転/第九十話:(タイトル未定)
便器の穴の底からは、暗闇へと続くトンネルが伸びてあった。高さも横幅もなかなかあり、手腕をいっぱいに伸ばしてもレンガ造りの壁面には届かない。
なので、壱さんと横並びになって歩んでも、窮屈さを感じることはさほどない――ハズなのだが、お隣さんがなんでだか我が手腕をがっちり絡め取ってきおり、それによって必然的に身体が密着しちゃって、どうにも歩きづらいことになっている。
「まだ、かかるのかな?」
手元にある光源があまり強くないからなのか、トンネルの先は見えず。進む先には、ずっと暗闇が続いてある。“先/これから”がわからないというのは、けっして心地の好いものではないわけで。叶うなら、わかりたいと思うもの。
――そんなわけで。
きっと暗闇の“中身/正体”を知っているであろう、“ランプっぽいモノ”を手に先導をしてくれている“先ほど不意に現れた子ども”――こと、“レン”くんの背中に、“確かめる言葉”を投げてみる。
「いんや、そろそろだぜ」
振り返ってニカッと笑みある横顔を見せてくれながら、“レン”くんは応じてくれた。
「そうか、ありがとう。――それにしても、さ」
黙々と進むのもアレなので、
「よく、知ってたね。“こんな道”」
気になることの“ひとつ”を、訊いてみた。
「うん? ああ、“ダチ/友人”なんだよ」
どこか誇らしげに、けれど努めてしれっとしたふうに“レン”くんは、
「“ここ”造ったの」
そう、教えてくれた。
「お、見えてきたぜ。出口だ」