1. ―僕の小規模な犠牲―②
お久しぶりです。
頑張ってまだまだ書きます。
「やーめたっ」
頭の中で宇宙兵隊になって侵略者を退治するシュミレーションを立てていたのだが、いかんせん行き詰ってきてやめることにした。まさかあそこで主役の師匠が裏切るなんて・・・・・
嘘だけど。
もう8月も最後の一日になるというのに、草木は見事に緑に包まれ、気温は(体感温度)50℃を超えている気がした。しょせん体感温度だから。間違っていても攻めないで欲しい。
窓を開けると風が猛烈に吹き込む。そうして強い風を浴びていると、子供の頃は顔を出して「あはあははーちょーすずしー」みたいなこと口走っていたことを思い出した。
車を買ったのは去年なのだが。それ以外はパトカーちゃん以外自転車しか乗らない。
車のクーラーは『節約』とか血迷ったことを誰かが言い出したので家はつけない主義らしい。立派な心がけなことで。
だがやはり暑い物は暑い。自分がアイスクリームになってしまったように汗が流れていく。夏にはケータイ壊れる人続出確定。だけど最近は防水機能がある。はい論破。
だめ、一人で裁判ごっこしてもまったく楽しくない。
もう一度窓を見る。それにしても炎天下の中、歩く人々は一体何を考えて外に出ているのだろうか。苦しいはずなのにわざわざ外に出るなどよっぽどの変態に違いない。するとスポーツ選手という者共は皆変態なのか。
「・・・・・・」
声は揚げない。理由はもちろん独り言をぶつぶつ言う趣味はないからだ。
顔を上げて前を見れば、楽しげな二人がつい見えてしまう。
僕の母親と弟。
僕は口を開けない。開けば水を差してしまうのは、誰が見ても明らかなのだから。
「・・・・・・」
無視。
無駄。
無理。
無力。
そして、無言。
自分に言い聞かせ口に鍵をかける。案外簡単にかかってくれた。
また二人の顔を見る。話すのは久しぶりだからか本当に楽しそうに見える。
全てを、壊したくなるくらいに。
おっと、家族に対して位はこういうことは野暮ってものだ。忘れよう。
母親はシングルマザーで弟はまだ小学一年生。それはそれはお互い話したいものだろう。
それにしても身内相手にまでこういう事を思うとは正直予想してなかった。やっぱり暑いからかねぇ。
夏はいつだって人を魅了させる季節。そんな夏の思い出は色濃く心に残って突き刺さる。
そして夏が過ぎ去ると何か失った気がして嘆いてしまうのだ。
僕はそんな夏が好きだ。自分と似ているから。
生まれたのに何も持っていない所とかも。
自分の最初に何かを失い、最後にも何かを失い終わる。
儚く、薄く、最初からなかったのではないと思わせる。
それが夏と、僕、四ノ峰月夏の忘れられない人生だ。