イエスマン
僕はサラリーマン。
そろそろ入社して2年目になる。
入社した時は、不安でいっぱいだったけれど、必死に仕事を覚え、無我夢中で仕事をこなしている内に、1年経っていた。
そして今日、とうとう人生初の後輩ができる。
僕にも、ようやく後輩が...と喜んでいると
トントン、と後ろから肩を叩かれた。
「可愛い子、入社してくるといいね〜。」
彼女は同期のナツミちゃん。
笑顔がとても可愛いくて、同僚や先輩達からの評価は高い。
たまに僕をからかってくるのが気になるところである。
入社当時は、可愛い子がいるな、と思っていただけだったけれど、話していくうちに意識するようになっていた。
僕は、気がつけばナツミちゃんを好きになっていた。
「そんなの、僕には関係ないよ。」
目をそらしながら彼女に言った。
「ふ〜ん、そんなのね。女の子に興味ないんだ?」
ニヤニヤしながら僕を見ている。
「まあね...」
と
「私は、君の事好きだけどなー?」
「はーい、静かに!」
社内で有名なカツラ疑惑の課長である
周りはうるさかったが、次第に静かになる
「いつも髪型変わらないよね、課長」
彼女は小声でニヤニヤしながら言った
他人のコンプレックスくらいほっとけばいいのに
そう思いながら課長をみた
「それでは、今日から我が社で働く事になった、君たちの後輩に自己紹介してもらいます」
静まり返った部屋に課長の声が響いた
「さあ、中へ」
ぞろぞろと部屋の中に入ってくる
ぱっとみ男女比率は同じくらい、といったところだろうか?
「わからない事がたくさんありますが、今日からよろしくお願いします!」
「元気だけは誰にも負けません!」
「彼女いません!募集中です!」
まだ全員の挨拶は終わっていなかったが、ありきたりな自己紹介に退屈していた
僕も去年は同じような自己紹介したのかな?
なんて考えていたら、なにやら次で最後みたいだ
「今日からよろしくお願いします!大学時代のアダ名は"イエスマン"でした!先輩方、本当によろしくお願いします!!同期の皆さんもよろしくお願いします!」
(何なんだこいつは...)
話の構成、8割が《よろしくお願いします》ではないか
「面白そうな子が入社してきたねー」
ナツミちゃんは、ニコニコしていた
次の日から僕は《イエスマン》の凄さを目の当たりにする
先輩に何か言われたら「はい!わかりました!」
飲み会に行くぞと言われたら「はい!わかりました!」
肯定的な返事しかしないのである
中には、とても理不尽なものもあったが
「はい!わかりました!」の一言で全てをこなすのだ
(ストレス社会の中で、よく我慢できるな)
僕は、彼を心配した
季節は冬になった
《イエスマン》の評価は、とても高くなっていた
「彼に何か頼めば、必ずやってくれる!」と課長
「彼は同期の人間関係も良くしてくれるんです」と後輩
「彼、女性に人気なのよ」とナツミちゃん
何故ニヤニヤしながら僕に言うのか
僕も彼を認めていた
この会社では必要不可欠な人間である
彼がいれば、僕の業績も伸びる気がするのだ
本当に彼が居てくれて助かっている
季節は、いつの間にか春になっていた
(もうそんな時期か)
僕は、入社3年目になった
とうとう、"イエスマン"にも後輩ができるのだ
「時の流れってすごいよなー、彼にも後輩ができるなんてな」
「そのことなんだけど...」
彼女は怪訝そうな顔をして僕に言った
「彼、交通事故にあったそうよ」
「なんだって!?」
僕は彼の入院先にとんでいった
「もう彼は助かりません」
医者は言った
「彼、車に轢かれそうになった子供を助けようと身を投げ出したそうです」
流石だ
誰に何を言われなくても、彼はやってくれるのだ
「本当に助からないんですか!?」
僕は世の中の理不尽さを痛感しながら、
医者に言った
「誠に残念ながら...」
「そうですか...」
僕は、最後の挨拶をするため、彼の病室にやってきた
「おい、子供を助けたんだってな」
反応はない
「君が入社してからは、会社の業績は伸びて皆君に感謝しているよ」
反応はない
「実は僕も感謝してるんだよ」
反応はない
「君が入社してから、君のおかげで僕の業績も伸びた」
反応はない
気がつけば涙が頬を伝っていた
僕が人生で認めた人間が、死のうとしている
僕だけではない、会社の皆もだ...
僕は皆の想いを代表して彼に言った
「いつもみたいに、《はい!わかりました!》って言って元気をみせてくれよ!!」
「はい!わかりました!」
僕は奇跡を目の当たりにした
彼は復活してしまったのだ
《イエスマン》の名は本物だった
彼の事件から約半年経つだろうか
彼は今でも周りから高評価である
いつものように仕事の質を落とすことなく働いている
余談だが、ナツミちゃんは彼に告白したみたいだ
「好きです、付き合ってください」
相変わらず"イエスマン"の答えは
「はい!わかりました!」
だった
僕の立場は?...そう思う入社3年目の僕であった
《イエスマン》どうだったでしょうか?
実は私も、上司や先輩からの頼み事などには「はい!わかりました!」と返事してしまいます
もし、作中の"イエスマン"みたいな人が、現実にいたら面白いでしょうね!
感想待ってます!




