえるのが気持ち良いからじゃないんだぁぁぁ!




