第72話『俺、メディア戦争をする』
「才能を奪って、成り上がる!」
無職で底辺だった俺が、美少女ヒロイン達とともに現代社会を攻略していく物語、ぜひ覗いてみてください。
ちょっと空き時間に、俺の成り上がりハーレム物語をどうぞ!
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「正面からやるって、マジで言ってんのか?」
ゲンジの声には、呆れと……少しの興味が混じっていた。
「たしかに、出力だけならこっちも負けちゃいねぇよ。
うちの系列も、地上波含めて放送網は3分の1。
向こうも3分の1。あとの3分の1はどっちにもつかない中立枠だ」
ゲンジは淡々と説明を続ける。
「でもな……資金力とスタミナが段違いなんだよ」
「……スタミナ?」
「向こうには、連合って盾がある。
企業スポンサーも、政治も、芸能界の利権も全部抱えてる。
たとえ嘘を一つ潰されても、代わりの嘘を十個流せる。
こっちが映像を一本出す間に、あいつらは編集部を三つ動かせる」
「報道合戦なんてやったら、消耗戦になる。
それが意味するのは──情報を消費するだけの時間稼ぎ」
俺は息を呑んだ。
「……しかも、そんな殴り合いやってたら、視聴者は混乱しますよね」
ゲンジは頷く。
「そう。どっちが正しいかなんて、どうでもよくなる。
信じたい方を信じるか、あるいはどうでもいいで切られる。
その結果、なにが起きるか……」
「……潰れるのは、どっちかだ」
「しかも、高確率で騒ぎを起こした側が悪者扱いになる。
今、世論が割れてるってことはな……落ちる準備ができてるってことだ」
ゲンジの目が鋭くなる。
「それでも、やるってんなら、お前……ノアがこのまま潰されても、責任取れんのか?」
その言葉が、胸に突き刺さる。
逃げ道を探していたわけじゃない。
でも、改めて突きつけられると、息が詰まる。
……正直、怖い。
間違ったら、ノアはもっと深く傷つく。
もしかしたら、潰れるのは俺たちじゃなく、彼女だけかもしれない。
けど、それでも。
(俺は、正義のために戦ってるんじゃない。
誰が見ても納得する真実のためでもない。
俺が守りたいのは、あのとき、あの涙を流したノアだからだ)
「……やります。俺が責任、取ります」
小さな声だった。
情けないぐらい震えてた。
でも、俺の中では、確かに決まっていた。
ゲンジはしばらく黙って、俺の顔をじっと見ていた。
そして、ふっと口の端を上げた。
「……マジか。お前、根っこの部分だけ、ほんとに狂ってるな」
「それ、褒めてます?」
「バカにしてんだよ。でも……嫌いじゃねぇよ、そういうヤツ」
ゲンジが振り返り、部屋の奥へと歩き出す。
「いいぜ。面白ぇじゃねぇか、その正面突破ごっこ。
どうせやるなら、徹底的にやれ。
俺たちが持ってる牙、全部使っていい。
ただし――」
「勝てる仕掛けを作ってから、引き金引け」
俺は頷いた。
勝てる仕掛け。
その言葉が、頭の中で何度も反響する。
(正義で勝てないなら、勝ちに正義の皮を被せるしかない)
(だったら俺は、相手の武器を逆に利用して、
報道で潰し返してやる)
この瞬間から、俺の報道戦が始まった。
翌日。
俺はゲンジ…帝国側の映像制作チームに滑り込み、
例の映像──ノアとリョウヤのホテル前のやつ──を手に入れた。
ゲンジが言ってた。「どうせ使うなら、加工済みじゃなくて、元映像持ってけ」って。
PCにデータを取り込み、ヘッドホンを装着。
映像編集ソフトを立ち上げる。
脳内に、《編集技術(Lv5)》がじわりと起動する感覚。
俺の思考に、処理の最適化ルートが組み上がっていくのがわかる。
「音声ノイズ……除去。
光源強調。顔認識フレーム再構成……時間軸、表情追従補正っと」
サムネイルが並ぶタイムラインの中、
一つ、光るフレームがあった。
リョウヤがノアに顔を近づけたその瞬間──
ノアの首が、かすかに横に振れていた。
「……これ、キス未遂じゃなくて、拒否だろ」
さらに前後のフレームを拡張し、不要部分を削除。
ボソッと聞こえた、リョウヤの声が強調される。
『これはバズるな』──下卑た笑いが背筋に刺さる。
続いて、ノアのか細い「やめてください」という音声も。
彼女は嫌がっていた──それを見せるだけで、構図は反転する。
ナレーションはつけない。
テロップも最低限。
でも、観た人間には疑問が必ず浮かぶよう、配置を整えた。
報道っぽく見せる。それだけで、映像は事実に化ける。
⸻
投稿は匿名アカウントから行った。
アイコンも過去の投稿履歴も、元映像編集者っぽく偽装。
そしてタイトルは──
『週刊トップビジョン報道、ねつ造疑惑。
元映像スタッフが暴露「これ、演出されてます」』
アップロードの1時間前、俺はスキルを発動した。
《悪意誘導(Lv8)》──
対象は:
・報道ジャンルのトレンドユーザー
・まとめ垢、炎上考察系アカウント
・拡散アルゴリズムを活用するバズBOT群
狙うのは一つ。
視聴者の怒りを、報道そのものにぶつけさせる。
俺の存在なんて見せなくていい。
誰が仕掛けたかも、どうでもいい。
空気だけ変われば、それでいい。
⸻
数時間後、X(旧Twitter)は、もはや火の海だった。
「ノアちゃん……売名だったって言ってた奴、息してる?」
「これ、完全にやらされてるじゃん。編集えげつな」
「番組潰せ。潰せ潰せ潰せ」
「ノアちゃんの泣き顔で酒飲めるくらい心が痛い(涙)」
ハッシュタグ【#ノアちゃんに謝れ】が日本トレンド1位。
動画は10万リポストを超え、半日で3000万再生。
SNSの反応が、確かに報道側へ向けて回っていた。
⸻
夜。帝国の会議室。
大型モニターに、火を噴くようなSNSの画面が映し出される。
ゲンジは腹を抱えて笑っていた。
「……っははは! やべぇ、マジで空気ひっくり返ったわ!
編集も演出も、報道っぽさギリギリで止めやがって!
しかも、本人の口じゃなくて、世論に喋らせた? お前、鬼か?」
俺は視線を外しながら、ぼそっと言う。
「……フェアじゃないですけどね」
「お前の彼女が泣いてる理由、忘れてないか?」
その問いに、俺は静かに首を振った。
「忘れてません。だからこそです。
正義で勝てないなら、勝ちに正義の皮を被せてやる。
……見た目だけでも、正しそうに見えるように、加工してやりますよ」
ゲンジの笑いが止まり、ひと呼吸の間。
「潤……お前、こえぇな。
偽物の正義を、味方につけるタイプかよ」
* * *
夜のニュース。
「週刊トップビジョンの報道に、ねつ造疑惑が──」
伏し目がちのキャスターが、淡々と読み上げる。
どこかのオフィスで、リョウヤが歯を食いしばっていた。
そしてその頃、ノアは──
事務所の控室で、黙ってテレビを見つめていた。
その瞳に、涙はない。
ただ、小さく呟く。
「潤様……」
その声には、静かな――誇りが、宿っていた。
【あとがき小話:猫吸いは合法ですか?】
作者『猫吸いって……合法ですか?』
潤『いきなり何言ってんだお前』
作者『いや、最近さ……近所にめちゃくちゃ可愛い黒猫がいて……
毎朝出会うたびにね?こう、鼻先近づけて……すぅ……って……吸いたくて……』
潤『言い方やめろ。人としての尊厳がギリギリだぞ』
作者『いやほんと……あれ犯罪じゃないなら、もう合法の極みじゃない?
あの背中の丸み……つや……ふわふわ……すぅぅぅぅぅ……』
潤『猫に迷惑かけるな!!!あと語尾が完全に“吸い済み”の音なのよ!!』
──その時──
ユズハ『……作者さん?』
作者『ひっ……!?ち、ちがうちがうっ!!ユズハを吸いたいとかじゃなくて!!
俺が吸いたいのは……猫!!あくまで猫!!!四足歩行の概念としての猫!!
柔らかくて耳がぴょこんってしてて、しっぽがふわふわの──』
潤『いやそれ、完全に今“人の姿で猫っぽい子”が後ろに立ってるぞ!?』
ユズハ『……なるほど。ふふっ……じゃあ、
耳もつけてあげましょうか?しっぽも、付けます?吸いやすく……ねぇ?』
作者『ちがうちがうちがう!!!猫なの!!!俺は猫しか愛してないのおぉぉぉ!!!』
作者:pyoco(猫吸いは文化。誤解は地獄……そして作者猫アレルギー)