承/第四十九話:ムシムシ尽くし(其の三十六)
バツが淹れてくれたお茶を味わいながらお喋りをする、という食休みを充分に取ってから、壱さんとツミさんとバツはお風呂をいただきに行きなさった。「刀さんもご一緒に――」とのお誘いを主に壱さんから頂戴したが、丁重にお断りした。
べつに、“根競べ”をやらかしたあげくに鼻血を垂らしてダウンした壱さんとご一緒するのがイヤなわけではない。
御三名様がお風呂している間にやらねばならぬことがある、と気がついたのだ。ちなみに、当たり前のことだが、のぞきではない。わざわざそんなことやらかすくらいなら、ご一緒して間近で凝視すると思わせてチラ見する――て、そうではなくて。
閑話休題。
さっきお茶を味わっていたら、ふといまさら的に“気がついた/認識した”のだ。
お言葉に甘えて、なにもしてないじゃん自分、と。
一宿一飯の恩義があるのに、と。
まま、これは壱さんに対してもそうなのだが、いまはロエさんらに対してのお話である。
――なので。
極めて手前勝手な発想ですが、なにか掃除とかお手伝いをさせていただきたいわけです。もちろん、邪魔にならないようコソコソと働く所存です。――と、ロエさんにお願いしたらば、とても困った顔をされてしまった。
けれども、家中を掃除して自分らの寝床を整えるという役目をもらえた。
もっと早くに気がつけていれば、こんな駆け込み的“謝意の押し売り”なんぞせずに、自然な流れでお手伝いとかできたんだろうなぁ……。己の気の利かなさというか、流れに乗じてそのまま行こうとする波乗り気質をどうにかしないとなぁ……。諸々を反省しつつ、よく絞ったぞうきんで縁側の床を拭く。
こうして改めてやってみると、なんだか掃除が楽しく思えてきた。
家に帰れたら――帰ったら、手始めに自室のホコリと汚れを一掃しよう。絶対に。