第五話 アイテムマスター
○ダンジョンショップ楽輝、カウンター○
『初めましてマスター。私はこの自律成長型アイテム総合取扱ジョブ『アイテムマスター』のオペレーションブレーンである・・・・・・敏夫で御座います。』
今俺の頭の中では、レベルアップ時の何時ものアナウンスさんとは違う、老紳士風のダンディな声が響いている。
何か大層な肩書がジョブに付いている気がするが、あまりに突然のことで、頭が色々追いつかない。
がしかし、まあ兎に角だ・・・。
「おい、お前。その悩んだ末に出した敏夫という名前は、俺に対する嫌がらせか?」
敏夫は俺の父親の名前だし。
『おや、お気に召しませんでしたか。マスターの一番信頼を寄せる男性の名前をピックアップしてみたのですが。』
ったく、ケンカ売ってんのか。
「そういう事なら、別ので頼む。」
『了解しました。それではマスター、今後私のことは、夏子とお呼びください。』
まあ敏夫よりは百万倍・・・よくな~~~い。
今度は母親かよっ。
「お前、いい加減にしろよっ。その声で女の名前はないだろっ。」
『では、声を変えてみましょうか。』
「そこじゃねぇよっ。名前を変えろっつってんだよっ。」
『でしたら、佳澄と・・・。』
「あああああ~、もう良い。お前はこれから爺さんって呼ぶからそのつもりでな。」
何でこいつ、俺の初恋の相手まで知ってんだ?ったく。
『Gさんですか・・・中々グレートな感じで良い名前ですね。』
いやそういう意味じゃないんだが、凄ぇポジティブ・・・まあいいか。
『それとマスター、私との会話に発声は必要ありません。私に語りかける様に意識して頂ければ、十分で御座います。』
(へぇ~、そりゃ便利だな。)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
不思議なこともあるもので、俺が取得してからひと月以上経過したジョブが喋り出した。
突然のことで驚いたが、ジョブというものが何なのか、Gさん同様に喋り出すのが標準なのか、その他諸々の疑問も含めて、今の俺にはその一切が謎に包まれている。
そんな訳で、これらの疑問を解決すべく、ジョブ『アイテムマスター』のブレーンことGさんに、色々質問をしていくことにした。
先ず最初に聞いたのが、なぜ突然こんな所でレベルアップしたのか?という疑問。
こいつがレベルアップしたのは楽輝の店のカウンター。
つまり、ダンジョン外でレベルアップしたという事。
スキルのレベルアップに照らして考えてみると、これは現代のダンジョン社会において、かなり異常な事なのである。
『それは当たり前です、マスター。これでも私、自律成長型アイテム総合取扱ジョブですから。』
と偉そうに説明し出したGさんの話を要約してみると、、ジョブと言えども通常は、ダンジョン外というか、魔素の無いところでは、レベルアップはしないものらしい。
スキルのレベルアップも、ダンジョン外ではしないと言われているが、原因は同じと見て良さそうだ。
そしてこいつの場合は他とは違い、俺の体内魔素とMPが活動エネルギーになっているので、何処であろうとレベルアップが可能という話である。
次は、このジョブ『アイテムマスター』というものの力を、具体的に説明して貰った。
現状として以下の5つが上げられるそうだ。
○『使用条件オールクリア』
これは例えば、攻撃力の高い武器等には、STR15以上等の装備条件が付く物があったり、マジックアイテムの中には、INT値等の使用条件がある物もあったりする。
そしてそういった条件を無視して、あらゆる装備や道具を使いこなせるというのが、この『使用条件オールクリア』の能力である。
レベル1から凄い強力な武器が装備可能とか、まあ初心者探索者にとっては、いい感じのメリットだろう・・・そんな武器があればの話だが。
○『DEXパラメータ上昇補正』
『DEXパラメータ上昇補正』は『アイテムマスター』というジョブを反映し、レベルアップ時の能力アップにボーナスが付くらしい。
ちなみにこのボーナスは、『アイテムマスター』のレベルが上がれば増える仕様。
○『ミッション特典付与』
『ミッション特典付与』は特定の特典を付与するミッションイベントで、クリア報酬として、それに見合った特典を得ることが出来る。
これに関しては、既に一つクリア済なので、説明は不要だろう。
○『スペシャルスキル』
『スペシャルスキル』とは、ジョブ『アイテムマスター』に特化したスキルのこと。
そしてこのスペシャルスキルは、Gさんのレベルが上がれば、自然と増えて行くシステムらしい。
といっても話はそう単純ではなく、ジョブレベルが上がっても、スキル生成に必要なMPが足りない場合には、スペシャルスキルの取得は遅れてしまうのだそうだ。
とまあ最近ずっとMPがゼロだった原因まで、こんなところで判明した次第である。
○『刻印登録』
これは自作したアイテムに刻印を施すことにより、専用アイテム化できるというもの。
具体的には、所有者以外が使おうとしても、一切の効果を発揮しなくなったり、どんなに離れていても、アイテムの所在を把握できたりするのだそうだ。
まあ簡単に言えば、優秀な盗難防止機能といったところだろう。
(聞いてみれば、中々凄そうな能力だな、『アイテムマスター』の能力は。)
『それは当たり前です、マスター。これでも私、この世でたった一つのエクストラでインテリジェンスなジョブですから。』
うん、そういう鼻に掛けるところが、無ければいいのに。
(ってことは、他のジョブは、こんなに凄い訳じゃないのか?)
『そうですね。通常のジョブは、特定ステータス上昇補正が申し訳ない程度に付いたり、スペシャルスキルの足元にも及ばないスキルが取得できる程度のものでしか御座いません。』
『それに私の様にお喋りできるジョブは、第一信者に贈られる唯一無二のエクストラジョブだけですから。』
ふ~ん、まあ確かに、こいつが喋ってくれて助かった。
もしこいつが喋れなかったら、分からないことだらけで、この多種多様なジョブ能力を十全に活かす事などできそうにない気がするし。
(あっ、そうだ。そのスペシャルスキルってのは、何時頃取得できるんだ?)
『それについては既にスペシャルスキル2つがスタンバイ状態にありますが、あとはマスターのMP次第です。』
『取得できていないのは、現状マスターの最大MPがあまりにもへなちょこ過ぎて、十分な魔力を得られていない事が原因となっていますから。』
へなちょこ過ぎてか・・・全く、棘のある言い方してくれるぜ。
がしかし、これに関しては、こいつの言い分が正しいか。
俺のレベルは1のままだし、最大MPは1MP。
お世辞にも多いとは言えないしな。
ちなみに言っておくが、レベルアップしたことが無い一般人の場合、殆どの人が最大MP1であり、俺が特に劣っているとかいう話ではないので勘違いしないように。
(そっか。じゃあMPポーションでも飲めば、直ぐスキルが取得できたりするのか?)
『はい、そういった逃げ道も御座いますよ、マスター。良かったですね。』
(解決策と言いなさい。)
『ですが『アイテムマスター』というジョブは、私の活動エネルギーや、スペシャルスキルの生成、またそのスキルの使用にと、何かとMPを消費する機会が多いジョブです。』
『今後の事を考えれば、いつまでもマスターがへなちょこのままでは、私としても困ります。』
ちっ、へなちょこへなちょこ煩せぇなったく・・・遠慮ってものを知らねぇのか、こいつは。
でもまあ俺としても、好きでレベル1でいる訳でもないし、足枷だった『不運』スキル問題は解消してる。
身体レベルを上げるってのも悪くないわな・・・MPポーション代もバカにならんし。
次回、第六話 スペシャルスキル。