短文 イタリア アドリア海にて 日陰の部屋
イタリア、アドリア海に面した街並みはオレンジ色の屋根と白い壁が埋め尽くす。高台に建っているホテルの角部屋の窓が開いていた。
角部屋は今の時間にうす暗い日陰になって少し涼しい。部屋を飾る調度品たちも日陰では眠っているようにおとなしい。
外に開かれた窓からは空高く登った太陽に照らされたホテルの丸いプールが見下ろせた。プールより先には港までオレンジ色の屋根たちが日光浴をしている。港から先は水平線までアドリア海の紺色の海がきらめいていた。
うす暗い角部屋の中から外を眺めている部屋の借主は日系人女性。窓のさっしに手を添えて風景を眺める様子に楽しさはない。黒い長髪をそよ風に揺れさせて憂いる彼女はなにをしにイタリアにきたのだろうか。