世界最強の男、下界に降臨する
皆さん、こんばんわ蓮季曜です。
投稿するのが遅くなってしまい申し訳ありません。
久しぶりの投稿になります。是非、読んで頂けると有難いです。
「やっと異世界に来れたぜ!!10日間と言えど天界はなかなか過ごしやすかったな」
今、ハルトは天界から下界に降臨してきたわけだが見渡す回り周囲に街や村はなく360℃森、森、森だった。それも普通の森ではなく極度に暗く陽の光なんて刺さないんじゃないかという程だ。おまけに人間や動物の気配はしないが、なかなかに強い魔物の気配を至る所から感じるのだ。
「異世界に来たのは良いけど、まずやることってなんだ?ステータス確認?食料探し?人里探索?ん―どれも重要だけど最初はお腹すいたから食べ物探そうかな・・・」
ブツブツ独り言を言いながらグルグルと同じ場所を回っていると不意に強い気配を感じた。
「んー強い気配は感じるんだけど、いちいち相手にするのもメンドウだから無視でいいかな?それよりもなにか食うもの探さないとな」
しかし、強い気配を感じながらもめんどくさいという理由から何か行動を起こすことなくハルトはのんびりと辺りを探索し始めた。しかし、この森は冒険者や冒険者ギルドの間では『破滅の森』や『蹂躙されし森』と言われいくら世界最高峰のS級冒険者であっても決して誰も近づこうとしない場所なのだ。そのことを彼も後に如何にヤバイ所にいたのか知ることになるのだが・・・知るのは当分先の話だ。
その前にまずこの世界について説明した方がいいだろう。
この世界は主に軍事国家ウェルキシア、エクスティア神聖国、グランベル帝国、暗黒地帯と色々な小国が連なってできている。軍事国家ウェルキシアは『力こそが全て、力こそが正義』がモットーで「いくら戦費がかかろうとも全ての戦で勝てばよし」という考えをもつ者が多数であり、その他の考え方を持つ者はごく少数だ。そのため平民や農民に課せられている税金は収入の約6割と重く、殆どの者がその日その日を生きるのに精一杯な状態である。また、いくら貴族であると言っても子爵より下の地位を持つ貴族には余程のこと以外は国から支援金など出るはずもなく自分たちでなんとかして稼がねばならない状態なのだ。そのため肩書は貴族だが扱い的には平民や農民と同じように扱われている。この国の国王は軍事のためならどんな手を使っても軍資金や武器・防具といった戦時品を要求する。そのため、自分の子供たちや王妃、平民・農民のことは金を生み出す道具としか思っていないため、そこに『愛』というのもは感じていない。たとえ、それが自分の王妃や子供たちであろうとチャンスと思えばすぐに自分との関係を清算し、他国に嫁がせたり、奴隷のような待遇で送りつけたりすることも厭わない。
エクスティア神聖国は『聖女』のスキルを持つ者が国のトップとして君臨し、その下に国王を始めとした者たちがいる。主にエクスティア教を主教とし『万人は平等なれど、主従は確かなり(意味:罪を犯した者以外のすべての人の扱いは平等故、如何なる理由があろうと差別をすることは許していないが、そこには主従関係は確かに存在するためそれは遵守すべき)』の教えを旨にしている。『聖女』のスキルを持つ者は政治にはあまり関与しないが、教えに歯向かった者、守らなかった者が居た場合、その者を捌く権利を有している。この判決によって決まった刑は絶対に執行され、いくら国王と言えども覆すことができず、程度の差はあれどんな理由があろうとも『この国の民ではない』と判断され、よくて国外追放、最悪の場合死刑などもありえる。そのため、他種族やスラムの人々に手を差し伸べることを苦とせず、食べ物だったり衣服などを提供したりしている。また、他種族が移住してきたりしても嫌な顔一つせず、快く受け入れ共に共同体を形成している。それ故か、この国民がスキルを授かる場合最も多いのが回復魔法か聖魔法のどれかである場合が多い。それぞれのスキルについてはまた違う場所で紹介したいと思う。ちなみに聖女はもちろん国王を始めとするエクスティア神聖国の国民の殆どは穏やかな性格をしている。
グランベル帝国は軍事国家ウェルキシアとエクスティア神聖国の両面を6:4の割合で兼ね備えた国で平民や農民はエクスティア神聖国の教えを、多くの貴族は軍事国家ウェルキシアの教えに従っている者が多い。もちろん、貴族でもエクスティア神聖国の教えを守っている者もいるが・・・・そんなグランベル帝国は他の国と違い唯一海に面している国のため海産業や食産業、魔法産業に5:1:3を主な産業とし、国外に輸出している。残りの割合は宝石関係や鉱石関係に充てられている。ちなみに国王を始めとする王族は皆、エクスティア神聖国の教えを遵守しているため国民からの人気が高く、王族間でいざこざが起きたことはない。
そして最後に暗黒地帯についてだが、ここには国と言った物はなく簡単に言えば魔物の巣窟となっている。もちろん、さっきの3国や諸小国にも魔物が出ることはあるが、なぜかここの地域で生まれる魔物は他の地域で生息しているどの魔物よりもレベルが高く、力が強く知能が高い。そのため国軍を派遣しても一時的な足止めができるが勝利することは不可能なのだ。下手をすれば国軍は殲滅され、国が滅亡することだってある。それに足止めできるといってもせいぜい30分が限度である。噂ではこの森の奥には別の国に転移できる転移門なんかがあり、そこで魔物を生み出し支配している『魔王』なる存在がいるとされて、この魔王が魔物たちを強制的に強くしているとされている。まぁ、真実か否かはわからないが・・・そのため、いくら腕利きの冒険者やS級冒険者でもこの地域に脚を踏み入れたりはしなし、そんな依頼が来ようものなら即拒否したりする。それくらいこの地域は強い魔物がウロウロしているのだ。
そんなヤバイ場所にハルトは転生させられ、本人はのんびりと歩いているのだ。
いかにハルトが強いのかよくわかるだろう。。。
森の中を数十分近く歩いているとやっと目の前の木にリンゴみたいな真っ赤な色をして、スモモみたいな形をした美味しそうな食べ物を見つけた。普通なら知らない物を見たりしたら躊躇するようなものだが、転生してから何も食べることをしなかったハルトは空腹の限界を迎えようとしていた。そのため確認することなく食べてしまった。
「うまーい!!なんだこれ!!うますぎだろ!!」
異世界にきて初めて美味しいものを食べたハルトはその美味しさに魅了され、その木にあったスモモもどきを全部食べてしまった。しかし、ここであることに気づく。
「そういえば、この果物鑑定せずに食してしまったけど、食っても良かったのか?食ってから体に異常をきたすような物とかじゃないだろうな?」
そう、それはこの果物の安全性である。
しかし、この地域に存在している食べ物が普通なわけがない。そのことに気づいたハルトは恐る恐る鑑定してみることにした。
「と、とりあえず鑑定・・」
スモモップル
暗黒地帯のみに生息する果物。そのため市場ではあまり出回らず高額価格で取り引きされている。大体一個で約金貨4枚。
この果物には美味しそうな見た目をしているが、実は中は超強力な酸性毒が果汁と共に混ざっているため、何もせずにそのまま食べると数秒で体中の骨や臓器などが溶け死に至る。
取り除くには一気に加熱処理することで可能。
「え、マジで?やばくない?俺、そのまま食べちゃったけど転生初日に死んだりしない?」
ハルトは何も処理せずに食べたことを嘆いていたが、実際には自身の体は既に人族のものではないため、いかなる状態異常をも無効化する。そのため、今加工せずに食べたスモモップルによる酸性毒は効かず、少し雑味のある感じの果物になっている。
しかし、ハルトは鑑定結果を見てショックを受けたためそのことに全く気付いていない。
自分が既に人間を辞めていることに・・・
こんな感じだが、これが少しだけアホな世界最強の男が下界に降臨した瞬間であり、世界にとってはいつ爆発するかわからない爆弾以上のモノを抱え込んだ瞬間となった。