小話05
「もうすぐ秋だねぇ」
「そーだね」
「食べ物がおいしい季節だねぇ」
「そーだね」
「栗が食べたいねぇ」
「…栗…栗ご飯…栗きんとん…栗、クリ、くり…」
うーん、うーんと頭を抱える涼華。
先ほどからなにやら考え込んでいるらし。
「なぁ、さっきから一体何考え込んでんだ…?」
紙パックのジュースを飲みながら涼華のほうを見る。
メールを見たとたん悩みだして栗、くりと悩みだし紙に走り書きをしてはため息をつく涼華がなんだか可哀想だった。
「ねぇ、武藤君…」
思いつめたように抱え込んでいた頭を上げる涼華に少し驚く。
「栗を題材に使った漫画って何だと思う?」
「は?」
「いや、栗を使った漫画ですよ。寧ろ主役的な!?」
突如あー!!と叫びだす涼華を見て、ああ、読みきりの仕事が来たのだろうと苦笑いをしながらジュースを飲み干す。
「大変だねぇ…」
なんで栗が主役なんだと思いつつも、もう掛けれる言葉がなかった。
「…今日、栗ご飯にしよう…」
机に突っ伏して気のない声でボソリといった涼華が哀れで仕方がなかった。