表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/3

トゥルーエンド

 私は屋敷へ帰った後に、自室の椅子に腰かけながら、エリーゼさんに頂いた本を読んでいた。


 その本の内容は――男の人が恋愛物の小説を書いているところから始まり、完成した小説を読み始めると中身は、婚約破棄からの自力での逆転劇。


「ふふ、この子は強いのね……。私は、エリーゼさんがいたから……」


 もしも、あの時にエリーゼさんが来なかったら、今でも立ち直れていなかったと思う。彼女と出会えたことによって私は変わることができたのだ。


 それに、彼とも出会うことが……。


 彼の顔を思い浮かべると、顔が熱くなるのを感じた。


「さぁ、続き、続きっと」


 誰に見られる訳でもないのに、照れ隠しをしながらページを捲った。


 男の人は自身の小説に感動しつつ、完成していたことに大いに喜んでいた。そして、(のち)に泥酔の小説家として名を馳せていったところで終わる……はずなのだが次のページをめくると何やら書いてあった。


『フィリーナ嬢は、絵が上手だから次回作は絵本で行きましょう。

 ――エリーゼより』


「エリーゼさん……」


 私は本をそっと閉じて、胸に抱きしめながら呟いた。



 ◆



 私は今リビングにて、新作の原案を書いていた。


「ねえ、おとうさま。この絵本よんで」


 次女が夫に絵本を読むことをねだっているらしい。


「お、これか。いいぞ。野原に一匹の子ウサギがいました……」


 どうやら、次女が渡した本は、以前に私が書いたもののだったらしい。夫が手慣れた様子で読み上げていく。


「お母様、また新作を執筆しているのですか?」


 長女が、私に尋ねてきた。


「ええ、そうよ。今回は冒険物で行くつもりなのよ」


 長女は、私が書いている原案を覗きながら言う。


「次の絵本も楽しみにしてますね」


 長女が言ったように私は絵本を書いており、今現在は絵本作家として活動していた。そして、私を導いてくれた彼女はというと……。


 扉の方からノックの音が聞こえてくる。


「どうぞ」


 執筆の手を止めて、入室を促した。


「失礼します。奥様にお客様が訪ねてこられました」


 執事がそういうと、後ろから私を導いてくれた人が顔を出した。


「久しぶり、フィリーナ。元気にしてた?」


「エリーゼさん、久しぶりです。今は忙しい時期だったのでは?」


「領地のことなら彼に任せておけば大丈夫。それと、執筆のことならたまには息抜きしないとね」


「ふふ、そうですね」


 彼女は、結婚した後も執筆を続けていて、今では人気作家なのだ。


「エリーゼ様、お久しぶりです」


 丁度、本を読み終えた彼が、エリーゼさんに挨拶をした。


「ええ、お久しぶりね。これからもフィリーナを支えてあげてね」


「それは、もち……」


「エリーゼ様、お久しぶりです」


「こんにちは、エリーゼさま」


 娘たちが、夫の言葉を遮るように挨拶をした。


「二人とも元気にしてた? これお土産ね」


 エリーゼさんが、お土産の焼き菓子を差し出してくれた。


「ありがとうございます」


「やったー」


 娘たちが喜びながら受け取った。


「ちょっと、待ってくださいね。今、お茶を用意させますから」


 そう言ってお茶を用意させようとした矢先に、メイドがお茶を運んでくる。


「そう仰ると思いまして既に用意させておきました」


「流石ね」


 執事は一例したあとに退出していく。


「フィリーナの家の執事は相変わらず手際がいいね。今度密着取材をしてみようかな」


「ふふふ、その時はお手柔らかに頼みますね」


 その後は皆で椅子に腰かけながら、話に花をさかせていく。


 そう、まるでエリーゼさんが連れ出してくれたあの時のように――。



 ― fin ―

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ