lost tear in rain
粟立つ感覚。寒らしきの雨に打たれて。
ベルビュートのジャケットの濡れし所に。
あなたの影はない。エルネンスフラース。
バタン。
「カイは……いないのね。グレイ……」
「すまねえ。なんにもでなあらな……ほう」
座する灰弟。フィッシュは揺らぎを止める。
消息は昨日。路地裏から刑事が拾う所で。
「私、助けに行く。言っているもん。なら」
「んなこと言ってもさあよ、どこにんだか」
「私が大聖希で調べる。グレイ、いい?」
「いけどよお。まあ、やってみらやい」
大聖希、起動。オリエライズーースーーン。
ーーアアアアーー。
「ん! 分かったさよ。つかまってらあ」
「なら。私も今回は行く。早く助けに!」
ありく所にあるなすことに、あるなす常世の摩天楼。廃れたビルディングスにおらるる優兄に、会いにいきませ助けなんせい。拝礼。
暗澹。廃ビルの影には何かが住む後。捻れ、削る、何か。灰弟、雷鳴轟く階中にて、エレベーターを止めて出る。瞬きの光に映されたのは、古びた椅子。しかし、訝しきは放縄。
「どういうことだ? カイ、捕まってたん」
「俺は捕まってなどいないよ、グレイ」
ことでい、と問う灰弟に対し、優兄は乾いた面持ちで雷鳴の中にある暗がりで言い放つ。
「俺はこの廃ビルから始まり、この街を支配する。この雨通りの街……統べるのは雷だ」
雷轟鳴。灰弟、握りを直して優兄を呼ぶ。
「俺らはどうなる。屋はひとりかあ!?」
「やりたいやらやればいい。俺は、戻らん」
「カイ! 戻って!! 私からも、お願い」
「エリー。俺はもう、戻らない。一筋の雷だって、落ちたら跡形もなくなる。それが命だ。俺は俺の生命を使って、事を成す」
譲らなく押し合う空気。やがて、ふと張り合いが無くなるのが、灰弟の気団。やめだ。
「カイ、だがな、必ずお前を迎えにいく。それまでぁ、このさみせい場所にいんだな」
「俺は待たない。グレイ。お前もエリーも」
高都のビルディングを抜けた後。声あるや振り向いた灰弟の頬に打たれる発音。しだく。
「どうして……どうして!? 私、カイが!」
「ああ……どうせりゃあな……けいろう」
傘を差し、腫れた片頬を具して行き去るは互いの落暗。降り頻る雨がもたらした灰青の空気感に、沈みゆく身体を、眠りのなかにたゆたえて。
後日。
雨上がりの眩しさに、白けども目を細める灰弟は、朝餉がてらにフィッシュの様子に赴く。
「よう、くれよ。少し混ぜない? えだろ」
えいようーーと、そういえば。
「ウマンが何か受け取ってたぜ? ありゃ?」
はあし、と息をついていると、フィッシュが面下より顔を出す。
「私はこのまま黙ってはられない。必ず、カイを迎えにいく。その準備をしてたの」
「はあよ、仕方ねえ。うじる暇もねえが、行くか! や俺も、用立てしといたんだった」
さなると歩く寸団は、いつぞの犬の縁なれば。迷う憐眉のケンバツを、叩いて直しゃあ、しまいでか。険団言わしゃあ戦団なら。
「ようけし。優兄戻した暁にゃあ、タダでなんでも聞いてやらあ。荒事塞事何でもごされ、かかる所であるやんしくすう、てえな」
雨希の空に青さ染みらん、あおにきことにもいざかかん。引因功手、柄にも触れんや事。