クラスメイト救出
僕は軽くなっていくように感じる身体で走り出し、2Fを駆け巡っては雑魚モンスターたちを倒し、屠って、消滅させていく。
その意気揚々とした狩りは、まるで自分が最強のプレイヤーになったかと錯覚出来てしまうくらいで、やられる心配なんて一切なく、ただただ気持ち良く狩り続けることが出来た。それは僕の実力がどうのではなく、それくらいに琴音さんのプレイヤースキルが高く、支援が素晴らしいということだ。
他のMMOでも体験したことがある。琴音さんのような、あらゆる意味でレベルの高い支援職がいるだけで、僕たち前衛やパーティーメンバーは思う存分に全力を発揮出来るんだ。結果として狩りの効率は上がり、充実した狩りを行うことが出来る。まさに支援職の真骨頂である。調子に乗って進みまくって、どれだけ敵に囲まれようとも、まったく怖くもなかった。
そして僕と琴音さんは、気づいたときにはもう2Fを半分以上制覇していた。
「琴音さん、MP大丈夫ですか?」
「ええ。ユウキくんの火力が高いおかげで戦闘も長引かないし、そもそもユウキくんを回復させる機会が少なすぎるから余るくらいよ。もっと激しくてもいいわ」
「あはは。これ以上となると、ここではちょっとボスくらいしかいないので」
「ならボスでも構わないわよ。ユウキくんと私なら問題ないはず」
髪を耳にかけながら宣言する琴音さん。
うん、確かにこの人となら、どんなボスに突っ込んでも問題なさそうな気がするよ。
なんて気を抜いていたとき――
「――ユウキくん! 琴音! 気をつけてーッ!」
後ろからメイさんの大声が聞こえてくる。
何事かとそちらを見れば、メイさんたちは揃って僕たちの方を指し示し、「前! 前!」と叫んでいた。
前を見る。
そこに、何かから逃げてくる二人の女の子の姿があった。
「きゃあああムリムリムリ~~~~~~!」
「た、助けてくださぁ~~~い!」
一人は《クレリック》の女の子、もう一人は《メイジ》の女の子。
そんな二人は僕にも見覚えのある人で……っていうかクラスメイトのサヤさんとヒビキさんだ!
「サ、サヤさん!? ヒビキさん!?」
「え!? ――あっ、ユウキくんだ! た、助けてー!」
「ボスにおわれてるのぉ~~~~!」
「ええっ!?」
二人を追いかけてきているのは――以前も戦ったことのある、あのどす黒い邪気を纏った《ダーク・プリースト》だった。
僕と琴音さんは瞬時に戦闘態勢へ戻り、二人を呼ぶ。
「サヤさんヒビキさん! こっちに!」
「私たちの後ろに隠れて!」
「「は、はい~~~~!」」
言われたとおりに僕たちの背後へ逃げてくる二人。
だが、そのうちの一人――
「きゃあっ!?」
クレのサヤさんが途中、崩れた瓦礫に躓いて転んでしまった。
サヤさんが振り返るときにはもう、《ダーク・プリースト》が目の前に迫っている。
「きゃあああああっ!」
「――ッ!」
悲鳴を聞く前に僕は駆けだしていた。そのタイミングでは既に琴音さんがいくつもの支援を僕にかけてくれており、しかもそれだけじゃなく――
「《セイクレッド・プレイス》!!」
琴音さんは転んだ子を中心に神聖域呪文を唱え、サヤさんを回復させつつ迫っていた《ダーク・プリースト》を弾き飛ばす。
こいつは闇種族だからこの聖域の中には侵入出来ない――が、それは通常Mobの話。相手はボスだ。あっという間に聖域を力づきで破壊されてしまったが、しかしそれで十分僕は間に合った。
「はあああああっ!」
両手の双刀で《ダーク・プリースト》を斬りつけ、タゲを引き受ける。
同時に敵が咆哮をして、わずかに減っていたHPゲージが回復しつつ跳ね上がった。僕と琴音さんのレベルに反応して強さが変わったのだ。視界に表示される敵のレベルは60。僕と琴音さんの平均値をとっているようだ。
僕はサヤさんに逃げてもらおうかと思ったが、怯えているのか震えて動けないようだった。無理に起こして逃げてもらうより、ここで僕が守った方が安全だと判断し、僕はサヤさんを背中に守りながら前を見据える。
視界に表示された支援アイコンの状態を察し、僕は声をかけようとして、
「琴音さ――」
「《ゴスペル》!!」
が、その前に琴音さんが呪文を唱え僕の双刀が光る。
すごい。かけてもらおうと思っていた呪文が言う前に飛んできた。しかも以前かけてもらった《ゴスペル》が切れる一秒前にである。さらに琴音さんは、《エンゼル・フェザー》でサヤさんにバリアを張り、守ってくれた。
優秀すぎる支援に感謝しつつ、僕はただ全力で戦う!
「――《ソード・ダンス》!!」
――結果から言えば、僕たちはボスにも圧勝。
琴音さんの支援の力は凄まじく、《ダーク・プリースト》は僕の怒濤のクリティカルスキル連発でほとんど何もさせずに勝利することが出来た。たぶん、呪文でも貰えば結構なダメを受けたんだと思うけど、それを使わせることもなく圧倒出来たのは間違いなく琴音さんのおかげだ。
「ふぅ、メイさんちょっと焦っちゃったよ。でもボスさえ瞬殺なんてすごいね」
「あたしも焦ったわ。特にその子が転んだときはやべえと思ったし」
「くぅ、羨ましい戦いぶりだった! 僕も参戦したかったよ! ユウキくん、今度は僕と一緒にイベントダンジョンにも行こう!」
「ふん。オレが盾をする必要もなかったか」
「万が一はなかったようねぇ~♪」
「見事なコンビネーションでしたね」
駆け寄ってきた審査員のみんなが声をかけてくれる。
「ユウキくんっ、琴音さんっ! だ、大丈夫でしたか?」
「うん、平気だよひかり。ありがとう」
「ええ、問題ないわ」
ひかりもホッとした様子で息をついていた。
無理もない。当時は僕とひかりであの《ダーク・プリースト》を倒すのにはちょっと苦戦したんだから。
そしてひかりは、
「……琴音さん、すごいです」
と、琴音さんの方を見つめながらぽつりとそんな一言をもらした――。




