第四話 ミッションクリア特典
○ダンジョンショップ楽輝、地下工房○
このご時世、店内に工房を設け、装備の修理、製作まで手掛けるダンジョンショップというのは、そんなに珍しいくもない。
しかし、一風変わったこのダンジョンショップ楽輝の地下にある工房は、これまた一風変わっている。
何を隠そう、うちの地下工房は全4階層のダンジョンの一部であり、最下層には親父が設置したダンジョンコアが存在しているのである。
少し日本の法律的な話をすると、ダンジョンの個人所有が認められるのは、Bランク探索者資格所持者の特権という扱いになる。
また、Bランクになった時に取得したプライベートダンジョンの所有権は、その後ランクが落ちたとしても継続的に認められている。
しかし相続となると話は別で、相続する側にBランク探索者としての資格取得経歴が必要となり、なかなか相続出来ないケースが多いらしい。
とまあ、今は冴えないうちの親父にも、昔はBランク探索者にまで上り詰めた、輝かしい探索者時代があったという訳だ。
とはいえ、ダンジョン化している都合上、俺は一切入ったことはなかった。
しかし『不運』スキルが消滅し、探索者資格も取得している俺には、ここへ来てようやく親父からの許可が下りていた。
そして勿論この地下工房に来た理由は、『アイテムマスター』のミッション、アイテム神のロゴ入りバッジの作成である。
製作工程としては、先ず木型でロゴ入りバッジを作り、それを元に鋳物砂に表と裏、2つの型を作る。
そして先ずはピンのある裏の型に、マジックアイテムの加熱釜で熱した魔銅を流し込み、冷めたら第一段階終了。
次は同様にロゴの入った表の型にも熱した魔銅を流し込み、頃合いを見てピンのある裏のパーツで蓋をするように置いてやる。
完全に熱が冷めたら、魔銅製のロゴ入りバッジが完成という運びだ。
と製作を始めたのだが、これが中々時間が掛かる。
素人の俺では、失敗することも多く、また魔銅を熱するにも冷ますにも結構な時間が取られる。
そして鋳物砂による鋳型は、バッジを一つ作る毎に作り直しで、大量生産には向かない。
おまけにここはダンジョン内。
偶にヒゲモグラという温厚な性格の弱い魔物が出現し、その度にそいつらを追い払ったり。
店の仕事の合間を見つつといった事情も重なり、調子が良い日で、1日10個作るのがやっとといった感じで、作業は進んで行った。
そしてようやくミッションクリアとなる100個のロゴ入りバッジが完成したのは、作成開始から半月が過ぎた頃だった。
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「よっしぁ、100個完成っ!」
いやぁ~、割と感動。
結構苦労しちまったぞぉ。
ってあれ?
何も起きませんけど・・・
ここでミッションクリアの報酬的なものがあるんじゃないの?
どうしたっ、エクストラジョブっ!
しっかりしろっ!
おっ、そうか。
この出来上がったロゴ入りバッジの方が、凄いことになっているのかも?
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『アイテム神のロゴ入りバッジ』
説明 :アイテム神への信仰の証。DEX値+1。
状態 :良好。
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う~む、DEX値の上昇補正が付いてるな。
作ってた時は、こんな付加効果はなかったような・・・
にしてもこの程度のものがミッションクリアの報酬とは・・・もっと凄いの期待しちまってた分、結構萎えるな、これは。
それに、この残された大量のバッジ・・・どうすりゃいいの?
DEX値上昇補正のアクセサリとして売りきることが出来れば、原価くらいは取り戻す事が出来そうだが・・・
流石にこの数を売りきるのは、かなりの時間が掛かるだろう・・・DEX上昇補正なんて、魅力薄だし。
あっ、そうだ。
ついでにステータスも確認しとくか・・・他の恩恵が有ったりするのかもしれないし。
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名前:霧島幸太郎 20歳
種族:人間
レベル:1
ジョブ:アイテムマスターLV0
HP 10/10
MP 0/1
STR : 4
VIT : 4
INT : 9
MND : 10
AGI : 7
DEX : 7
LUK : 5
CHA : 6
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う~む、異常なし。
強いてあげれば、使った事のないMPが何故か0になっている。
まあ魔法スキルが無い俺には、まるで気にならない事ではあるが。
となれば、調べるべきはジョブの方かも?
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『アイテムマスターLV0』
ランク :EX
種類 :インテリジェンスジョブ
状態 :只今お仕事中
【ミッションクリア特典】
『作成アクセサリのDEX値上昇補正付与』
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おっ、ミッションクリア特典!?
この『作成アクセサリのDEX値上昇補正付与』ってやつが、今回の真のミッション報酬ってことか。
となると、あの作ったバッジにDEX値上昇補正がついたのは、今回に限った話ではない・・・
おお、そういう事なら、結構いいかもしれないぞ。
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○1か月後、ダンジョンショップ楽輝、カウンター○
バッジ造りが終わってからというもの、俺は普段の店番をこなす日常に戻っていた。
そして既にミッションクリアした日から1カ月ほどが経過した今、何の音沙汰もない『アイテムマスター』というジョブに対する俺の興味は既に薄れきっていた。
昼下がりの今時分は、店は概ね暇であり、親父は地下工房で、武器修理や創作武器の作成をし、俺は鑑定メガネを掛け、店のカウンターの脇にあるパソコンを使って、買取品の入力作業に勤しむ。
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『魔鉄鉱石』
説明 :魔鉄を多量に含んだ鉱石。
状態 :良好。
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『魔銅鉱石』
説明 :魔銅を多量に含んだ鉱石。
状態 :良好。
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これは魔鉄鉱石に、こっちが魔銅鉱石ね、はいはい。
カチカチカチカチ
あれっ、右手の甲の痣が光っている。
『ピロリロリーン。ジョブ『アイテムマスター』がレベル1になりました。』
へっ?
次回、第五話 アイテムマスター。