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Link ∞ Ring Online ~仮想学園の幸運剣士~  作者: 灯色ひろ
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噂のお二人

 ひかりと僕が《リンク・パートナー契約》をした日から、もう一ヶ月が立っていた。

 視界の電子カレンダーでは既に七月も終わりが近く、現実の季節は真夏。

 LROの世界でも、王都周辺はどこもかしこも真夏そのもの。一部のフィールドでは、期間限定のカブトムシやクワガタ、セミのモンスターを回収するクエストが人気となっていたりする。主に男子にだけど。あとはもちろん、各地の海辺フィールドは以前よりもずっと人気でどこも人だらけらしい。


「うーん……ひかり、遅いなぁ……」


 授業も終わった放課後。僕は自分の教室の前でひかりを待っていた。

 今日はひかりの方から来る予定なんだけど、待てどもなかなかやってこない。いつもならとっくに来てる時間なんだけどな。


「おやや~ん? ユウキくんは今日もひかりちゃん待ちか? 青春ですなぁ」

「夏だしねぇ。うちらも相方欲しくなるよねぇ」

「んだねぇ。噂のお二人はラブラブで羨ましいかぎりじゃなぁ」

「ねー、ホントひかりちゃんが羨ましいよ~」


 教室から出てきて声をかけてくれたのは、《クレリック》のサヤさんと《メイジ》のヒビキさん。

 サヤさんは白を基調としたクレリックらしい法衣姿で、いつも大体髪をおさげにしている。一方ヒビキさんは黒を基調としたメイジらしい装備をしてて、髪型はツインテール。

 二人とも日頃から気さくに接してくれるクラスメイトの女の子で、よく二人で遊びに出かける仲良しの相方同士だ。


「サヤさんヒビキさん。お疲れ様。今日も二人で狩り?」

「そそっ。レベリングがてらレアでも探しにね☆ でも、今日はひかりちゃんちょっと遅いんじゃない? いつもならひかりちゃんすぐ飛んでくるのにねぇ」

「確かにね~。ひかりちゃんていっつも一所懸命で、ちょっと忠犬ぽい感じがカワイイよねぇ~。ユウキくんどこで捕まえたのさー?」

「あ、あはは。それはまぁ偶然というか」

「秘密かーこのこのー! ま、そんじゃまた明日ね! バイバーイ!」

「また明日ね~ユウキくん。今度うちらとも遊ぼーよ!」

「あ、うん。また明日。気をつけてね!」


 二人はひらひら手を振って廊下を駆けていき、僕も軽く手を振り返した。

 うーん、僕とひかりってやっぱり噂になってるんだなぁ……。


「――よっ、おつおつ」

「あ、シルスくん。おつおつー」


 続いて出てきたのは、寮で隣の部屋であるシルスくん。

 だいぶ前に二次職の《ウィザード》に転職していて、その大賢者みたいに仰々しい装備がちょっと渋い。何やら魔法使いのマントに憧れがあったらしくて、装備にはお金をかけているのだとか。確か杖も奮発して高いやつ買ったとか言ってたっけ。

 シルスくんは騒ぎながら歩いていくサヤさんとヒビキさんを見つめてつぶやく。


「しっかしユウキくんもずいぶんモテるようになったよなぁー。あの生徒会長に勝ってからは、学園中の女の子たちに噂されっぱなしだぜ。ほら、あっちの子たちもさ」

「え?」


 シルスくんが親指で廊下の奥を示すと、そちらでは僕たちの方を見てキャッキャとはしゃぐ女の子たちが何人かいた。僕と目が合うと、高い声をあげて走っていってしまう。


「あ……」

「へへ、気付いてもなかったろ? ま、そりゃそうか。なんたって既にひかりちゃんなんてスーパー美少女でしかも巨乳な相方がいるんだもんな。そりゃそっちに夢中になるよな。で? どんくらい揉んだの?」

「何の話!? たぶん揉んでないから!」

「はっはっは! にしても、あれからもう一ヶ月くらい経つっけか? ユウキくんが海辺フィールドでひかりちゃんにプロポーズしてOKもらって、その後テンション上がって二人で抱き合いながら海にダイブしたんだろ? あれ、学校中で知らないヤツいないぜ。んで、今やあそこの岬って屈指のデートスポットになってんだよ」

「え? そ、そうなの?」

「そうなんだよ。噂の二人にあやかって、あそこで告白すれば絶対成功するってな。そんでその後はシーダイブがお決まりの流れらしいぜ。かーっ! どいつもこいつも青春してんなぁー!」


 風呂上がりの一杯でも嗜むかのような声をあげるシルスくん。

 ていうか僕たちのことが噂になってそんなことになってたのか……。なんか微妙に噂は間違っていけど、そこは別に指摘はしない。だって事実話すの恥ずかしいし!


「けど、ネト充というかもったいないというか。とにかく羨ましいぜ。俺なんてソロ街道まっしぐらだかんなー。まー好きでソロやってんだけど。恋人とイチャイチャするならリアルのがいーしな。じゃないと夜も楽しめないだろ? こっちじゃ学則違反になるしな」


 カラカラと笑うシルスくん。シルスくんのこういうサバサバしたところが僕は結構好きだった。


「今度俺ともどっか行こうぜ! 最近見つけたウマイ狩り場教えてやるからさ」

「うん、サンキューね。最近一緒に遊べなくてごめん」

「なーに言ってんだよ! ひかりちゃん大事にしてやれって。んじゃまた明日な――ってそうだ」


 いったんは向こうへ歩き出したかと思いきや、そのまま後ろ歩きに戻ってくるシルスくん。


「? どうしたの?」

「いやな、女の子にモテるのは結構だけどよ、その分モテたくないやつからもモテちまってる可能性あっからさ。少し気ぃつけろよ」

「え? ど、どういう意味?」

「んー、いや、やっぱそんな気にしなくてもいいかな。それより愛しの相方が待ってんじゃないのか? そんじゃな~」

「え、あっ」

「学則違反にならない程度にラブラブにな~」


 なんだか意味深な言葉を残してさっさと行ってしまったシルスくん。


「モテたくないやつ……? よくわかんないけど……ま、まぁいっか」


 考えてもわからないものはしょうがない。

 それよりひかりがまだ来ないということは、もしかすると予定を間違えて、僕が来るのを待ってるというパターンかもしれない。

 ひかりの性格なら、遅れることになった場合はまずwisしてくるだろうし、何の連絡もなく予定をすっぽかすようなことをは絶対にない。


「こっちから呼びかけてもいいんだけど……ま、迎えに行った方が早いか」


 左手薬指のリンク・リングを見る。

 リンク・パートナーの専用スキルである《いつも一緒に》があれば、相手の元に転送されたり逆に相手を呼び出したりも出来るんだけど、屋外じゃないと使えないんだよな。

 女子専用の教室はちょっと恥ずかしいんだけど……


「このままでもあれだし、ちょっくら行ってみるか」


 そんなわけで、僕は昇降口横の転送ゲートを使い、ひかりの通うクラスを指定し、移動した。

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