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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

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黒と白の世界

作者: 黒木メイ
掲載日:2015/10/30


外の吹雪のせいで窓はガタガタと激しく揺れている。

ぶるりと身体が震え、隣の温もりを求めてすり寄った。



「雪……止まないね」



「ああ。でも、時期に止むさ。きっと大丈夫。それに、こうして吹雪の中、山小屋を見つけれたんだ。運も俺たちの味方だよ」




「ごめんね。私のせいで……」




「いや。それより。カナデが一人で遭難しなくてよかったよ。タクミに会わせる顔がなくなるところだった」




「タクミはただの幼馴染みだってば。私の彼氏はミツルでしょう?」




拗ねた表情で恋人の顔を見つめると、ミツルは苦笑いを溢しながらも軽く頷いた。




「それでもさ。タクミにとってカナデは大切な存在だし。俺は二人の中に無理矢理入ったようなものだからな」




「ミツルだってタクミと親友でしょう? きっとミツルじゃなければタクミは認めなかったよ」




タクミが必要以上にカナデに執着している事は自覚している。おそらくソレが恋愛感情故だということも。

カナデもミツルと付き合うまでは恋愛感情はないもののタクミに依存していた。




「それは嬉しいな」




心底嬉しそうにミツルは笑いカナデを抱き寄せた。カナデはミツルの肩に頭を寄せて黙った。




お互いが沈黙してしばらくして、カナデは顔を上げ、ミツルを見つめた。ミツルはカナデの頬を撫でてそっと顔を寄せた。

軽い口づけをかわす。そして、離れた時にカナデは小さな、けれどしっかりとした声色で言葉を発した。




「私は殺さないの?」




ミツルは動きを止め、カナデを見つめ返した。

視線が絡みあった後ミツルは笑った。




「殺すわけないだろう。俺がカナデを殺すなんてありえない」




「ありえないの? 私のことが一番憎いんじゃないの?」




「何をいきなり言い出すんだよ。カナデ不安になったのか?大丈夫だってきっと助かるから」

「タクミの彼女達は殺したのに? 一番邪魔なのは私でしょう?」

「……」




ミツルの顔から表情が消えた。




「おかしいとは最初から感じていたの。どう考えてもミツルは私のことなんか好きじゃないのに告白してきたし。……私達が付き合い始めてタクミは彼女を作るようになった。その彼女達は皆亡くなって。始めの彼女は事故扱いになっていたけれど二人、三人と彼女達が亡くなれば……さすがに皆可笑しいと思うよね。容疑はもちろんタクミにもかかったけど。タクミの彼女が殺された時いつもタクミは私と一緒にいたからアリバイは完璧だった。でも、よくよく考えてみるといつもタクミといるきっかけを作ってたのはミツルだよね。しかも、誰かしらの目があるところでばかり会わせるようにしていた」




「……俺がやったって証拠も動機もないと思うけど?」




「証拠は……」




ミツルの腕時計を指差した。



「時計? 時計がなんの証拠になるっていうんだ?」




「時計じゃなくて、その下の傷だよ。……それ、女性の爪で引っ掛かれた後でしょ」




「……見られてたんだね。でも、これはさ、ちょっと女友達と喧嘩して引っ掛かれただけでさ。カナデが思ってるようなものではないよ」




「それこそありえないでしょ。女嫌いのミツルが女友達がいることもましてや、触れさせるなんてありえない」




「俺が、女嫌い? そんなわけないことはカナデが一番わかってるはずだけど。もう一度、確かめる?」



ミツルの指がカナデの唇を撫でる。カナデは頬を染めながらも睨む。




「ミツルは、『私』だから触れるんでしょう。『タクミの大事な存在』だから。『ミツルが好きなタクミの』」





ミツルはカナデの瞳をジッと見つめる。カナデはその視線から逸らさない。しばらくしてミツルは溜め息を吐いた。




「まいったな。そこまで気づかれていたなんてな。……そこまで、気がついていたのに、何故俺と別れなかったの?」




「それ、は……」




カナデの視線が泳ぐ。




「俺に殺されるかもしれないって思ってたんだろ?」




「そう、だけど……き、なんだもん。」




「え?」




「殺されるってわかっていてもミツルが好きなんだもん!」




真っ赤な顔で叫んだカナデをミツルは唖然とした顔で見つめた。




「ふ、ははは! タクミが好きになるはずだよな! ……だから、女嫌いの俺でもカナデは平気だったんだよ」




最後にポツリと呟いた言葉はカナデにはよく聞こえなくて、カナデは首を傾ける。




打算や上部だけを見るわけでもなく自分だけを真っ直ぐに見つめてくる彼女をどうしても嫌いにはなれなかった。恋心とは呼べないまでもカナデにはどこか好意を抱いていた。




「カナデを彼女にしたのはさ。タクミからカナデを取り上げる為なのと、タクミからカナデを奪った『俺』をタクミに少しでも印象づけるためさ」




「どういうこと?」




「タクミはさ、カナデを奪った俺に対して何かしら感じるだろう。憎しみだったり、怒りだったり。カナデといるのを見せつければなおのこと『俺』をタクミに刻み付けられる」





「……歪んでるね」




「そんなのわかりきったことだろ。歪んでなければタクミの彼女達を『排除』したりしない」





「私は排除されるの?今、絶好のチャンスだと思うけど」




「……カナデはしないよ。タクミに絶望を味わせたいわけじゃないから。そんな姿俺が見ていられないよ」




「タクミは……絶望を味わうよきっと」




ミツルの腕時計を外して傷を撫でる。カナデの悲しそうな表情にミツルは思わずカナデから視線を反らした。




「そうだといいけど」




きっと、優秀な警察は『彼女』の爪から俺に辿り着くだろう。

この傷ができた時からこれが最後だとわかっていた。

まさか、カナデに全てがバレていたとは思わなかったが。

タクミは俺の事を知って、どう思うだろうか。




……一生『俺』を忘れられないくらいに傷つけばいい。




「……雪が、止んだみたいだな。行こう」




ミツルは立ち上がりカナデに手をのばす。



カナデはその手を取るのを戸惑った。



カナデの計画では、このまま二人でここで死ねたらと考えていたのだ。安直な無理心中を企ててわざと遭難までしたのだから。

だから、まさかミツルが自分を殺すつもりもなくて、雪が止むとも思っていなかった。




ミツルはカナデの表情から心境を読み取ったのか苦笑いをした。




「カナデが嫌でもカナデはタクミの元へ無事な姿で送り届けるよ。前にも言ったろ?俺は二人とも大事なんだって。アレは嘘じゃないから。……信じられないかもだけどさ」




ポロリとカナデの瞳から涙が零れた。




嬉しいと思った。

女嫌いでタクミ一筋なミツルの隙間に僅かでも自分が入れたことが。

すごくすごく嬉しいと思った。

ミツルが犯罪者だとしても。自分を好きになってくれないとわかっていても。

それでも、目の前の男が好きで好きでたまらない。






「さぁ。タクミのところへ帰ろう」




差し出された手に今度は迷うことなく重ねた。

二人は重ねあった手を離すことなく山小屋を出る。 




暗い山小屋から出ると、そこには雪景色一色の真っ白な世界が広がっていた。

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