第75話『俺、変な動きで強くなる』
「才能を奪って、成り上がる!」
無職で底辺だった俺が、美少女ヒロイン達とともに現代社会を攻略していく物語、ぜひ覗いてみてください。
ちょっと空き時間に、俺の成り上がりハーレム物語をどうぞ!
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──バチン、と。
倉庫の空気が、ほんの少し、張り詰めた。
潤が一歩、前に出た。
「……おい潤様よォ、逃げ道はねぇぞ?」
ヤクザのひとりがニヤリと笑いながら、鉄パイプを肩で転がす。
だが──
「うるせぇええええええええッ!!」ビタァン!!
──奇声とともに潤が床に手をつき、両足を跳ね上げた!
逆立ち!?
いや、違う──
膝がクネって、腰が横回転!?
「おい……何だその動き……!」
「え、ちょ、こいつ、気でもふれたか?」
「キッモ!!!」
全員が引いた。
いや、そりゃそうだろ。
カマキリが水中で溺れたような動きで突っ込んでくるヤツなんて、誰も想像できねぇ!
「ウオラァ!!」ヌルッ!!
潤の身体がぐにゃりと横に折れたと思ったら──
「うぶぇっ!?」
一人、顎に膝蹴りを食らって昇天。
「うおおおおッ! どっから!? どの角度から来た!?」
「わかんねぇよ!! あいつ人間じゃねぇぞあの動き!!」
「目が……目が酔う……!!」
俺は震える唇で呟く。
「おい……何なんだよ、こいつ……」
横で、リョウヤの笑顔が引きついてた。
「えっ……ねぇ、何あれ。あんなのノアちゃん言ってなかったんだけど……!?」
いや、俺も知らねぇよ。
何だよあの“蟹ダッシュ”みたいな横移動──!!
「やっべ……なにあれ……気持ち悪ッ!!」
「けど……避けれねぇんだよ……あれ……!」
あまりにもキモくて、誰も正面から突っ込めない。
攻撃タイミングが読めない。
強い──けど、強さ以前に、まず意味不明。
「おいおいおい……何者だよお前……」
潤が言う。
「俺? ただの、社長だけど?」
ヤクザ一同、ツッコミ。
「ウソだろ会社つぶす気かよ!!」
「どうなってんだその業界!!」
リョウヤが一歩後退し、顔が引きつっていた。
「いや、ちょっと待って……やばくない? あいつ、マジでやばくない……?」
その時だった。
潤がふたたび、床に両手をついた。
「うおっ! また来るぞ! 来るぞぉおおお!!」
「おおおぉぉらああアアアァァアッ!!」ヌルヌル!!
床を這うようなローリング。
ケツから突っ込んで、そのまま回転肘打ち──
ヤクザの一人が背中を砕かれて沈む。
「お、お頭ァッ! やばいっす! あいつ──」
「ちょっとどこ向いてくるかわかんねぇんだよ!」
潤の動きは、もはや格闘技でも武術でもない。
見ようによっては──虫。
ゴキブリが油の上で滑ってるような、ある種の生命体的な本能ムーブ。
「このッ! このぉッ!!」
ズダァン!!
裏拳っぽいモーションから繰り出されたのは……回し蹴り。
まさかの正統派!!
「うわ、やっぱちゃんと強ェぞコイツ!!」
また一人、地面に崩れる。
これで5人目。
──だが、明らかに潤の肩が上下していた。
「……っは、っは、っは……」
疲れてる。
呼吸が浅く、動きが一瞬、鈍った。
「おい、今だ! いけぇッ!!」
俺の号令で、残ったヤツらが一斉に囲む。
──潤が、無理やり構え直した。
変な構えだ。腰が引けてて、右足だけクイクイ跳ねてる。
「う……ぉおぉ……アチョ……アチョチョ……」
掛け声すら迷子になってる。
「なんか動きのキレが……」
「さっきよりキモさが増してるだけで、スピード落ちてね?」
「キモさは上がってるのに、強さが下がってるって何だよ!!」
一人が飛びかかる。潤がスウェーでかわす──が、完全に避けきれず肩をかすめられる。
「っ……!」
ふらついた。
完全にペースが落ちてる。
さっきまでの“未知の恐怖”が、“ただのキモい奴”に戻りかけてる。
「囲め! 今度はマジでいけるぞ!!」
ざっ……ざっ……と靴音。
6人が囲む。潤、息が上がる。
リョウヤが後方から叫んだ。
「どうした潤様ァ! さっきの元気はどこいったァ!?」
潤が、肩で息をしながら睨み返す。
だが──その足は、もう前には出せない。
「へっ、調子こきすぎたな」
「いくら強かろうが、体力まではついてこねぇか」
そう、これが限界。
このまま潰される──誰もがそう思った、その時。
──ドスン。
場の空気が変わった。
「……ん?」
鉄の扉が、外から叩き割られる。
「失礼するで?」
響く、甘ったるい声と、関西弁──
──ドガァァァァン!!
倉庫の裏口が爆音を立ててぶっ壊れる。
鉄製のシャッターが、ベコォッと外にめくれ上がった。
「な、なんや……!?」
ヤクザたちが振り向く。
粉塵の中から、ハイヒールの音が響いた。
「んふふ~……ようやく着いたわぁ。うちのご主人様、どこやろ?」
スーツ。ピンクのヒール。髪を巻いて、ニッコリ笑顔。
“関西弁元気秘書”──カエデ、爆誕。
「……おい、誰だあの女」
「知らねぇ……けど、なんか後ろに連れてるぞ……?」
ギギ……と金属音。
カエデの後ろ、静かに現れた影たち──
スキンヘッドでグラサンの男。
軍隊式の迷彩服を着た女。
元暴走族みたいな派手な兄ちゃん。
明らかに現役じゃねーだろって感じの、筋肉マシマシ喫茶マスター。
全員、潤の会社の“セキュリティ部門”。
「自己紹介はまた今度にするけどな」
カエデがスッと一歩前に出た。
「こっからは──ウチらの仕事や」
一瞬、空気が凍った。
次の瞬間──
「潤くんに、手ぇ出したなぁああああああああああああああッ!!!」
カエデが奇声とともに跳躍!!
「うわ!? 飛んできたァ!?!?」
「って、バール!? 女がバール振り回してきたァァァ!!」
──ガッ!!
ヤクザの一人が、胴にバールフルスイングを喰らって吹き飛ぶ!!
「やっぱ怒らせるとヤベェって言っただろぉおおおお!!」
「うわ、なんか後ろの奴らも来たぁぁ!!」
カエデの背後にいた社員たちが一斉に突撃。
バイクで突入、電動盾構えた奴、鉄パイプに火炎放射器(なんで!?)──
「俺ァ正社員やけど、週5で地下闘技場出てんねん!!」
「こちとら元公安! 殴るより拘束する方が得意だぞコラ!」
「この会社、福利厚生に“殴っていいやつ”含まれてんのか!?」
ヤクザたちが次々に吹っ飛ぶ。
もはや戦場。
いや違う──修羅場。
そして、カエデが潤の前に立つ。
「潤くん……ウチに黙って、こんなんなって……」
泣きそうな目で、潤の額に手を当てた。
「もう大丈夫や。ウチが来たで」
潤が、疲れた声で言う。
「……助かった。めっちゃ助かったけど……なんか会社が戦闘民族だったんだけど……」
カエデがニコリと笑う。
「せやろ? これが……“うちらの社風”や♪」
【あとがき小話:男だって魔法少女(仮)】
作者『なぁ潤……』
潤『どうせろくでもないからやめとけ。前置きの声色で分かるんだよ』
作者『いやさぁ、前回ヒロインズが魔法少女やったじゃん?
もしかしたら……俺らバージョンも見たい人いるかもな~って……』
潤『いねぇよ。ゼロだよ。“そんなの見たくなかったランキング”第1位だよ』
作者『でも考えてみ?俺が──魔法少女ブラックオーサー。
闇の筆からストーリーを紡ぎ出す闇のプリズム!!』
潤『なにその中二病爆発させたエセ詩人みたいな名乗り。あと黒ってなに?背徳の象徴か?』
作者『潤は──魔法少女ダークグリーン・ジュン!!!
迷いと戸惑いのツッコミビームで現実を正す“秩序の監視者”!!!』
潤『勝手に俺の属性決めんな!!!なんで俺だけ設定重いんだよ!!
そもそも“魔法少女”って言ってんのに中身おっさん×2なのどんな地獄!?』
──ドアが開く──
ミリー『じゅんくん、変身するならミリーが衣装作るね~♪』
ユズハ『衣装は……えっとぉ、前貼りタイプでもいいですかぁ?(にこぉ)』
リア『着用義務より前に、申請と許可が必要かと』
潤『……助けてくれ読者……作者の妄想が現実化し始めてる……』
作者:pyoco(男にも魔法はある。主に黒歴史という名で)