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第三話 転移トラップの秘密

○浮遊島ダンジョンセブンス、祭壇の転移トラップ○


 銀二叔父さんの転移石を使い、ここまでやって来た俺と叔父さん。

 先ずは二人同時に転移トラップに乗ってみるが、反応は無い。


「う~ん、やっぱり俺が乗ると反応しないのかもしれん。幸ちゃん一人で乗ってみてくれ。」


 その言葉に従い、俺が祭壇の床にある転移トラップに一人で乗ると、いきなり光が溢れだす。


 うわぁ~。


 光が収まると、そこは叔父さんの話していた、女神像が佇む出入り口の無い部屋。

 俺が叔父さんの言っていた通りに、御祈りをささげると、女神像が輝きだした。


『むぅ、汝、その秩序なきスキルのすべてを捧げれば、我への信仰を授けよう。』


「はい。」


 即答した・・・ここで躊躇してはいけない。


『よかろう。汝の所持スキル、確かに受け取った。そして今生を受けている我の信仰者はこの世にいない。』

『よってお主には、我の第一信者の証、エクストラジョブ『アイテムマスター』を授ける。』


 えっ、ジョブ?エクストラ?一体何の話だ・・・って、待て待て、ここでの迷いは禁物。

 悩むことなく肯定的に話を進めなくては。


「はい、有難うございます。」


『これからお主は、我の第一の信仰者となり、信者を増やす使命を全うしてくれることを願う。』


 その言葉を最後に、女神像の輝きは失われた。


『キュイン。エクストラジョブ『アイテムマスター』を獲得しました。』


 ふうぅ~。これで終了ってことで良いのか?

 そして、俺の『不運』スキルは、ちゃんと消滅してくれたのだろうか?


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ってあれ?

 終わると元の転移トラップの上に戻るって話だったんですけど・・・

 一行に元の祭壇へと戻される気配がないのだけれど・・・どうしたらいいのだろう?


 少し焦りを感じつつ、部屋を今一度見渡していると、何も無かったはずの壁に、外への扉が一つ出現していた。


 あそこから出てみるしかないか。


ガチャリ


 うわっ、眩しい。


 部屋の外に出てみると、そこは天空までそびえ立つ岩柱の頂上といった場所。

 頂上全体の広さは、ぐるっと外周を2,3分で回れる程度。

 今しがた出てきた教会風の建物以外には何もなく、誰一人居ない。

 見下ろせば、雲海が広がり、遠目には、幾つかの岩柱が顔を覗かせている。

 そして見上げてみると・・・


 なっ、太陽が2つって、どういうことだ?


 いくら浮遊島ダンジョンとはいえ、これは可笑しい。

 浮遊島ダンジョンは、地球の1万2千m上空をゆっくり移動している代物だ。

 太陽が2つという事実は、明らかにそれを否定している・・・ここは地球ではないのか?


 う~ん、ダンジョンショップ店員の俺が、こんなダンジョンの謎の最先端に一人ぼっちにされても、対処に困ってしまうんだが。


 二度目以降は、うんともすんとも言わないって話だったけど・・・


 少し不安を感じながらも、また教会風の建物の扉を開け、女神像にお祈りしてみた。

 するとその不安を打ち消すかのように、あっさりと女神像は輝きを取り戻して行く。


『どうした?我の第一信者よ。何か良き報告でも有ったのか?』


「いえ。この岩柱の頂上から、元の場所に帰りたいのですけど、どうしたらいいのでしょうか?」


『あっ・・・・・・・そっ、そういえば、そなたは地球の民であったな。』


 ん、地球の民?な~んかこの言い回し、ちょっと引っ掛かる。


 そんな事を考えていると、俺の身体を光が包み込んだ。


 気が付くと俺は転移トラップの祭壇の上。

 茫然と立ち尽くす俺に、銀二叔父さんが声を掛けてくる。


「幸ちゃん。大丈夫だったかい?遅いから、ちょっと心配しちまったよ。」


「あっ、はい。なんとか。」


「それじゃ、話は後でゆっくり聞かせて貰うとして、早速戻ろうか。敏夫の奴も心配するだろうしな。」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○ダンジョンショップ楽輝○


 さて、ようやく店に戻ると、俺は事の顛末を詳細に2人に聞かせた。

 そして今、3人そろって俺のステータスを確認している真っ最中。

 親父と銀二叔父さんは当然の様に自分の『鑑定』スキルを使い、俺だけ店の鑑定メガネを使っている。


~~~~~~~~~~~~~~

名前:霧島幸太郎 20歳

種族:人間

ジョブ:アイテムマスターLV0

レベル:1

HP 10/10

MP 1/1

STR : 4

VIT : 4

INT : 9

MND : 10

AGI : 7

DEX : 7

LUK : 5

CHA : 6

~~~~~~~~~~~~~~


 やっ・・・やった・・・本当に『不運』スキルが消えてる。


 俺があまりの嬉しさに言葉を失くしていると・・・


「ああ、先ずは良かった。幸ちゃんの『不運』スキルは、消滅させることが出来たみたいだね。」


「はっ、はい、銀二叔父さん。どうも有り難う御座いました。」


「いいっていいって。俺には子供居ないし、色々と丁度いいんだよ。幸ちゃんと美鈴ちゃんの存在は。」


「なぁ、幸太郎。そりゃそうと、このジョブってのは何だ?こんなもん見たことも聞いたこともねぇ。なぁ、銀二。」


「ああ、それなぁ・・・この鑑定内容を見ても今一つ釈然としない内容だし、このミッションってやつをクリアしてみない事には、何も手掛かりはつかめそうにないな。」


~~~~~~~~~~~~~~

『アイテムマスターLV0』

ランク :EX

種類 :インテリジェンスジョブ

状態 :只今睡眠中

【ミッション】

魔銅製のアイテム神のロゴ入りバッジを100個作成せよ。

~~~~~~~~~~~~~~


 俺もこの『アイテムマスター』なるジョブを鑑定してみたが、この2人が分からないものを俺が分かるはずもない。

 それにしても、アイテム神のロゴって何?

 と疑問に思っているとふと気付く。


 何このフラスコとハンマーが交差したような痣


 俺の右手の甲には、はっきりと浮かび上がる紫色の痣が出来ていた。


「ともかくだ。現状分かったことは、あの転移トラップの正体は、所持スキルを対価に、このジョブというものを授けてくれる神殿への転移魔法陣だったという事だな。

 そして残された謎は2つ。

 ひとつはそのジョブとは何か、また『アイテムマスター』というのは、いかなるジョブなのか、という幸ちゃんの授かったの能力に関しての謎。

 もうひとつは、幸ちゃんが見たという2つの太陽。もしかしたらそこは、この地球以外の星。何か浪漫が広がる話だなっ。」


 そう言うと、銀二叔父さんは目を爛々と輝かせていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 あれから数日が経ち、あの浮遊島ダンジョンにあった転移トラップは、跡形もなく消滅していたと銀二叔父さんから情報が入った。

 理由はハッキリしないのだが、まあ役目を終えたからじゃないかというのが、叔父さんの見解だった。


 そしてその後はまた銀二叔父さんとは、連絡がつかなくなってしまっている。

 うちの親父の話では、大方他の浮遊島ダンジョンにでも行って、同じような転移トラップを探しているんだろうとの事だ。

 まあそれには、俺も同意である。


 そして俺の方はと言えば、店の仕事の傍ら、魔銅製のバッジ作りに精を出す日々を送っていくのだった。

次回、第四話 ミッションクリア特典。

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