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第八話 俺はロリハリボディが好きなんだ!

「役務提供?」

 セインとの会見で俺が提案したのは、人的資源、つまりは役務提供についてだった。物が不足しているハイディグレードは、しかし人だけは沢山いる。そしてその一人一人が優れた能力を有している。だからこそ『人』が価値を持つ。

 物ではなく労働力として、サービスとして対価を提供できるのなら、それはかなりの価値になるのではないだろうか。

「ああ。ハイディ族は個人の能力がかなり優れていると俺は思う。狩猟民族としての優位性、戦闘能力の高さ。これらはハイディグレードにとって貴重極まりない財産だ。今ハイディグレードがルディアに提供できるものはこれしかないと思う」

「つまり、我が国の民を奴隷として差し出せと?」

 セインの目つきが一気に険しくなる。今にも俺をぶっ殺しかねないくらいの剣呑さだ。はっきり言って怖い。背筋がぶるりと震え上がる。

「ち、違う違う! そうじゃない!」

 俺は慌てて首と両手を振る。このまま腰の剣を抜かれてはたまらない。

「立場は対等でいいんだ。ルディアは食糧を、そしてハイディグレードは人的資源を交換する。これは奴隷取引じゃなくて相互契約なんだ。お互いがお互いの利益を得られるシステムなんだ」

「具体的には何をさせようと思うておる?」

「そ、そうだなあ。例えばハイディ族の生業は戦闘だろう? だったらルディアに人を貸し出して国境警備とかに手を貸してやるっていうのはどうだろう?」

「却下じゃ」

「早いよ! ちょっとは考えようよ!」

 即断即決に泣きたくなる俺。こっちは必死で考えて言っているんだからセインの方も少しくらいは考慮して欲しい。

「考えるまでもないじゃろう。そんな事をすれば我が国の民がルディアの危険をほとんど引き受けることになるのじゃぞ。我が国の民が命を落としている中、ルディアだけは後方に構えて安全を確保できるのじゃ。それは食糧を引き替えにルディアの盾になれということじゃ。了承できるわけがなかろう」

「むむ。言われてみれば確かに」

 戦闘代理人ということはそういうことだ。ハイディ族の命を盾にルディアは安穏とした平和を手に入れる。 いくら食糧提供で多くの命が助かるといっても、さすがにこれでは割に合わないだろう。

「しかし儂らが払える対価は人的資源しかないというのも悔しいが事実じゃ。その方向性で行くことに異論はない。ただし戦闘代理だけは断る」

「分かった。それは仕方がない」

 派遣社員のような感じになればいいのにと気安く考えすぎていた。人の命が掛かっているのだからそう簡単にいくわけがないのだ。

 いくら利益のために個人的感情を無視しろといっても、それはあくまで過去の因縁についてである。現在進行形で蓄積していく負の感情に対してはどうにもならない。無理に締結させたとしてもいつかは爆発するのが目に見えている。

「面白い意見ではあった。それと土壌改良の件も試してみる価値はある。さすがに土地そのものを使ってはまだ出来ぬが、もっと小規模な実験を経てから考慮してみるとしよう」

「実験?」

 土壌改良の件を受け入れてくれたのは嬉しいのだが、しかし実験とは一体何をしているのだろう。

「いや、大したことではないのじゃ。儂らは大規模に種を消費できるほど余裕はないからのう。山中に生えている無用の草などで育ち方の違いを実験しておるのじゃ、ほれ」

 そう言ってセインは窓際にある二つの植木鉢を指さした。

 一つはそのままの土、そしてもう一つは俺が言った改良を加えた土なのだろう。

「ほんの数日じゃが変化は劇的じゃな。お主が教えてくれた通りにした方はたった二日で芽を出したぞ」

「本当に劇的だな……」

 二つの植木鉢を見た俺は驚く。自分で提案した事とはいえ、ここまでの差があったとは。

 そのままの土の方は未だに芽が出ていないが、改良土の方は既に五センチほどに芽が伸びている。差は明らかだった。

「もちろん手間は掛かる。これを土地規模でやるとなるとかなり大がかりになるじゃろう。それにこの改良が作物にも同じように作用するとは限らぬからもう少し実験が必要じゃ。しかし変化があることだけは分かった。これは大きな収穫であり、希望じゃ」

 そう話すセインの表情は明るい。新しい玩具を見つけた子供のようにその瞳が輝いている。この先この土壌改良がどれだけの成果を上げていくのが楽しみでたまらないのだろう。

「いやあ。役に立てたようで何よりだよ」

 俺の素人知識が国の希望になるというのは、何だか複雑だけどやはり嬉しくもある。この世界の知識ではないのだから、ちょっとしたことで劇的な変化が起こることはある程度予測できていたとはいえ、こうやってそれを目の当たりにするとある種の達成感に満たされていく。

「うむ。この分野についてタローが専門知識を有しているわけではないことは儂にも分かる。専門というにはあまりに稚拙であやふやで結果が見えない頼りなさだからのう」

「うあ。すんません!」

 確かに素人知識の適当で言っちゃったけど! でもそれを突っ込まれるのはちょっと痛いぞ!

「いやいや謝ることはないぞ。少なくとも素晴らしいきっかけにはなっておる。始めから完成された方法ではなく、これから試行錯誤して突き詰めていく方が儂の性には合っておる。これはこれで楽しい」

「………………」

 本当に楽しんでいるのだろう。セインの表情は子供そのものだ。これから何が起こるのか、これからどう変化していくのか、それが楽しみでたまらないのだろう。

 そんなセインの様子がたまらなく可愛く思えてくるのだから、俺もまた色々とヤバい。何がヤバいって俺の信念がヤバい。

 俺はロリコンなんだ。ロリハリボディが大好きなんだ! 間違ってもセインのようなぼいんぼいんに欲情したりはしないんだ! むしろたふんたふんだけど!

 いやそんな事はどうでもいい! 問題はセインの中身なんだ。セインの物言いこそは老人くさくて何だかアレなのだが、しかしその性格はひどく子供っぽい。すぐに怒るし拗ねるし、そうかと思えば喜んだりはしゃいだりする。感情表現が豊かで単純で、それこそ素直な子供に見えてしまうのだ。

 つまり、俺のロリ萌え魂が著しく刺激されてしまうのだ!

 俺が萌えるのはボディであって中身ではないはずなのに!

 いや、中身に萌えないとは言わないが、それでも敢えてどちらかを選べと言われたらやはりぺったん胸のロリハリボディ一択だ!

 だからセインにドキドキしたり、ましてや欲情したりなんてしてはいけないのに!

「ありがとうと言わせて欲しい。タローがこの国に来てくれたお陰で儂は今とても楽しい」

「あう……」

 無邪気な笑顔を向けてくるのはやめて欲しい。喜んでもらえるのは嬉しいけど今の葛藤まみれな俺にその笑顔は猛毒なのだ。

 そんな感じでセインとの会見は終了した。

 俺は改めて自分に言い聞かせる。

 俺はロリコン俺はロリコン俺はロリコンなんだってば!

 ロリぺったんが大好きであってぼいんぼいんは守備範囲外なんだぁぁぁぁぁ!!

 …………何だか酷く間違った方向の悩みを抱えてしまっている気がする異世界の夜だった。


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