転/第七十九話:(タイトル未定)
極めて密やかに屁をこいたときに限って、どうしてかそのほんの一瞬に限って、周囲がしんっと静かになりやがり、こいたことがバレたりするもので。
どうにか口にした、べつに届かなくてもよろしかった我が言葉は、密やかにこいた屁がごとく、この場にあるすべてのお耳に届いてしまったようだ。
息をのむような沈黙の間を置いてから、「おもしれぇ! 勝負だ!」というハデな声を皮切りに、オレもオレも、と勝負に参加するというヒトが次々と名乗り出てきた。
その結果――
二名を除く、この場にいる方々が参加することになってしまった。
ちなみに、不参加の二名は、この場を仕切る側のヒトであるらしい、“カウンター/勘定台”のおヒトと“壁がごとき巨漢”さんである。
まあ、つまり、関係者以外は、全員参加とあいなってしまったわけだ。
ここまで来ておいてアレだが、いまだに気乗りはしないわけで……。
けれども、この流れで、「やっぱり、やめます」と進言できるわけもなく。
なので、
「……ふぅ」
とっとと始めて、とっとと終わらせて、とっととここから出よう!
頬を叩いて活を入れた――つもりで、思考を切り替え、
「それで、あのう、すみませんっ」
今度はちゃんと聞いてもらうための声量で発し、
「詳しい“遊び方/決まり事”を、教えてください」
とっとと始めるために重要なことを、訊いた。
そうしたらば、先ほど質感の異なる沈黙の間が生じ――
転瞬、室内がどっと沸いた。脳ミソを震わせる勢いある笑いで。