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未来・家族  作者: 龍冶
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第14話 守れなかった愛しい者達



 _ _ _ _ _



 …ねえ3番、私たちのあの人、本当に来てくれるかしら、5番がああ言っていたけど、私は信じられないの…

 …7番ったら、信じているんでしょう。だから気にかけている。毎日今日来るのかしらと思っている…

 …そう、毎日思っている。でも夜になったら、5番はうそつきなのかもって思う…

 …5番の考えている事、判らないよね…

 …だから怖いの、研究所の人が来るのを知っているし、違う所から来る人の事も、いつ来るか知っている、でも私たちのあの人の来る日は知らないって、本当かしら…

 …知っているけど言わないのかも知れないわね…

 …どうして言わないと思う…

 …その話になると5番は悲しそうになるの…

 …そうね…

 …他の事も知っているのよ、きっと…

 …何を知っているの、教えてよ、そう言えば3番は何でも知っているよね、どうして知っているの…

 …前に、あなたが生まれる前に、研究所の人が来て教えたの…

 …3番にだけ教えたの、どうして私には教えないの…

 …6番にまで教えたの、あなたはやさしいから教えないの、あの人たちが頭を調べたの…

 …初めて言ったわね、なぜ今日は言うの…

 …たぶん私たち、今日死ぬよ、だから言ったの…

 …どうして死ぬの…

 …あの子たちが、あの乱暴な子たち。研究所の人の言う事しか聞かない子たち…

 …あの子たち、私たちを殺す気になった?…

 …殺そうとする気になった人は、私たちのあの人…

 …ひどい、ひどい、ひどい、今日来るのね、今日来るのね、やっと迎えに来てくれたのに、殺そうとするのね、それじゃあ私たち、きっと嫌われる、嫌われるよ…

 …7番ったら、あなたを迎えに来ると思っていたのね、あの乱暴な子たちも?そんな訳ないじゃない、あの子たちを連れて帰ったらどうなると思うの、あの人に私たちとあの乱暴な子たちを見分けられると思う?皆同じ顔なのに、第一あの人とも同じ顔なのよ、本当の人間はひとりひとり違うの、きっと初めから嫌われるの…

 …初めから嫌うって、だったらどうしてここに来るの、迎えに来るんじゃあないのに…

 …私たちを殺しに来るの…

 …そんなに私たちが憎いの、私たちが嫌われるような何をしたの…

 …存在よ…

 その時、外がぴかりと光って大きな音がした。

 …爆弾よ、地下に行きましょう…

 …あの人が私たちを殺そうとしているの…

 …今のは違う人…

 …ひとりで来たんじゃあないのね、それならあの人はあの子たちには殺されないね・・・良かった…


 _ _ _ _ _



 船長達が安全な操縦室に行かずに船長室で虫たちにやられた訳は、船長室に第35銀河からの情報データがあったからだ。研究施設のある惑星の情報で、施設の配置や戦力の程度、そして研究施設で何を研究していたのか。それを虫に食べられて紛失してしまっては、ここまで来た甲斐が無くなる。崋山は副船長代理となったので、チャンから、見せてもらった。どうやらこの惑星は地球環境に似た大気があるらしい。クローン作製にうってつけと言えるが、事実かどうか分からないし、罠が何処にあるか、油断はできない。DNA研究施設、その場所を確認して、崋山は、

「ここ、俺の担当にしてもらおうかな」

 チャンは、

「気持ちは分かるが、崋山は先にこの戦闘機軍を破壊した後、ミサイル攻撃施設を一番に攻撃してもらわないと、皆が惑星に降りられないからね。そこまでやったら、さぞお疲れだろうから、もう引き上げてくれて良いよ」

「船長代理、気を使わなくていいんですよ。覚悟はとうに出来ているんですから。カサンドラの時のクローンがわんさか居ることは分かっていますよ。皆にもその辺の所は、はっきり忠告しといた方が良いですよ。躊躇なく処分しないと、俺はそのために来たんです。そうでなかったら、イワノフ船長について行って地球のズーム社を破壊しに行きたいところでした」

「そうだろうな、じゃあ君はミサイル発射の施設を破壊したら、そのまま戦闘機でDNA研究施設の近くに降りて、他の奴と落ち合う事にするか。お前が来る前に破壊が終わっていても良いだろう?その時は確認だけはしておけ。始末に漏れがあってはならないからな」

「もちろん、私を待つ必要なんかありませんよ。了解しました。きっちり破壊します。船長代理は、メカの研究施設に行くのですか」

「そう思っていたら、そこは龍昂の軍団が行くと名乗り出てくれたよ。彼らは乗員ではなくゲスト乗船だったのだが、第7銀河の人たちが全滅に近い状態だから、手助けしてくれるそうだ。あの歌みたいな言葉をしゃべる第20銀河の人が、虫の動きは崋山が見切って、自分たち皆にも教えてもらったから大丈夫だと言うけれど、本当か」

「へえ。あの人達テレパシー能力もあるんだ。超能力者達なんだな。私は教えた覚えはありません」

「そう言う事か。所で、お前さっきからやけに他人行儀になったな。どうかしたのか」

「そうですか。そんなつもりは無いですけど」

「いや、妙だぞ。まあ良いか。そう言う事だから俺らは皆DNA担当だ。俺が皆に破壊計画を話しておこう」

「了解」

 他人行儀になっちまってたか、崋山は思った。船から外の宇宙空間を眺めながら、崋山はあの日の事を久しぶりに思い出していた。何もかも失ったと思ったあの日、一人ぼっちで惨めだったカサンドラはもう何処にもいない。涙も枯れてしまった。失ったものは戻っては来ないし、孤独ではあるが。

 少し仮眠しよう、4時間後に行動開始になっていたから。部屋に戻ると、イヴが自分の部屋から出て来て、

「崋山、あんた卵巣取られていたんだって?キメラなんだって?双市朗は言っていなかった。言う時間なかったからかもしれないけど。あたし、知らなくてさ。何か気に障ることしなかったかな」

「記憶に無けりゃ別に良いんじゃない」

「そう思う?だけど何かまずい事言うか、するかしているよね。きっと。ごめんね」

「いいよ、どうせ記憶にないんだろ。明日頑張れよ、俺も頑張るから。少し寝ておかないと」

「そうだね、おやすみなさい」

 そう言ってイヴはドアを閉めた。崋山は、こっちもイヴの事を失念していたし。一人じゃないかもしれないなと思えた。

 4時間後、崋山とイヴの戦闘機の他に、第3銀河の選りすぐりのメンバーの戦闘機、そして龍昂の軍だった戦闘機で構成された、今の人数ではこれ以上は無いと言えるレベルの構成になり、母船を出発した。それでも11機しかないが、崋山は頼もしく思った。これですべて決着だ。

 始めは惑星の重力外から、それぞれ担当のミサイル施設の場所を攻撃した。思っていた以上の爆発で驚いた。なんだか相当な威力の核弾頭があったのではないかと思った。近くから攻撃していては爆発に巻き込まれていたに違いない。今の位置でも危険なレベルの威力だった。

 仕込んでいたようだなと思った。それに、敵の戦闘機も出てこなかった。と言う事は、施設はもう引き払って敵は居ないのかも知れない。あの虫も引き払って、他を攻撃しに行ったのかもしれない。

 と言う事は取り逃がしたって事か?

 崋山はチャンに報告した。

「船長代理、ミサイル施設はやけに爆発規模が大きかったし、戦闘機も来ません。爆発を仕込んで引き払って居るようですよ。逃げられたようです。攻撃情報が漏れていますね。と言うか第35銀河の情報だって、元は敵だった奴らでしょ。虫の事もあるし、罠のつもりだったかも知れないですね」

「そうだよな、直ぐ本部に連絡する。虫を他の所の攻撃に使うかもしれないな」

「私もそう思います」

「だが人が居なくても、メカは居るだろうからな、油断はできない。何か仕込んであるかもしれないが、降りて点検はする。せいぜい気を付けような。お前も研究をしていた張本人に会えなくて残念だったな」

「どうも。まだ片が付かないようですね」

「俺もちょっと、片が付くには早すぎる気はしていた。はは」

 話し終わって、崋山はDNAの研究施設近くに向かい、降り立った。

 母船の皆は先に到着していた。そして思わぬ事に、そこは混沌としていた。

 崋山とイヴは、慌てて走り寄った。仲間の皆はほとんど倒れていて、やられてしまったようだ。チャンが倒れている所に駆け寄り助け起こすと、まだ死んではいない。ビーム銃で撃たれたようだった。

「どうしてこんなことに」

 そう言っている間に、戦闘機の仲間の叫び声がして、見ると、カサンドラのクローンが、小さい女の子風の奴が何処からか、わらわらと出て来てビーム銃で彼らを撃っている。

 崋山は叫んだ。

「何やっているんですか。それは敵のクローンですよ。俺とは全然違う関係ない代物です。さっさと撃ってよ」

「崋山、皆そのつもりだけど、どうしても一瞬、躊躇してしまうんだ。それで負ける。あんたにしかできないんだ」

「何言っているんだ、チャンから聞いていただろう、ちゃんと。はは、こんな時にダジャレが出る。もう、俺のせいって事か。畜生」

 崋山は持っていた小型の火炎放射器で、クローンたちを燃やしながら、攻撃の動きをする奴は、ショットガンで撃って行った。虫とは違ってあっという間に終わった。

 悶えながら燃えていくクローンを見ると気分が変になって行った。自分と同じ目をしてこっちを見ながら燃えている。吐き気がしてきて、必死で我慢した。やはりこれが仕込みだと思った。しゃがみ込んで吐き気を止めようと、深呼吸していると、イヴが小突いて来て、

「崋山、見なよ。癒しみたいなのが居る」

 指さす方を見ると、泣きながら倒れている仲間をさすっている。すると怪我が治っている様だ。だが、崋山はこれも仕込みじゃあないかと思った。立ち上がると、ショットガンを構えた。

 イヴは、

「崋山、よしなよ。あの子は良い子みたいだよ」

「ばか、クローンに変わりがあるもんか」

 そう言って、撃った。イヴは、彼の手を払って止めた。

「止めなよ、皆を治しているじゃあないか」

「何か敵の仕込みがあるってば」


 …ごめんなさい、ごめんなさい、あの子たちは何もわからないの、酷いことをして、ごめんなさい…

 …7番ったら、怪我を治すのね、でもあの人まだ怒っている、私たち、死ぬの…

 …でも直さなくては、ごめんなさいね、治したらいつかは許してくれるかも知れないでしょ、5番…

 …あたしたちにいつかはもうないのよ、判らないの、怒っているのよ、ずうっと前から、今日の事じゃあないの…

 …それにねえ、あんたたちは知らないみたいだけど、あたしは知っているの、あたしたちの中には核爆弾が入っているの、スイッチが入ったら爆発するの…

 …3番ったらどういう事、スイッチって何処にあるの…

 …5番ったらやっぱり知らなかったのね、私たちのあの人が、あたしたちを愛してくれた時、愛しているって言ってくれた時よ、あの人の声がスイッチなの…

 …それじゃあ、あの人についていけっこないわね、あたしたち、7番、無駄なことはやめたら…

 …全部治したらきっといつか許してくれるの、でもどうして3番は何もかも知っているの…

 …あの人に酷いことが起こりそうになるのが嫌なだけ、自己防衛本能じゃあないかしら、どう思う?5番…

 …そうそうそれね、あいつらには解りっこない事よね、あいつらの誤算…

 …ごさん…

 …誤算…


 崋山は固まっている3人に近寄った。すると、頭の中に入って来た。

『全部7番が治すから、待っててね。治したら首を絞めて殺してね。あたしたちには、核爆弾が入っているの。あなたの声がスイッチよ。あなたが絶対あたし達に言わない言葉よ。今はね。でも殺さなかったらいつかは言う。そしたらスイッチが入って爆発するの。だからそれで撃たないで。撃ったら爆発してあなたも死ぬの』

『なるほど、これが罠だったのだな』崋山は思った。だがどうして自分にそれを教えるのか。

『自己防衛かしら』

 ギョッとして崋山は寒気がして来た。崋山は振り返ってみんなに言った。

「こいつらには核爆弾が入っているそうだ。撃たなくて良かったよ。テレパシー能力のある子が言っている」

 すると、第7銀河の連合軍の基地から乗って来ていた、人間とばかり思っていた奴が、急に様子が変わってむくっと起き上がり、

「ソーハイクモノカ」

 と言い出し、3人を撃とうとした。崋山がギョッとしている間に、近くに居たホワイトさんが代わりに撃ってくれた。

「こいつは、あの子が治さなかったから妙だなと思っていたんだ」

「何だと、おい、他に治していないやつがいるか」

 チャンが驚いて叫んだ。その時母船からこちらに攻撃が始まった。皆、慌てて隠れた。崋山も慌てて三人を連れて安全なところを探した。近くの岩陰に身を潜め、どういう事かとあたふたしていると、テレパシーの出来る子が、

『あれは中に居る敵のアンドロイドよ。あの人が失敗したから攻撃してきたの。あたしたちを撃って皆殺しにするのが彼らの任務。目の青い金髪の女の人』

「救護の人じゃあないか、チャン、救護班の金髪の人はアンドロイドらしいよ」

 崋山がチャンに叫ぶと、

「そうか、中にはそのくらいしかいないからな。メカ班に連絡しよう」

 しばらく隠れていると、メカ施設の破壊が終わったらしい龍昂の仲間が、船の裏側から入りアンドロイドを始末したらしく、攻撃は止んだ。

 崋山はやれやれと立ち上がり、

「船長代理、僕とイヴとで施設の破壊に行こうと思いますけど」

「そうか、じゃあ頼むぞ。俺らは宇宙服が破損しているから、早急に退散だ。きっちり始末しろ。頼んだぞ」

「了解」

 崋山とイヴは、三人を連れて施設内部に入った。イヴは、

「どうするの、この子たちは」

「連れていけない。核爆弾が入っている」

「でも、どうにかしたら外せるんじゃあないかしら」

「俺の声がスイッチになっていて、何かを言ったら爆発するって言っているんだ」

「何かって、何よ。知っていたらしゃべらないんじゃない」

「教えられないだろ、思わず口走るかも知れないぞ」

「知らないと、口走る可能性が高くなるよ」

「だけどこの子達がしゃべっても似たような声だから、どうなるか分からないだろう」

「それもそうね。でも置いて行ったらどうなるの。ここは引き払われた感じよ。食べ物とかどうするの」

 崋山はイヴを連れて来た事を後悔した。

「イヴ、お前、もう帰って良いぞ。俺だけで、間に合いそうだ」

「妙な言い草ね。あんた、まさかこの子たちを殺す気じゃあないでしょうね。そんなことしたら、あんた一生後悔するよ」

「だけど仕方ないだろ。この子たちもさっき殺してと言ったんだ」

「何ていじらしい。あんた考えなよ。誰か、どこかにうまく取り外せる人、居ないの」

「考えても、思い浮かぶか。開発したやつ以外居ないだろ。俺だってやりたくないよ。さっきの阿呆どもをやった後も気分が変になったんだから。それに比べてこの子達、見てよ、可愛いだろ。自分で言うのも何だけどな。カサンドラの良いとこどりだ。始めて見た時から可愛くなって、もう、愛しているんだからな。何ならお前が代わりに・・・えっ」

 その時、三人は輝くばかりの笑顔を見せ、踵を返して走りだした。

『愛しているがスイッチなの。爆発するから早く皆と逃げて。あたしたちは地下に行く、あたし達もあなたに会うずっと前から愛してた。さようなら大好き。さようなら愛してる』

 崋山は驚き、イヴに。

「今の愛しているがスイッチだと、逃げよう」

「わあ」

 イヴと必死で走り、船に向かった。地面から地響きがして来た。早く船に行かないと全滅になる。

「うわあん」

 早くもイヴが泣き出したが、手をつないで必死で走ると、不思議と二人の走る速さは同じで、お互いの走りが増強するような不思議な感覚になっていた。船の入口はすでに開いていて、二人が飛び込むと同時に出発した。爆発も同時に起こり、危機一髪だった。

 第20銀河のククンさんが側に来て、

「可愛そうな結果になりましたが、幸せな最後の様でしたよ。お二人とも間に合って良かったです。皆さん心配していました」

 崋山とイヴは、ほっとしたと同時に、抱き合って大泣きに泣いた。


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