ざまあエンド
俺は昼間のドタバタのせいで、疲れた果てていた。
それもこれも、あの公爵令嬢が新しいネタを寄越せと、追いかけ回してきたせいだった。
今日は、もう寝ようと思い、自室の寝具に寝そべる。が、寝れない。どうしても、あの本が気になって仕方がないのだ。昼間全て読み切れなかったせいなのだろうか。
仕方ないので、最後まで読もうと思い本を開くことにする。
「確か、俺たちがモデルの人物たちが出るところまで読んだんだったな」
俺は続きから読み始めた。
「俺たちだけではなく、あの公爵令嬢みたいなキャラまでもが出てきたな……」
その後も、なんだか既視感のある展開が続いていった。そして、小説の中の話が終わると、また男の場面へと戻ってきた。
男は自分の作品に対して突っ込みを入れたりしていた。読み進むうちに何だか雲行きが怪しくなっていく。それは、男が何かに怯え始めたからだった。
『なあ……おいそこにいるんだろう?』
男は気が狂ったのか、それとも描写されていないだけで誰かいるのだろうか。突然何かに話しかけ始めた。
『おい、無視するなよ。どうせ、見ているんだろう?』
どうやら後者が正解の様だ。
『何を言っているんだ? お前に言っているんだよ!』
次のページをめくると挿絵があり、男がこちらを見ているようだった。
「……なんだか気味が悪いな」
そう言いながら次のページを見るとそこには……。
『お前に言ってるんだよ! ダムル!!』
「う、うわああああああああああああああ…………」
◆
私は、エリーゼさんが『新作を作ろうよ』と誘ってくれたので、彼女の屋敷へとお邪魔していた。
「次は、どんな話にしようか?」
エリーゼさんが尋ねてきた。
「うーん、それなら……」
次の案を提示しようとした矢先に、何やら廊下で騒ぐ声が聞こえてくる。
「何かあったのかな?」
私がエリーゼさんに尋ねると同時に扉が開き、見たことのある人物が姿を現した。
「ちょっと、あなた達。ダムルが何処へ行ったか知らないかしら?」
略奪者が不躾にまくし立てた。
私は、エリーゼさんと顔を見合わせた後に答える。
「「知りませんけど」」
「部屋にいたはずなのに、翌日には突然と姿を消していたらしいですわ。彼は一体何処へ行ってしまったんですの……」
略奪者は、聞いてもいないのに語りだした。そんな美味しそうな話を振ってしまったら食いついてしまう人がいる訳で……。
「え? なにそれ。詳しく教えて頂戴!」
エリーゼさんが一気に略奪者へと詰め寄った。
「ちょ、ちょっと近いですわ。少し離れてくだ……」
「さあさあ、早く!」
エリーゼさんは目を輝かせながら更に詰め寄った。対して略奪者は後ずさりをしていった。
それにしても、あんまり気にしなくていいと思うな。どうせ、また真実の愛を見つけたとか言って旅立ったんだろうし。
風の噂によるとその後、真実の愛を求めし者を、見た者は誰一人としていなかったらしい。
―― 終 ――