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幼馴染を追放する

 登校するとき、家の前にはいつも菜々子がいた。両親が仲良しという後ろ盾から、部屋に入ってくることもしばしばあった。


 だからその日、つまりぼっちとして生きることを決めた日、僕は先手を打つべくいつもより1時間早く家を出た。待ち合わせ?罵倒したいだけだろ?


 1人で中学校まで歩いて行き、靴を履き替えて教室へ。無論誰もいない。まあでも誰かいたとしても、関わらないのだから誰もいないのと同じだ。


 僕はその日、ノートを開いて昨日考えたプロットを書き始めた。誰か教室に来ても、顔も上げずに書き連ねていた。これが意外と、進みがいいのだ。これからもしようとそう思った。


 持参のスマホに着信が入ったのは、いつもの集合時間頃だった。無論相手は菜々子である。


【ちょっとどこ行ってんのー???先いくなよバーカ!!!!】


 とでも言いたいのだろうと思い、僕は通話を無視した。ブーブー煩かった。まるで菜々子のように煩かった。





 休み時間はなるべく外にいるようにした。菜々子はクラスの中心人物だから、クラス内で友達も多い。それを言い換えるとクラスの外で何かすることがないのだ。


 1限目が終わったらトイレに篭った。


 2限目が終わったら校庭で佇んでいた。


 3限目が終わったら踊り場で外を眺めていた。


 昼休みにはそそくさと弁当を持ち出して、校舎裏で座って食べた。


 5限目が終わったらわけもなく廊下を歩き続けた。


 そして6限目が終わったら、そのまま真っ先に教室を出て帰宅した。


 帰宅してからも菜々子に会わないよう、家に居ないで晩ご飯までぶらぶらしていた。


 マクトに行って小説を書いたり


 フックオフに行って漫画とラノベを読み漁ったり


 そんなことをしては帰ってきて、夜はゲームと小説を書いて寝る


 確かに1人だったが、怒声が聞こえてこないというのはいいことだった。


 彼女はよく言っていた。あんたは私がいないと何にもできないやつだと。


 でもそれは間違いであったことを認めさせてやる。


 菜々子なんて居なくても、僕はぼっちとして生きていけるんだ。そう思うと明日学校に行くのも晴れやから気分になった。







 こういった日々が何日が続くと、流石に菜々子もおかしいと思ったようだ。


 1時間早く出る僕に対して、対抗するように1時間早く家の前に来たことがあった。その時は駆け足で学校まで向かって行こうとして、


「待てっつってんだろ???」


 と首元を掴まれてしまった。結局その日は一緒に登校する羽目になったので、これからは時間をバラバラにすることにした。


 また休み時間もたまに見つかるようになってしまった。昼休みに1人で飯を食べようとするとついてくることもあった。


「ぼ、ぼ、ぼっち飯じゃねえかよ!!!!マジ草マジ笑えるwwwwwww陰キャの典型かよ!!!!!!よくそんなことできるな!!!!!ほら私が一緒に食べてやるから……」


 と言ってきたが僕はその日さっとその場から離れた。


「いや一緒に食べてあげるって……」


 とまだ菜々子は続けていたが、僕からしたらご遠慮被りたかった。一緒にいたくないと、疎遠になろうとしているのだから当然である。僕は1人で生きていくのだ。


 窓から外をぼんやり眺めていたら、後ろから小突かれたこともあった。周りにいる女3人組も揃って、だ。


「何あんた人生に疲れた中年男みたいな面してんの!?!?!?黄昏るような人生だけどそんな年齢じゃねえっつうの!!!!」


「やめときなよ菜々子ー!クラスに居場所がなくて馴染めないからあんなところにいるんだってー」


 お供からの暴言もセットだったが、一度決心した僕の気持ちは固かった。僕はそう言った声にも徹底無視で応戦した。貶すなら貶してみろ!!馬鹿にするなら存分にすればいい。僕にはそんなもの聞かないぞ!!!


 そう思いつつもやはり心にはダメージがいくので、好きな異世界転生の作品を読んで心の安寧を取り戻していた。こんな時でも、小説は僕の心を救ってくれたのだ。


 そして遂にはフックオフにも顔を出してきた。流石にお店の中で面と見て馬鹿にするようなことはしなかったが、近くに寄ってきては侮蔑の表情をする、と言った嫌がらせを何回もしてきた。あまりにもしつこいので文句を垂れたくなったが、そうして突っかかってきたなら向こうの思う壺だ。だから僕はじっと耐えた。無視し続けた。


「おい誠!!!!何私のこと避けてんの??」


 フックオフから出た時に、遂に菜々子が声をかけてきた。


「あんたなんか私以外話し相手いないってのに、私と話さなくなるとか頭おかしいんじゃない??どうしたの??どう……」


 ここで僕は耐えきれなくなった。彼女のしつこさに根負けしてしまった。だから初めて、僕は捲し立てた。


「どうしたもこうしたも、僕のことストーカーしないでくれる?」


 きょとんとした顔をした菜々子。


「いやストーカーだよね??完全にストーカーだよね??朝も昼休みも10分休みも放課後までついて回って、ぶんぶんぶんぶん文句ばかりつけて??もうほんと迷惑!!!迷惑すぎて頭痛くなる!!!近くに寄ってこないでくれる???粘着質がうつっちゃうから!!!」

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