転/第七十六話:(タイトル未定)
歩を進めながら、“お金”や“お買い物”についてアレやコレや考えていたからだろうか。道中のそこかしこにある豊かな毛色の“勝負の場”や“お店”に、意が向いた。
さっき壱さんが“つぼふり”をおこないにいった木造平屋のように、ぴしゃりと戸が閉められてある、内部の様子がうかがえない場のほうが多くあった。けれども、戸を閉めていない場もあった。そんな開放的な場からは、“そこ”でおこなわれてある“それぞれの熱気と熱狂ある勝負”が、びくぅっと驚くほど鮮明に外まで駄々漏れていた。
具体的な“勝負の内容/どのようなルールのモノか”は知れないので、ちらりとうかがったときの“印象/様子/空気感”からしか“なに”と述べられないのだが、“かるた”や“花札”っぽい紙の札をもちいたモノ、“将棋”や“囲碁”っぽい盤をもちいたモノ――などなど、“どこか知っているような気がしてしまう勝負”が、“なぜか懐かしさをかんじてしまう遊び”が、“そこ”らでおこなわれてあった。
そして、そんな“勝負をおこなうヒト”を相手にしているであろう飲食のお店も、“勝負の場”と数を競るがごとく多く見られた。ただ、ほとんどのお店が、ガッツリとお腹を満たすお食事処というよりは、軽いモノをつまみつつ、乾いたのどを潤すといったかんじの、いわゆる屋台っぽい“軽めのお食事処”のようだった。あと、立ち食いそば屋っぽいお店もあり、“プタ”を食しているヒトの姿が多々、見られた。
それと……いや、まあ、これは、とてもどうでもよい瑣末なことではあるが、なにげなく周囲を見やって、「あ、あのヒトが食べてるの“プタ”だ」と当たり前のように認識できたことが、妙に――奇妙なほどにはっきりと、嬉しかった。いまオレ、顔がニヤけてるぅ、と自覚してもなお嬉しさが持続しちゃっているから本当、“奇妙なほど”に。