懐かしいダンジョン
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《ラトゥーニ廃聖堂 1F 信者の間》
というわけで、僕たちが続けてやってきたのはこのダンジョン。そう、以前生徒会主催の元に実装されたあのダンジョンである。
入り口の、まだ敵が存在しない安全地帯でメイさんが話し始めた。
「みんなも知っている通り、次の勝負はここ、《ラトゥーニ廃聖堂》で行います! なぜここかというと、敵が全部闇種族でクレ系のひかりと琴音にとって戦いやすい場所だから。それと、既にレベルがだいぶ上がっている二人にとっては程よい中難易度になっているから。どちらも一度攻略していて、内部のことがわかっているから、戦いに集中出来るというのもあるね」
なるほど、と納得の僕たち。
元々はイベント用に実装されたこの場所だけど、現在は中級者たちにとってレベリングを兼ねた金策狩り場として有名だ。特に《パラディン》や《モンク》といった聖属性スキルを持つジョブにとっては非常に狩りやすいところになっている。
「最近はあまり来ていなかったけど、レベリングでイベントの後もよく来ていたわ」
「ちょっと懐かしい感じがしますね……がんばりますっ!」
ある程度慣れ親しんだ場所だからか、ひかりも琴音さんも自信満々だ。
「ここならまずデスペナはないだろうから安心だね。けどボスだけは気をつけるように。ボスはこちらのレベルに比例して強くなるからね。審査員のみんなは、万が一のときは三人を助けてあげてもらえるかな?」
「ああ、わかったよ」「御意」「はぁ~い」「わかりました」
生徒会のみんながそれぞれに答えて、メイさんが「ありがとう~」と返す。
「うん、それじゃあそろそろ始めようか!
では――第二勝負、相方の役目! パーティープレイでユウキくんをサポート!
ひかりと琴音には、それぞれユウキくんとペアのパーティーを組んでもらって、このダンジョンを攻略してもらいます。審査員のみんなは、それぞれのペアの戦いぶりを見て、どちらがよりユウキくんの相方にふさわしい活躍をしているか、それを判断してください。では、さっきのジャンケンで決めたとおり、先行はひかり。ユウキくんとひかりのペアパーティーで、ここの1Fをぐるりと一周して2Fに向かってください。2Fからは琴音のターンになります。
では――勝負開始!」
メイさんの言葉に従い、事前にひかりとパーティーを組んでいた僕はひかりと一緒に駆け出す。みんなは少し離れた後方から追いかけてくる、といった構図だ。
――ボロボロに朽ち果てた元聖堂。信者たちが祈りを捧げたと思われる場所も、ベンチやら何やらが見るも無惨に変わり、埃っぽく薄暗い室内は不安感を煽ってくる……というのがここでの最初の印象ではあったけど、今はもうただの一ダンジョンとして慣れてしまったこともあり、むしろ廃墟に飛び込むようなワクワク感すらある。何度来たってこのリアルな荒廃感は楽しいな!
「懐かしいね、ひかり」
杖をギュッと握って前を見つめていたひかりに、隣で走りながら声をかける。
ひかりはハッとして僕の顔を見てくれた。うん、やっぱり緊張してたみたいだ。声をかけてよかった。
「は、はいっ。ここで、ユウキくんと再会出来たんですよね」
「うん。でもあのときは驚いたなぁ。だってダンジョンの奥で女の子が一人で攻略しようとしてたからさ。しかも殴りクレ」
「えへへ……たまたま相性の良いダンジョンだったので、わたし一人でも割となんとかなっちゃったんですよね」
本当に、もう懐かしい思い出になっている。
でも、あの時の記憶は今も鮮明に思い返すことが出来た。
「今じゃ、ひかりに憧れて支援希望から殴りに転向した人たちだっているしね。そういう人にはここ、聖地みたいになってるみたいだよ」
「ええっ、そ、そうなんですか? なんだか恐れ多いです……」
「でもすごいことだよ。だってさ、あのときはひかり以外誰もいなかった殴りクレなのに。それをひかりが変えたんだよ。自身のプレイスタイルを貫いてることによってさ」
「わたしが……ですか?」
「そうだよ。だから、自信を持っていこう。僕たちなら、大丈夫!」
「ユウキくん…………はいっ!」
ひかりがいつもの笑顔に戻ってくれる。よし、これなら大丈夫そうだ!
なんて話をしていたうちに、視界にモンスターたちが現れ始めた。《リビングデッド》と《レイス》が二体ずつ。レイスは少しHPが多いけど、何も問題ない。
「よし――行くよひかり!」
双刀を抜いて足のスピードを上げる。僕たちに気づいたモンスターたちが押し寄せてきた。
「はい! 《プリエ》! 《ゴスペル》!」
具体的な指示を出さなくても、ひかりは自身の数少ない――けれどここではとても有用な支援スキルを使ってアシストしてくれる。
「はあああああああ――っ!」
《ゴスペル》によって白光を放つ双刀で、僕は二体の《レイス》を一瞬で屠った。
そして《リビングデッド》の二体は、
「えいえいえいえいっ!!」
ひかり自身がその杖で殴りつけ、二体ともあっという間に溶けて粒子と変わる。
ただでさえSTRも高く殴り威力の高いひかりが、殴り特化の杖に《ゴスペル》をかけているのだ。あの程度の闇属性モンスター相手なら文字通り瞬殺で、そこいらの一次職の前衛にだってひけはとらないだろう。普通のクレには出来ないそのプレイが、僕にはとても頼もしい。
「行こうひかり! さくっと1F攻略だ!」
「はいっ!」
そのまま僕たちは順調に1Fを駆け回り、危なげもなく出会ったモンスターたちを撃退。しかもその途中にレアアイテムの《聖石》を三つも獲得。これは《クレリック》が転職の際やスキル獲得の際に用いるアイテムで、とても需要のある品だ。
そうしてあっという間に2Fに到着した僕とひかり。少し遅れてやってきたメイさんがいったん待ったをかけて、僕たちは取得アイテムをナナミに渡しておく。それからひかりとのパーティーを解消し、続けて琴音さんとパーティーを組むことになった。
「ユウキくん、お疲れ様でした」
「うん、おつかれひかり。よかったと思うよ」
「は、はいっ。ありがとうございます!」
杖を手に笑顔を見せてくれるひかり。うん。あの戦いぶりならみんなにも認めてもらえたはずだ。
そこでメイさんが言う。
「うん、それじゃあひかりの番は終了。続けて琴音の番に移ります。もうパーティーは組めたかな? 2Fは1Fと比べて少し敵が強いし、ボスもいるから気をつけて。まぁ最奥にいかなければボスは問題ないと思うけど。ユウキくんも琴音も準備はいいかな?」
「はい」「ええ」
二人同時にうなずく。メイさんはそれを受けてスタートの合図を出した――!




