表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/120

転/第六十五話:(タイトル未定)

 我が意が“ある威勢”にかきけされてから……、どうれくらいだろう?

 そこそこの距離を歩いたようには思う。

 ……まあ、見上げた空にある日の位置は、さして変わっていないのだけれども。

 ヒトを避け、モノを避け、美味しい匂いにふらふら惑う壱さんを、「食べ物なら、いま大事に抱えているでしょう。ごっそり。――というか、さっきから、ちょいちょいつまみ喰いしているでしょう。“まっさかー、そんなことするわけないじゃあないですか”って顔して首を横に振っても、口のまわりは油でテッカテカしてますよ」と説得しつつ来たから、そんな気がしてしまうのだろうか。

「とりあえず、ご指示通り“かわ/運河”まで来ましたよ。壱さん」

 自然の河川ではなく、石壁で縁取られてある人工の水路。物資を積載した船たちが絶妙な舵さばきですれ違い、行き交う。

 水量を管理していて増水氾濫の心配がないのか、陸地と水面との高低差がほとんどない。かがんで手を伸ばせば水面に触れられる程度だ。

 ちなみに、陸地と運河との堺には一切、安全柵とか安全ロープといった境界を示すモノがなく。あえて境界を示すモノがあるとするなら、町との間の道に等間隔で植えられてある樹木たちだろうか。

 うっかりすると、冗談抜きでそのままドボンしそうで怖い。

「お、そうですか。では、次――へ行くまえに、呼んでおきましょうかね」

 壱さんはそう言うと、いままで大事に抱えていたお持ち帰り用の紙袋を、「少しの間、もっていていただけますか」とあずけてきなすった。

「はい」

 受け取る。おおう、だいぶ軽くなったなぁ。

「…………呼ぶ?」

「ふふっ」

 壱さんは言葉ではなく、意味深長っぽい微笑みを返してきなさった。

 それから耳をすませる間を一拍、置いて、一歩を踏み出す。

 杖で足元を確かめつつ、運河のほうへ迷いない足取りで進む。

「ん、んん?」

 壱さんが、なにをどうしようとしているのよくかわからず。首をひねりつつ、答えを知り逃さぬようすぐ隣を付いてゆく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ