転/第八十二話:(タイトル未定)
今回やる“はしり/勝負”の“遊び方/決まり事”は、とくに難しいことはなく。
なんだったか映画とかで見聞きした気がするドッグレース――あるいは競馬かな、そのカメ版とでも言おうか。出場するカメたちの“着順/一着、二着、三着”を予想し、お金を賭け、あとは祈る。やるのはそれだけ――だけ、だが、この予想の当落と賭けた金額によって、歓喜ないし哀しみが生じるわけだ。
それにしても……うーん、む。
なにが楽しいのだろう、これは。
まあ、厳つい顔面のおっさんがそろいもそろって、トコトコ走るカメさんへ真剣な眼差しを注ぎ、拳を握りしめて声援を送ったりしている絵面は、ある意味で恐ろしくおもしろいのだけれどもね。
ただ、わからないのは、そういうところではなく。
賭け事というモノについて、である。
果たして――もっと豊富な人生経験を積んで“大人/余裕のあるヒト”になれたら、知れるだろうか。“お金で遊ぶ”というお戯れの、その楽しさを。
――いや、べつに知れなくてもいっかな。
「さあさあ、みなさん、そろそろ準備はよろし?」
柏手を数度、打ち鳴らしてから、“カウンター/勘定台”のおヒトが言った。
参加する方々の、個性豊かな返答が、奇妙な熱気をともなって室内に充満する。
「いいようね。じゃあ、いくわよん」
言葉のあと、スタートの合図だという“乾いた堅い木材を打つ音”が――