第一章 魔王転生 第五部編集中
毎度オーバーロードは思うのだが、オーバージャスティスもふくめて 、正義の味方を称する人種は総じてしつこい。
しかもこっちの都合は考えてくれないし、何より空気を読んでくれない。そう。全くといっていいほどに。
ただオーバージャスティスは正々堂々を心情としていたから、オーバーロードと対峙するときは、一対一が基本だった。
それだけは誉めてやろうと、オーバーロードは思う。
だがこの世界の人間と来たら、あまりそんなことは考えないようだ。まぁ、戦場だからといわれれば仕方ないのだが、総じて目の前の騎士たちが「勇者」を名乗っていたら、どうだろう。
実際、今オーバーロードと対峙しているのは五人組で、体つきもデブからガリまで、更に瞳に秘める知性もそれなりから、多分アホだろうなというものまでいる。
そんな五人組の自己紹介と自慢を延々聞かされていたオーバーロードだが、四人目の時に強制的に相手の口上を中止させた。
「ちょっと待て、黙れ」
今日何人を撃ち殺したか分からないライフルを向けて、オーバーロードは言う。しかし目の前の勇者は黙らなかった。
「ふん、さすがは魔王の手先だ。人の話もきかないとはな」
「聞かねぇのはどっちだ。黙れ」
「私の名前はガブリエル・ワルター。ラエ教区の湯勇者である!」
「いや、待て。うるせぇ!黙れ!」
「我が家柄は教会軍の大将をつとめたこともあり……」
「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
やっと黙るガブリエル。オーバーロードはいい加減、うんざりしていた。目の前のきらきらした勇者とやらは、一体何物だ?
「おい、マルガレッタとやら。この馬鹿どもは、何者だ?」
マルガレッタもうんざりしているようだが、その目には恐怖の色もある。
「聞いたとおり、勇者よ。気を付けて、やつらは魔術を使えるから」
「はぁ?魔術?」
なんだそりゃと聞く前に、勇者の一人が切りかかってきた。まだ自己紹介を済ませていない五人目の男だ。よほど自己紹介が出来ないことが癪にさわるのだろうか?
「あっぶねぇな!」
二度目の剣撃を避け、オーバーロードは至近距離からライフルの引き金をひく。
轟音と共に、男が崩れ落ちた。
それを見た勇者たちの間に、動揺が走る。
「何だ! 呪文もなしに魔術だと?」
「貴様一体何者だ? まさか、お前自身が魔王なのか?」
「んなわけねぇだろ。俺の名はオーバーロードよ」
しかし、多分勇者たちは聞いていないだろう。口々に魔王がどうのと言ってやがる。
オーバーロードとしては、早々と先に進みたかった。何せ、マルガレッタの御姫さんを目的地に届けなくてはならない。
しかし、四人の勇者はオーバーロードを通すつもりはないらしい。
ガブリエルが言った。ちなみにオーバーロードは、四人の中でガブリエルしか覚えていない。だから、他は勇者1から勇者3の認識だ。
「魔術に心得があるならば、我らの魔術もとくと見よ!」
ガブリエルがオーバーロードに向けて、手をかざす。
「火を司るゾロスの神よ。我が宿敵を焼き尽くせ!フレイボム!」
巨大な火の玉が作られ、オーバーロードに向かって飛んでくる。火球はオーバーロードに直撃すると、大きく膨れ上がって爆発した。
衝撃でマルガレッタは吹き飛ばされ、床の上で揉んどりうった。
「オーバーロードさん!?」
フレイボムは火系魔術の中でも、威力の高い攻撃魔術だ。これを食らって生きている人間はいない。
しかし、
「あちゃちゃちゃちゃちゃ!!水くれ!水!」
身体中に火の衣を纏いながら、オーバーロードが走り回っている。火球は消えたが、その中でオーバーロードが焼き尽くされることはなかった。
水を探し求めて走り回っていたオーバーロードだが、ないのがわかると床を転がって火を消す。
「あちぃよ! 今日二回目だぜ? なんか俺に恨みでもあんのか?」
何か言おうとしているガブリエルたちだったが、オーバーロードにそれを聞くきはなかった。話は長いだろうし、何より仕返ししなければ、気が済まない。
「うるせぇ!黙れ! そんでもって、お前らが跡形もなく吹き飛べ!」
ナビゲーションが告げる。
『ミサイルランチャー用意。フルオープン』
「御姫さん、頭隠しときな」
肩に現れる四連装のミサイルランチャー。左右両方で、合計八連装。
「泣き叫ぶがいい!」
ミサイルが次々と発射される。まず目の前の四人を吹き飛ばし、次に城の壁、更に外の兵士たちをも吹き飛ばす。
突然降り注いだミサイルの雨は、敵を恐慌状態に陥れる。
しばらく続いたミサイル攻撃のあと、オーバーロードはマルガレッタの手を引いた。
「退路を確認した。脱出するぞ」