青空道守編(13)
天才を呼ぶ男(青空道守編)⑬
「それでは私は少しばかり用がございますので失礼致します、下僕どもの皆様」
「あんたねぇ・・・」
瞬時に姿を消した霧子にサユリの言葉は届かなかった。
「真さん、そろそろ目覚める頃だと思う」
空也は優しい口調でレオナに告げた。
「青木君、真三郎は本当に大丈夫なの?」
右手を両手で握り締め、心配そうに真三郎を見守るレオナ。
「大丈夫、都さん。ただ・・・」
「ただ・・?]
「前よりもさらに賢くなっているかも」
「それならって・・・・まあ、いいか」
口にしようとした言葉を消して、レオナは眠っている真三郎に口づけをした。
「お姉、い・・・今・・・・何を・・・・こっそり!」
「こっそりでもないけど」
「では、堂々と何をしたの、こんな時に」
「キスだけど、何か問題でも?」
「真三郎さまが意識を失くしているときにうらやま・・いや、おかしいでしょ」
「王子様はお姫様の口づけで目を覚ますのよ、知らないの?」
「知りません。いや、知っているもそんなメルヘン、ありえないし」
「あっ、ひょっとして、うらやましかったの?サ・ユ・リ・ちゃん」
「違うし。知らないし。もうこの話はなしで」
「私が守に頼んであげようか?今真剣に青木君と話しているようだけど」
「私も私のタイミングで頑張るから心配要らない!」
「それならいいけど」
「うっううっ、レオナとサユリの声がさっきから耳元で響いてるでござる」
「真三郎、気が付いたの?」
「どれくらい眠っていたでござるか?」
「1時間くらいかな?」
「それはそうと不意打ちは駄目でござる」
「何のことかな?」
「丁度意識が戻り始めたときにレオナの顔が目の前にあったでござるよ」
「し、知らないし」
レオナの顔が赤くなり始め、真三郎に掛かっていた布団を奪い取ると自分で被った。
「お姉もまだまだお子ちゃまでしたか」
「サユリ、何のことだ?」
不意にサユリのすぐ後に守がいた。
「何でもありません」
「ならいいんだ。おっ、真三郎、お目覚めか。俺の情熱的なハグが必要か?」
「必要ないでござる」
「残念だ。それならレオナに」
「守さま、冗談でもそこは私にしてください」
「分かった」
そういうと、守はサユリに優しくハグした。
「いきなり何するんですか?」
サユリが守を突き放した。
「いや、あれ、俺、言われたとおりにしたんだけど」
「守、その選択肢は駄目でござるよ」
「真三郎に駄目だしされるとは俺としたことが」
「守様、駄目じゃないんです。心の準備がまだ出来ていなかったので」
「ノリで言った言葉に反応されるとは思ってなかったから俺も心の準備が出来てなかったから勢いだけで。悪い、緊張しすぎて、少し強く抱きしめすぎたかもしれない」
「えええっ・・・いえ、丁度良い感じでした。また宜しくお願いします」
「もう、私が布団被っている間に私よりも恥ずかしい事になっている人たちがいるんですけど?」
「まあまあ、仲良きことは良い事でござるよ」
「もう、真三郎のござる言葉、治ってないし」
「そういえば、真三郎、空が言っていたが日本の歴史を見てきたのか?」
「どう言えばいいのか。あれがそうならそうなのかもしれない」
「ござる消えた」
「サユリ、それ私の役目だから」
そこへ霧子が帰ってきた。
「お兄様、連れてまいりました」
「ここはどこなんだ?シャドウガール」
「この方は・・・・・・」
少しまだ意識がハッキリしていないが真三郎だがその人影を確認するとそこから言葉が出ない。
「何だ真三郎、お前、外人のおっさんだからって・・・・」
突っ込みを入れようとした守でさえ、起動停止したように動かなくなった。
「お初にお目にかかります、トーマス・カルバート」
空也はトーマスの目の前まで来ると、ゆっくり深々と頭を下げた。
「話はこのシャドウガールから聞いている。理解しがたい内容だったが私を助けてくれたようだな」
はっきりしない口調がトーマスの気持ちを表しているようだ。
「おじさん、本当は気づいていたんでしょ、改革するにはまだ早いって!」
アメリカ大統領を相手に霧子はやや怒っていた。
「本物なのか?」
真三郎は幻を見えているようにトーマスを見えている。
「どうやらそのようだな、真三郎」
守は少し落ち着いた様で真三郎の肩に手をやった。
しかし、後の二人はあまりの驚きに座り込んで立てないでいた。
「そこの若造は見たことがあるな。首相の息子と経済界のボスの息子か」
トーマスはどうしてここにお前たちがいるのか?と言いたいようだ。
「私は友人です」
「いや、違う。親友だ!」
「いや、違う。生涯の伴侶だ!」
「あのぅ、守さま。伴侶は私のはずでは?」
サユリが不安そうな顔で守を見つめる。
「やはりあなたは私とお兄様の関係を引き裂こうとする存在でしたか?」
守の言葉に霧子が呼応した。
「真三郎、この状況を打開してください」
レオナも呼応した。
「そろそろいい加減にするでござる。客人の前で失礼だよ」
落ち着きを取り戻した真三郎は官邸内での今岡真三郎になろうとしていた。