表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ヒューマンドラマ

マッチョ箱の少女

作者: くろたえ

女の子って何でできているの?

砂糖とスパイス。それと素敵な何か。


いえいえ、脂肪筋肉、内臓に骨。


それでも、素敵な女の子になりたいの。

少女は、服が着れなくなった。

元々、大柄な印象がある。背が少し高めで骨太で丸顔。

痩せている時も華奢な印象はなかった。

それが少し肉が付くと、なんだかゴツイ感じになるのだ。

ウォーキングでもしようかとおもった時に、運悪く段差で足をくじき、膝を強打した。

結果、じん帯の損傷という足を使う運動が出来ない状態になってしまった。


下半身の運動は出来ない。


ならば、と500mlのペットボトルを二つダンベル代わりにして、二の腕下のタルタルをスッキリさせようと思いつく。

正拳突きの様に交互に繰り出す。

最初は往復で5回もやれば、腕が降りてしまっていたが、何度もやるうちに、10回の往復に耐えれるようになった。

それを朝晩に二回。

ちょっと、腕のたるみがなくなってきた。

嬉しくなり回数を増やす。

20回の往復を朝晩、そのほかに、テレビを見ながらなど1,2回増やした。


そんな半年ほど。


もう腕の下のたるみはなくなりスッキリしている。

ある日、久しぶりに銭湯に行った。

逞しい印象の人が傍を通った。

それは鏡で、なんと自分自身だった。

驚いて、正面を映し腕を横に開いて見る。

確かに二の腕の下のタルタルはなくなっている。

その分、腕の上部や肩に筋肉がつき盛り上がっている。

首の付け根にも筋肉がつき、太くなっていて首が短い印象になってしまっている。

横を向き、鏡に映すと、首の後ろから背中にかけて盛り上がっている。そして背中が厚い。

なんだろう。こんなのどこかで見たことがあるな。

ああ、そうだ。ヒグマだ・・・

小鹿のような細く長い首にすらりとした腕を目指したが、改めて見ると上半身が大きく、その上に脂肪がついているヒグマ体形。ああ、なんてこと・・・

そういえば、わが家には全身を映す鏡がない。

お風呂場に古い鏡と、玄関の小さな鏡に、テーブルで化粧をする折り畳みの鏡だけだった。

その小さな鏡に、己の変化は現れようがない。

体重計は、仕舞いっ放しだ。

いや、どこかで薄っすらと自覚はしていた。

お気に入りのジーンズを寒いと言って履かなくなったのは、ボタンがきつくなったせいだ。

夏にシャツばかりを着るようになったのは、Tシャツの袖の余裕がなぜかなくなったからだ。

そう。気付かないふりをしていたのだ。


痩せねば。

大人になれば代謝が落ちていく一方となる。

その前に、痩せていたとは言わないが、今ほどに太っていなかった頃まで戻さねば。


翌日、ジムに申し込む。

水素水?何ですか、詐欺ですか?水素って一番不安定なんですよ。何で水に閉じ込めておけるんですか?過水素な状態の水なんですか?と言って受付のお嬢さんを泣かせてしまった。


とりあえず、トレーニングマシーンを物色する。


「はあっ!」

「ふんっ!」

あそこはマッチョの詰まったの箱みたい。

荒い息をつく漢達の場である聖域に入っていく。

 まずはとバーベルスタンドの前に立つ。

棒が10キロ。そして、両脇に同じ重さを通していくのね。

まあ、少し重めにして、持てなければ軽くしていけばいい。

下に置いたバーベルを腰を反りながら臍の位置まで上げていく。

出来た。えーと、80キロね。そのまま10回。

 今度はベンチを持ってくる。背筋は少し自信があるのだけれど、中学生の体力測定だから昔の事ね。

椅子に仰向きに寝て、胸の位置のバーベルを確認して持ち上げる。腕だけでなく背中から力を通す。70キロかぁ。頑張って10回。標準が分からない。

 周りは、120キロとか上げているから、私はまだまだね。

あのマシーンは脚力を測るのね。膝を曲げて椅子に座り重りを確認して脚を伸ばす。

膝にはあまり負担掛けたくないから、少しだけにしておこう。

220キロ。あら、重りの後ろの方だわ。まあまあ脚の力があるって事ね。

そのまま、幾つかのマシーンを試す。


うん、いい汗をかいた。

私はダイエット用に用意した食物繊維たっぷりのオカラパウダーとココアを水で溶きシェイクして飲んだ。

隣の人はバナナの香り。こっちはバニラ。チョコの香りもするわ。


そうしてジムに通う。

 顔なじみになった逞しいタンクトップの男性が挨拶で笑みを浮かべている。

他の方は、ダンベルを上げる時はウエストに革のベルトを巻くように教えてもらった。

皆さん優しい。


紅一点の私は女性の心遣いを目指す。

右に低血糖で倒れた人あれば、「ラムネで落ち着きますよと」口に入れて差し上げ。

左にマスクをしたまま走っている人が倒れれば、「お水はいかが」と飲まして差し上げる。


 しばらく経った頃、友人とお風呂に行く事になった。

さあ、と鏡の前に立つ。

どんなにシェイプされたか。引き締まった身体となっているのだろう。

これが私?

少女漫画なら、地味で眼鏡な少女が美少女へと変化するときのセリフ。


これが私?


全体的に厚くなった筋肉。腕の筋肉が割れている。

いつから私、オッパイを動かせるようになったの。大胸筋が発達しているじゃない。

僧帽筋がある。これはケンシロウ肉ではないかしら。

腕を広げる。盛り上がる上腕二頭筋。広背筋が前から見えるのは何故。

なのに、なのに、筋肉を柔らかく包む脂肪が健在なのはなんでなの!


なんで私は結構強そうなプロレスラーになっているの?

小鹿のようなスラリとした姿から、80歩は遠のいている!


そう。私のやっていたことは、筋肉を大きくする運動。

筋肉を刺激すれば代謝が良くなって脂肪が燃焼するのではないの?

オカラパウダーを飲んでいたいたわ。おからは食物繊維に女性に大事なイソフラボンよ!

そうよね!

栄養を調べてみる。水溶性、不溶性合わせて食物繊維43%。うん間違っていない。

あら?タンパク質・・・30%ですって!これって、漢たちのプロテインドリンクと一緒じゃない!いえ、プロテインによっては23%とかもあるわ、結構、炭水化物と糖質が入っているのよ。


なら、何?

私は筋肉量を大きくする運動をこなして、運動後30分以内のタンパク質純度の高いプロテインドリンクを飲んでいたわけなの?


それらは全て、マッチョたる人の義務だった事。



私は知らずにマッチョ道を独学で突き進んでいたのだった。



これは、実話です・・・


悲しい悲しい実際におこったお話です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >これは、実話です・・・ き、筋肉は裏切らない! なのだそうですから……。 [一言] 企画から参りました。 マッチョ道。 道すがら、声が、かけられるようになるのも、あと少しですね。…
[一言] 実話ですとーーー!? ケンシロウ筋がっ!? それはすごい!!!
[良い点] 実話な点 [気になる点] 字下げが不規則 [一言] 水素水(笑) 大丈夫、デブじゃないから!! 悲みの変身物語を、変身企画に寄稿下さりありがとうございました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ