表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/120

転/第八十一話:(タイトル未定)

「いやー、これで勝たせてもらえましたら、あんさんの相棒さんの飴細工菓子を作らせてもらいますよ! 記念にね! もちろん、お代はいただきませんよ! お気持ちですからね! あ、言うてませんでしたけれども、あたしゃあ飴菓子屋をやっておりましてね。美味い、キレイ、おもしろいとなかなかの評判なんですよ! 品質、味を、この身を持って、しっかりと確かめて作っておりますからね! ま、“それ”の、とりわけ味を丹念に――」

 室内の大部分を占有する“ジオラマっぽいモノ”の側に移るも、状況はあまり――どころかまったく変わらず。

 すぐ側では、いまさっき厄介なことを言ってきた、自称・飴菓子屋の主人なおっさんが忙しなく口を動かしていた。

 まあ、数歩しか移動していないから、当たり前なのだけれども。

「そりゃあもう丹念に丹念に、確かめすぎましてねぇ」

 それにしてもこのおっさん、

「気がついたら、あら仰天! 腹が太鼓なご覧のありさまなわけで――」

 お喋りが大好きだなぁ……。

 とりわけ、“自分に関するお話/自分語り”が。

 この極短時間で我が耳に居候し始めたタコさんも、「うげげぇ」とうんざりしている。

 もう、そういう“環境音/BGM”だと諦らめて聞き流そう。……うん。そうしよう。

 気持ちを切り替えて、正面に設置されてあるモノへ意を向ける。

 この室内にあって圧倒的な存在感を放つ、“ジオラマっぽいモノ”。砂地、砂利地、岩地、雑草的な草が植わってある部分、川や池がごとき水溜まり、丘や小山っぽい大小ある高低差に、落とし穴にしか思えない深さある“くぼみ”――と、“ここ”にミニチュアの家やらなにやらの人工物とか人形を配置したら、気分はぽつねんとたたずむ巨人だ。

 まあ、“ここ/場/ジオラマっぽいモノ”に実際、足を下ろすのはオレではなく。首を伸ばして興味深げに“場”を眺めている、我が相棒さんであるが。

「いきなりダッシュかましたりとかしないでくださいよ、キチさん」

 というお願いを聞き入れてくれた――からなのかどうかは、わからないけれども。キチさんは足を下ろした“その場”で、おとなしくしていてくれた。ただ、砂地が身にしっくりこないのか、ときおり“足/脚”や“しっぽ”がもぞっと動く。

「ちょいと失礼しますよっ、と」

 都合がよいので、この隙に、先ほど渡された“赤色の布”を、その甲羅にくくり付けさせていただく。終わったらすぐにほどいて外せるよう、気持ち緩めのリボン結びで。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ