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天才を呼ぶ男   作者: 千波幸剣(せんばこうけん)
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青空道守編(5)

青空道守編(5)


「しかし、もしも震災が起きた時にこれを使用できるのはほんの一握りの層ということだよな」


「うむ」


3人が乗車しているのは自動運転装置式モノレール。


関東圏の主要な都市を網羅しているため、政治家、経済界の重鎮の中でもこの存在を知る人間はほんの一握り。

これに乗り、地上に出ることなく、安全に自分の予定場所近くまで移動する事が出来るため、SRシャドウルートという隠語で呼ばれている秘密路線だ。


「このルートの存在は国民には公表しないんだろ」


「関東圏の人間すべてを避難させる能力はない代物だからな」


「それはうちのも同じだ。ただ海道家のものなら使用人とその家族までは乗車を許す予定にはしてある」


「守、今の日本の政治経済を守るトップは命を落とす覚悟はない」


「カリスマ性のある政治家もいないしなあ」


「それは違う。あれも結果論だ。どの時代もどの国も国民を高揚させた人物が歴史の顔になるであろう」


「それを言われると、今この国は高揚させることすらできない。まあそれ以上口にしたところで世の中変わるものでもないか」


「空はどうだ。あの男の存在感はこの国にとってどういう存在になりそうだ。守の物差しではどう見えている」


「まだ推し量れないところもあるが、直感的に表現するなら凪元首相以上かもな。逆なのかもしれないが」


「お互いに凪元首相を知らない世代だからな。空以上だとしてもあの話を引き継ぐ家系の人間としてそれも納得がいく」


「それはそれとして、真三郎、この大学に空が入学してきたことへの違和感はないか?」


「本人が凪の血を引くものではないと仮定すれば、空の秘密を知る誰かの差し金かもしれないな」


「俺もそれを疑っている。そして、今回の事件。お前まで狙ってきた事とも繋がりがあるかもしれん」


「私だけではなく、守もセットということもある」


「なるほどな。どちらにしても手段を選んでいない事から主犯格は本気で俺たちを消そうとしているということか」


「それはまだ確証はないが、この事態が確証ということになるのかもしれないでござる」


「いきなり、その言葉遣いに変えるな。会話の流れが止まる。しかし、こういう時間は久しぶりだな」


「いつかとは思っていたが」


「俺もだ。俺は経済界、お前は政界のトップに立つまでこういう機会はないと思っていたからな」


「空との出会いが迷いすら振り切らせたでござるな」


「ああ、もう親父じゃなく、俺の時代にシフトする覚悟を決めた」


「私はそちらのほうはまだまだのんびりと行きたいと思っている」


「それじゃ駄目だ。空の存在を考えろ」


「空は自分の命を簡単に投げ出す。しかし、あの生きかたなら後悔はしていないであろうな」


「俺には出来ない生き方だ」


「守、まだ気付いていないのか。気付かぬうちにお前も空のために自分の命を掛ける覚悟を決めている発言を聞いたのだが空耳か」


「俺が他人の為に命を差し出すとはお前のとき以来か。懐かしいというか、まだそんな感情が出せる人間だったんだな」


「それは私も同じだ。あの者は本当に人の心を揺さぶる人間だ。ついさっきまで命を狙われていた二人が自分の事よりも空の話しかしていないのだからな」


「二人とも、何だか子供時代に帰った様な会話してるね。あの頃は私は仲間はずれだったけど、今の私は違う。真三郎の許嫁で守り手だから、絶対に離れませんから」


「まだ昔の事を言ってるのか、レオナ。心配しなくても、真三郎は取らないから。借りる事はあるかもだが、守り手のお前も一緒だろうしな」


「たまには男同士の時間もほしいのだが」


「真三郎の命はこの身に代えても私が守りますのでその時間も私は同行します。いや、絶対にするし」


「もてる男はうらやましいな真三郎」


「学校一人気のあるお前がそれを言うな、守」


「人気はビジネスでは必須なスキルだがプライベートではノーサンクスだ」


「人気をビジネスとスキルに置き換えるな、守」


「その突っ込みも久々だな、レオナ」


「思わず、言っちゃった。でも、守ももう海道家の跡取り。家柄を考えると私は言葉遣いを変えるべきだよね」


「いや、俺にはいいから。お前はプライベートの友達だからな」


「守、子供の時からレオナに惚れていても、レオナだけはお前にも譲れないでござるよ」


「真三郎、もう昔の話だ。まあ誰かを嫁にというのならレオナぐらいしか想像できないけどな」


「守、良く分からないけど、照れるからそれ以上、私の話題を口にするな」


「俺のこれから先歩く未来は食うか喰われるかだからな。嫁になる人間を選ぶにしても命を預けれる人間でないと、いつ食われるか分からないしな。そこは冗談ではなく本気で答えてみたのだが」


「それでもレオナは譲れん」


「ああ、分かってるさ。というより、そんな気もない。お前らは昔から両思いなのか十二分に知ってる。どちらかといえば、レオナというよりもお前らの関係に憧れているようなもんんだ」


「空にも嫁を探してやらんとな」


「真三郎、上から目線でじじいのようなセリフ言ってら、空に笑われるぞ」


「そうかもしれんな。まあ空の前にまず守からか」


「いざとなれば、感情抜きにして俺はナイスバディの外人さんでも嫁にするわ。それくらいの方が物事を柔軟に考えられる適応能力つきそうだしな」


「守、外人さん嫁にしたら、毎日愛してるって、ハグしながら言える覚悟はあるの?」


「ない」


「それなら無理ね」


「いや、嫁はそのまま母国に残して、たまに会いに行くにするし」


「守、愛のない結婚はこの今岡真三郎が許さん」


「だよな。お前には分からないよな。俺もそういう人生送りたいのだが相手がいないのなら楽しむのもありだろ」


「守、あんたは子供の頃から大人ぶってるけど、女に飲み込まれるタイプなんだから大人ぶるのは止めなさい」


「もう分かった分かった。ラブラブ息ぴったりに俺に突っ込みを入れるのはやめてくれ」


「そろそろ到着だ」


「そういえば、これどこに向ってたんだ。どこに着くんだ」


「国会議事堂の地下だが」


「はぁ。そんなところに来て、何をするつもりだ、真三郎」


「何をしようか、守」


「俺に聞くな。お前がここに設定したんだろ」


「そう言いたいところだが、そうではない」


「一難去って、また一難ということか」


「それならこっちにも考えがある」


真三郎は右手の親指と人差し指をあごに乗せるように口に当てると今置かれている状況よりもこの状況に置かれた意図を考えた末に何か含みを持たせた言い回しで答えた。


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