第一章「吸血神は……生きたい」
鏡神の加賀見 譲は、自身の父親が生み出した子どもに逢いに来ていた。何故彼女が逢いに行くかと言うと、彼女は第二の神で地位的にも第二位に位置づけられている。彼女は、密かに願っていた。〝今回の子は、消されませんように……殺されませんように……失敗作でありませんように……。〟と願う。
「父上、譲が参りました。」
譲は、父親 羽翼がいる部屋に入室する。父親の布団のすぐ横で眠っているのが今日生まれた神だ……百年前は梅神、五百年前は土星神だったが、どちらも直ぐに失敗作と分かり、いつの間にか消されていた。つい先日、生まれた時神の瞬は、譲よりも強く賢い神だった為にすぐに人里に下ろされ、そこらにいる人に祠を建ててもらいその祠の中で過ごしていた。その時は、時神と空神の双子の神だったが、今回は如何に……。
布団の上で眠っているのは、見た事がないような程白く艶やかな長髪を持ち、羽を持つ。恐らく生物系の神だなと譲は思う。そして父は言う。
「この子は、〝天薙〟だ。区分は、〝吸血〟つまり、血を吸う種族を生み出すであろう神だ。譲……またよろしく頼むぞ」
譲は、はい。と言ってその子をおぶって部屋から退出する。譲は、歩きながらこの子がどんな吸血系の神を産んでくれるんだろう……どんな子なんだろうと心を豊かにして自室に連れて行っていた。まだ人里は、狩猟をしているくらいだろうか……よく祠を作れたなぁ……と譲は思っていた。
「ま、ママ?」
急にママと呼ばれたから驚いたが、譲は説明をした。譲は、初めて〝ママ〟って呼ばれて最初こそは驚いたが……よく見れば愛らしい見た目の子だから……
ガブッ
「んっ……何しているの、、天薙」
譲は、困惑した……首筋に鋭い痛みが走り叫びそうになる……鎖骨にツーと液体が滴り、襟が少し血で汚れる。
「·····美味しい ママ」
天薙は……譲の血を飲んでいた…察せるだろうが飲んでいるのだ。神界で第二位である譲の首筋に噛み付いたのだ……吸血のために。譲は、察した。〝この子は……吸血だから血を分け与えな……〟
ドサッ
どのくらい……時間が経っただろう首が痛い……周りが騒がしいなぁ……どうしたんだろ?
「譲姉 白髪の女の子が血を吸って回ってる」
瞬が血相を変えて部屋に入ってきた。瞬も私の姿を見て顔が真っ青になっているのも分かる。あ……首筋。
「譲姉……今は、休んでいて なんとかしてくる」
瞬が部屋を後にした。私は、とりあえず布団に入って眠る事にした。
ーーーーーー天薙目線
「(はぁはぁ……血をこんなに飲みたくない。なのにどうして私は求めて……)血をくれぇぇぇ」
いやだ……みんな怖がっている。私は、私は……〝自分が怖い〟。さっきだって意識が遠のいていって……はっと目が覚めて目の前を見たら青白い顔色の譲姉様がいた……口と譲姉様の首筋を見たら……私は理解した。私が姉様を襲ったんだって…だから姉様は倒れている。それが何よりの証拠。
「·····た、た、た、た、助け……て。」
私の心の叫びは誰にも聞こえない。誰にも理解されない……まだ生まれてまもない私だけど理解出来る。こんなにこんなに……みんなを怖がらせたらお父様は〝間違いなく私を殺す〟って。
「そこまでだ……吸血神 天薙ッッッ」
あ……お兄様。そうかお兄様なら……いいのかも、、し、れ、、……ない。今は、戦うしかない……。
「はぁはぁ……」
はぁはぁ……ぜぇはぁ……勝てない。そうだよね、時神なんだからお兄様は……私はどうなるんだろう……
ー次の日ー
「·····天薙は、危険だ。瞬……貴君も危ないが……天薙はよっぽど危ない。先程 お父様から通達があった……○○に連れてこい」
審議神の聡だ……瞬はとりあえず地下牢に入れた天薙をおんぶして○○に連れていった。天薙は理解しているだろう……〝殺される〟って事に。
「吸血神 天薙。処刑にする」
あ……私。やっぱり殺されるんだ。
天薙は、言った
「私は、普通じゃないの?」
お父様は、〝そうだ。お前は危険だ。瞬も危険だがお前はより危険だ〟といい、大きなナタを振りかざした。私は、〝死〟の瞬間……たった一日の走馬灯が見えた。それを見ていると覚悟が途切れそうになる……途切れたら間違いなく発狂していただろう……事切れる瞬間 天薙は思った。
〝次の人生は……幸せにな、り、、た…い……〟
第一章「吸血神は……生きたい」END