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承/第四十四話:ムシムシ尽くし(其の三十一)
個人的には“サウナ”と言い表すほうがしっくりくる“この”お風呂の、ムワッと暑い室内に、ほぼ裸な身を置くことしばし。
額のあたりにじんわりと滲み出た汗が、静かに粒となり、頬をつたって、あごの先から、ポトリと落ちた。木製の床に落ちたそれは、滲み出てきたときの反対に、じんわりと床に染みて消える。
そろそろ出ようかなぁー。
井戸水で汗を流してサッパリ爽快になろうかなぁー。
なんて思案をしながら風呂場の出入口を見やったら、不意に扉が開いた。室内の熱気が外へ逃げ、代わりに入室してくる新たな空気に、いままで熱気を吸い吐きしていた鼻や口や気管や肺と、汗ばんだ身体が、爽やかな涼を堪能する。
なんとも心地好い――が、油断すると体調を崩してしまいそうなので、堪能してばかりもいられない。
それにしても、どうして扉が開いたのだろう?
体調のためにもその原因を探ろうと――するまでもなく、原因はそこにヒトの姿をして立っていた。オレと同じくステテコのような湯浴み着という、ほぼ裸な身なりで。どうしてだか、手に枝葉の束を持って。