みゆちゃんとパリパリなゆめ
ある日の夜のことです。
ぼんやりと目がさめると頭の上の方から
ぱりっぱりっぱりっ
という音がかすかに聞こえた気がしました。
まさか、ママが枕元でおせんべいでも食べているのでしょうか?
まだねむい頭でぼんやりと考えました。
もしかしたら3さい下の妹かもしれません
うーん…。
目をこすりながらまわりをゆっくりみました。
おかしなことにママも妹もちゃんとねているように見えます。
もしかして、パパ?
こんどは体をおこして、音がする方をしっかりと見ました。
すると、うす暗い部屋にぼんやりと白いなにかが見えました。
「ママおきて!」
みゆちゃんがそういいかけた時、その白いなにかがフッと飛んできてみゆちゃんの口をふさぎました。
「しーっ!」
とそう小声でいったのは小さいゾウのような、見たことがない不思議な生き物でした。
みゆちゃんは、まだゆめの中にいるような気持ちになって目をぱちぱちとさせます。
みゆちゃんのくちからちょろんと長くのびた黒い鼻がはなれたので、みゆちゃんは声を小さくして聞きました。
「ねぇ、だれなの?なにしてるの?」
すると、不思議な生き物はいいました。
「オイラはトテテ。オイラのお仕事はゆめを食べることなんだ。」
トテテの体は白い光がぽわぽわと光っています。さきほど見えた白いなにかはこのトテテの体だったのです。
「ゆめを食べるの?」
みゆちゃんはくりくりとしたおどろいた目でトテテに聞きました。ゆめを食べるなんてきいたことがありません。
「まあね。見ててごらんよ。」
トテテはそういうと、鼻をぐんっとのばしました。そしてママの頭を鼻の先っちょでぽんぽんぽんっとしました。
するとぽわわんとしたなにかがママの頭から飛び出しました。
そこにはママのすがたがうつっていました。
ママが黒い服の人においかけられてこまっています。
たいへん!
みゆちゃんはおどろいてトテテを見ました。
トテテは「大丈夫。これはキミのママのゆめだよ。」というと、それをあっという間に鼻からきゅっとすいこみました。
そしてこんどはふんっとふんばるように鼻からぽんっと出しました。
するとどうでしょう。
出てきたのは、まあるくてぷよぷよしたものやトゲトゲしたもの、モコモコしたもの、ふにゃふゃっとしたものなどいろんな色や形のものがたくさん出てきました。さきほどすいこんだものとは全然ちがいます。
それをトテテはふわふわと飛び回りながら上手に口でつかまえていきました。
その時です。
ぱりっぱりっぱりっ
といういい音がなりました。
「あっ!」
みゆちゃんは思わず声が出ました。
不思議に思っていたぱりぱりな音の正体はこれだったのです。
ぱりっぱりっぱりっ
ぱりっぱりっぱりっ
なんてひびきのいい音なのでしょう。
トテテがあまりにおいしそうに食べるので、みゆちゃんは
「いいな。いいな。あたしにもちょーだいっ。」といって手をのばしました。
ですがトテテは
「やだよ。だってゆめのカケラを食べるのはオイラのお仕事なの。」
といって1つ残らず食べてしまいました。
ゆめのカケラを食べたトテテの体はよりいっそう白く光ります。
そして、トテテの鼻から虹のような光のはしらがスーっとあふれだし、ママへと流れていきました。
こまった顔をしてねていたママの顔はおだやかなやさしい顔に変わり、すやすやととても気持ちよさそうにねています。
すごい!
これがトテテお仕事なのです。
いっぱいゆめをたべたトテテにみゆちゃんは
「はいっ。これ飲んだらぽかぽかするの。」
といって温かい飲み物をもっていきました。
あちっ
ふぅーっふぅー
ごくんっ
「なにこれ!?あまくてうまい。気に入った!」
「これはね。ココアっていうの。みゆもココアすきなんだぁ。」
うれしそうにココアを飲むトテテを見て、みゆちゃんは得意気にいいました。
ココアを飲みほすとトテテは「今からいろんな家に行って、ゆめを食べるお仕事に行くんだ。まだねむくないなら、みゆもオイラのお仕事手伝ってくれないかな?」といいました。
「えっ、いいの? 」みゆちゃんは目をぱちくりさせます。
トテテは「うん。ココアのお返しにとくべつだよ。」というと、
みゆちゃんの体を鼻でぽんぽんっとしました。
すると、みゆちゃんの体もトテテのように白くぽわぽわと光はじめました。
そして、体がふわふわとかるくなりました。
まどの外からトテテといっしょにまっくらな空をふわふわと飛びました。
こまった顔でねている人を見つけるとトテテはまたぽんぽんぽんっとして、ゆめのカケラをだしました。
こんどはみゆちゃんもゆめのカケラを口いっぱいにほおばりました。
う〜ん〜。
ゆめのカケラはほんのりとあまかったり、しょっぱかったり、これならいくらでも食べれそうです。
ゆめのカケラを食べたみゆちゃんの両方の手からはトテテのように温かな光があふれ出しました。
わあ、きれい…!
みゆちゃんが「いいゆめが見られますように」とねがうとしぜんに光はこまってねてる人たちへ流れていきました。
「ふぁぁあ〜。」
まだまだトテテといっぱいお仕事がしたいみゆちゃんでしたが、とうとうねむくなってきました。
「ねぇ、トテテ。もしも、こわいゆめを見ちゃったら食べてくれる?」
「食べるよ。だってうまいんだもん。」
トテテはねむくなったみゆちゃんをやさしく背中にのせて、みゆちゃんがいたベットにふわふわ飛んでいきました。
「おやすみ。」
次の日みゆちゃんは気持ちよく目がさめました。
ママにトテテの話をすると、ママは「それはバクじゃないかしら」といいました。
「バクってなーに?」とみゆちゃんがきくと、
ママは「バクはね。わるーいゆめやこわーいゆめをたべてくれるの。」といいました。
「じゃあ、トテテはバクなの?」
「そうかもしれないわね。」
*
夜、トテテはある女の子のもとへいくとあまいにおいがする温かいココアが置いてあることに気づきました。
そこには
〈 トテテへおしごとおつかれさま 〉
という手紙がそえられています。
トテテは温かい気持ちになってやさしく女の子の頭をなでました。