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Link ∞ Ring Online ~仮想学園の幸運剣士~  作者: 灯色ひろ
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ユウキとひかりのラブラブ♥大作戦

《チャットルーム1 ウサギたちの茶会》



「第一回! ユウキとひかりのラブラブ♥大作戦~! どんどんぱふぱふー!」



 メイさんがウサ耳を揺らしながらそんなことを言って楽しそうに手を叩く。

 僕とナナミは「何言ってるんだこの人」という目でメイさんを見つめ、実際にナナミは「何言ってんだお前」と雑に対応していた。

 そんな僕たち三人がいるのは、あの大きな木の下にあるいつものギルドたまり場。

 以前生徒会のみんなと行った、あの《古代竜の巣》は現代も攻略中だけど、かなり苦戦していてなかなか奥までは行けないでいる。他のパーティーもだいぶ手こずっているようで、今は生徒会や他のギルドの生徒たちなんかとも情報交換しながら、攻略のカギを探している状況だ。

 

 で、今日の放課後は身体を休めるために冒険は止めて、こうしてたまり場に集まったわけなんだけど……。

 わざわざ外に声がもれないように、こうしてチャットルームまで作って何を話合うのかと思ったらこれだ!


「ユウキくん、ひかりはまだ当分ここには来ないんだよね?」

「あ、はい。クラスメイトの女の子たちと、《クレリック》専用のクエストを受けるみたいです。確か二次転職に必要な前提クエストとかで。たぶん一時間くらいはかかりそうって言ってましたよ」

「へぇ~。ひかりもようやくそっちの連中とも付き合うようになったのか。あいつ、毎日こっちばっか来てるから学校で大丈夫なのかってしんぱ――き、気にしてたんだよな」

「ナナミは可愛いなぁ♥」

「ナナミ……ひかりのこと、いつも気に懸けてくれてありがとう」

「んだよお前ら! そんなキラキラした目で見るのやめろ! メイは頭なでんなって!」


 今日もツンぶりが可愛いナナミに和ませてもらったところで、メイさんが話を戻す。


「さて、それじゃあ作戦の話に戻るけれど……ユウキくん、君はだいぶ成長したよね」

「そ、そうですか? でもまぁ、さすがに結構時間も経ってますし。《ブレイドマスター》になってからもだいぶレベル上がってきましたね。スキルの熟練度もだいぶ高くなりました」

「あはは、それもそうなんだけど、ゲームの話じゃないんだ。君自身のことだよ」

「え? ぼ、僕自身?」

「うん♪」


 メイさんはにっこりと微笑んで続ける。


「四月の始めに出会った頃とはやっぱり違うよ。顔付きは凜々しくなったし、とてもたくましく、男らしくなったなぁ~って思うんだ。《古代竜の巣》の1Fでボスを倒したときもそうだし、ほら、以前ひかりを狙っていたカズヤくん……だったね。ひかりのために彼にPVPで戦いを挑んだりしたときは、とても格好良かったよ♥」

「い、いえそんなっ、僕なんて何も変わってないですよ。ボスだってみんながいたからなんとかなっただけですし、カズヤさんのときだって……本当は、勝負になったらどうしようっておどおどしてましたし……」

「ふふ、そんなことはないよ。だって、このモテモテなメイさんが好きになっちゃいそうくらい素敵なんだから。自信を持って大丈夫だよ♥」

「ええっ!? じょ、冗談です、よね?」

「うふふふふ♥」


 手で口元を隠しながら妖しく笑うだけで何も答えてくれないメイさん。か、からかわれてるんだよな!?


「それはともかく、君が成長しているのは本当さ。ナナミだってそう思うよね?」


 そこでメイさんがナナミに話を振る。

 ナナミはこっちに振るなよ、みたいな迷惑そうな顔をしたけど、


「……まぁ、最初に比べたらそうなんじゃないの?」


 ぽつりとそうもらして、ササッと顔を背けてしまう。

 たったそれだけの言葉が僕は嬉しくて、ついにんまりとしてしまった。メイさんは「ほらね」と軽くウインクする。


「ユウキくんの成長は、メイさんも自分のことのように嬉しいよ。けれどユウキくん、ひかりのことはどう思ってるのかな?」

「え? ど、どうって?」

「相方に、そしてついにはリンクパートナーにもなったひかりのことは大切に想っているよね?」

「そ、それは…………そうですけど……」


 なんかちょっと恥ずかしいけど、素直にうなずく。

 一緒に長い間過ごしてきて思う。

 ひかりは、僕にとって大切な相方だ。

 あの海での契約のことや、先日のカズヤさんとのこともあって、その気持ちはより確かになったと思う。

 するとメイさんは嬉しそうにニコニコ笑った。


「うん、やっぱり成長したね、ユウキくん。ずっと見守ってきたメイさんも嬉しいよ」

「ふぅん……もっと唐変木かと思ったけど、認めるのか。意外だな」

「え、えっと、あの? それで、何の話なんですか?」


 どうして僕とひかりの話になるのかよくわからず、思いきって尋ねてみる。

 メイさんとナナミさんは顔を見合わせ、それからメイさんが言った。


「最初に言ったでしょ? 『ユウキとひかりのラブラブ大作戦』だって!」

「あ……そ、そういえば」

「メイさんもナナミもね、ユウキくんとひかりの関係を応援しているのさ。けれど、今まで見てきた限りでは、二人ともどうも奥手みたいだからね。そ・こ・でっ、メイさんたちにも何か出来ないかなって思ったのです!」


 両手を挙げてばばーんとリアクションするメイさん。僕は目を点にしていた。 


「ええっ? こ、これってそのための会議なんですか!? ていうか、ぼ、僕たちはあくまでも相方同士であって、恋人とかそんなんじゃないですよっ?」

「あはは、わかっているよ。でも、MMOでいう相方には恋人という意味が含まれることも多いだろう? リアルでの関係に発展することもよくあることじゃない」

「そ、それはそうですけど……でも、僕たちは違いますし……」

「本当にそうかな~?」

「え」


 メイさんが座ったままでじりじりと身を寄せてくる。

 そしてささやくように言ってきた。


「ユウキくんにとって特別な存在であるひかりに、恋愛感情をまったく抱いていないと言い切れるのかにゃ~?」

「そ、それ、は……」


 言われて……考えてみた。

 四ヶ月近くひかりと一緒にいて、毎日のように会う日々の中で、ひかりは僕にとって大切な相方になっていった。

 僕はひかりを『相方』として……パートナーとして意識してはいたけど、でも、だからといってひかりに恋愛感情を持ってはいないのか?

 僕は、ひかりのことをとても可愛い女の子だと思っているし、ひかりにくっつかれると、その甘い匂いや柔らかい感触にドキドキして落ち着かなくなる。ひかりの笑顔を見ると僕も嬉しい気持ちになれるし、そんなひかりのそばにもっといたいって思ったりする。あの海でひかりに裸で抱きつかれたときは、理性が限界突破してしまったりもした。


 何度か思ったこともある。

 僕はきっと、ひかりに惹かれているんだろうって。


 でもそれは、相方として、パートナーとして大切に想う気持ちなのか?

 それとも、ひかりを一人の女の子として意識しているからなのか?


 何が恋愛感情で、何が恋愛感情ではないのか。

 経験のない僕には、まだ、それがわからなかった。


「……わからない、です」


 だから、素直にそう答えた。

 ひかりは確かに大切な相方だけど、ひかりと恋人になって、もっと深い関係になりたいのかと言われると……


「ふふ。ユウキくんは素直だね。でも、今はそれで良いんじゃないかな?」

「メイさん……」


 メイさんは隣で優しく微笑み、わざとお茶目な言葉遣いで言ってくれた。


「メイさんたちは、まだ十五、六歳の子どもなんだよ。よっぽど早い人でなければ、恋愛に慣れている人なんていないさ。男女といえばすぐ恋愛話になってしまうけれど、メイさんは男女間に愛情だけでなく友情も発生するものだと思っているしね。もしかしたら、ユウキくんの今の気持ちはそういうものかもしれない」

「友情……ですか」

「うん。けど、愛情かもしれないね。それはユウキくんにしかわからないことだよ。だからね、君がしたいと思うように、真っ直ぐにひかりと付き合えばいいんじゃないかな」

「真っ直ぐに……」

「なーんて、メイさんも偉そうに言える立場じゃないんだけどね♪ でも、そこから目を背けることだけはしちゃダメだよ? それはひかりに、そして大切な青春に背を向けることも同じだからね。そうなれば、きっと将来後悔しちゃう」

「……はい、そう、ですよね」


 なんとなくだけど、メイさんの言いたいことはわかる。

 なにせこの人はいつでも僕たちのことを考えてくれる人だから、心から心配してくれているんだろう。


「ふぅん。メイもたまにはまともなこと言うんだな」

「えーひどいよナナミ! メイさんはいつもまともだよ~!」

「まともなやつはいきなり抱きついて人の身体べたべた触ってこねーんだよ離れろ!」

「ひえーん痛い!」


 脈絡もなくナナミにくっついたメイさんをナナミが必死に引き剥がす。

 それからナナミは呼吸を整えて言った。

 

「――ま、あたしたちから見ればユウキとひかりは既に完全なバカップルだったけどな。お互い意識してるのかしてないのかはおいといてさ」

「え? そ、そうかな? そういえば、ナナミからはよくそんなこと言われてたような……」

「ホントにお前ら鈍いカップルだよな……。なんで恋人に発展してないのか意味不明なレベルだって。見てるこっちがこそばゆいくらいだっての」

「そ、そこまで?」

「そこまでだよ。つーか、あんな恥ずかしいパートナー契約しといてまだ恋人にもなってねーとかありえねーから。普通の相方同士ならとっくにあれこれ全部済ませて下手したら別れ話してるくらいだろ」

「そ、そうなのかな……」


 恥ずかしいパートナー契約、と言われて思い出すのはひかりのウェディングドレス姿。

 そしてそんな彼女を海にダイブさせてしまった自らの情けなさが蘇る記憶でもあった……。


「あははは。二人はこれでいいんだよナナミ。ユウキくんとひかりみたいな今時珍しい清純派カップル、メイさん大好きだよ。だからこそ応援したくなっちゃうわけだしっ」

「いやまぁ、あたしだって色恋のことしか考えてない恋愛脳や直結厨よりそっちのがいいけどさ」

「うう~ん……そ、そう思われてたのか……」


 自分たちのことだからよくわからないけど、周りからみたら一目瞭然ってこともあるだろう。

 二人がそう言うくらいだから、僕とひかりって、そんな風に見えるのかな……。

 僕は、ひかりとこれからどうなりたいって思ってるんだろう。

 そしてひかりは、どう考えてるんだろう――。

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