第62話『俺、挙式する』
「才能を奪って、成り上がる!」
無職で底辺だった俺が、美少女ヒロイン達とともに現代社会を攻略していく物語、ぜひ覗いてみてください。
ちょっと空き時間に、俺の成り上がりハーレム物語をどうぞ!
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ゴールデンウィーク最後の相手は――ノアだった。
思えば、すべては彼女との出会いから始まった。
もし、あの公園で、偶然ノアが後ろの席に座っていなければ。
もし、あの日、見ず知らずの俺にあの悩みを打ち明けなければ――
もしかしたら、俺は“才能奪取”を、別の使い方をしていたかもしれない。
それこそ、誰かを蹴落とす側に。
だからこそ今日は――ただの休日じゃない。
きちんと伝えようと、決めていた。
「ありがとう」って。
『潤様〜っ!』
俺の思考を断ち切るように、ノアが駆け寄ってきた。
相変わらずの変装。大きなサングラスに帽子、ゆるめの服。
彼女は、売れっ子の人気女優だ。
普通なら、こうして街中を歩ける立場じゃない。
それなのに――俺といる時だけは、こんなふうに自然体で笑ってくれる。
……うん、やっぱり今日はちゃんと感謝を伝えなきゃな。
『お待たせしてしまいましたか?』
『いや、待ってないよ。で、今日はどこに行くんだ?』
『それは……着いてからのお楽しみ、です』
──到着したのは、都内屈指の高級挙式場だった。
『え? ここ?』
『はい。挙式体験イベントがあったので、少し前から準備して……なんとか予約が取れました』
ノアは嬉しそうに胸を張っていた。
いやいや待て、ここ、たしか参加費が高いことで有名なところじゃなかったか?
『俺……こんなところに払えるほど貯金ないぞ?』
『安心してください♪ 潤様のお給料と、私のお給料から、ちゃんと共同貯金をしてありますので』
『えっ……?』
え? 共同?
サラッと爆弾投下してきたけど、今それ流すの? 流されたの?
『さあ、入りましょう』
いや、誤魔化すの早すぎだろ!?
……でも今日はツッコむ気が失せるくらい、ノアの表情が嬉しそうだったから。
全部、飲み込むことにした。
* * *
中に入ると、さすが高級式場というだけあって雰囲気が桁違いだった。
一流のスタッフたちが、無駄のない動きで俺たちを案内していく。
『それでは、新婦様のノア様はこちらへ。新郎様は別室でお支度を』
『はい、潤様。また後ほど』
ノアが優雅にスタッフへついていくのを見送り、俺はスーツ選びの部屋に通された。
案内されたのは、ズラリと並ぶタキシードの展示。
スタイリストが何着かおすすめを持ってきて、俺に似合う一着を探していく。
普段なら、服なんてどうでもいいタイプの俺だけど――
この空間、この空気、この場の意味。
さすがに背筋が伸びる。
ようやくスーツが決まり、あとは着替えて式場へ――と思った矢先、慌てた様子のスタッフが別室から駆け込んできた。
何やら小声で会話。
『申し訳ございません、新郎様。こちらの手違いで、先ほどのスーツは別の方のものでした。急ぎ、正しい衣装をお持ちいたします』
『あ、うん……わかった』
そして数分後。
持ち込まれたのは、最初に入った時、ガラスケースの中に飾られていた――あれだ。
明らかに“展示用”だった、超高級タキシード。
『いやいや、ちょっと待て!? これ、飾ってあったやつだよな? 冗談だろ?』
『いえ、あれこそがこの会場で最も格式のある一点もの。潤様のために、ご用意させていただきました』
『え、いや、ちょ、待って、値段とかヤバくないか?』
『ははっ、価格で言えば……この会場そのものと同等でしょうか』
さらっと言うなよ!?
いやいやいや、待ってくれ!? 何桁だ!?
しかし、周囲のスタッフが全員「当然」という顔で頷いているのを見ると、逆に引けなくなる。
もう、ここまで来たら腹を括るしかない。
――着てみると。
鏡の中に映った自分を、思わず見つめてしまった。
……めっちゃカッコいい。
たかがスーツ。されどスーツ。
これは、まるで役者か騎士みたいだった。
『準備が整いましたら、式場へお進みくださいませ』
心なしか、スタッフの口調も敬語の重みが増していた。
足が勝手にぎこちなく動く。
緊張で、出した方の足と手が同時になるという、典型的なやつ。
『深呼吸……深呼吸……』
式場の扉が開き――
流れ出す、生演奏のセレモニーミュージック。
荘厳で、美しくて――
そしてその扉の向こうに、ノアが現れた。
『……綺麗だ』
本当に、無意識だった。
言葉が、息と一緒に漏れ出ていた。
ノアは普段から整った顔立ちで、非の打ち所もない美人だ。
けれど今は、それを超えていた。
純白のドレスに身を包み、花を抱き、静かに微笑むその姿は、まるで――
天使。
いや、俺の語彙では足りない。
どんな言葉を使っても、この瞬間の彼女を正確に表現できる自信がなかった。
歩いてきたノアが、そっと俺の腕を取る。
その動きさえ、完璧だった。
『潤様、緊張なさらずとも大丈夫ですよ。これはあくまで“体験”なのですから』
『き、緊張なんか……してないしぃ』
舌、噛みそうになった。噛まなかったけど。
『ふふっ、そうですね。こういうのに慣れていたら困ります』
『……だな』
普段の会話と変わらないはずなのに、不思議と胸が締めつけられる。
俺たちはゆっくりとバージンロードを歩き、神父の前へ。
『おふたりは、どんな困難も乗り越え、互いを唯一無二の伴侶として愛し、支え合うことを誓いますか?』
『……はい。潤様と共に歩みます』
ノアの答えは、凛として、真っ直ぐだった。
『新郎は、誓いますか?』
『……ノアを、この先も大切にします』
そうして、場の空気が一瞬だけ、止まった気がした。
『それでは――誓いのキスを』
(え?)
いや、あるよな。そりゃあるよな。体験といっても“挙式”だし。
けど……ノアと……キ、キスって……
(いやいやいや待て!? 本気で!?)
正直、ノアは綺麗だ。むしろ理想だ。キスできるなら嬉しい。
でも、これは“体験”だ。
体験で本気になるなよ俺……!
俺がグルグル悩んでる間に、ノアは目を閉じて、顔を寄せてきた。
(おい……その顔すんな……! そしたらもう……)
――もうちょっとで唇が触れる、というその瞬間。
『今回は体験ですので、キスの代わりに進行いたします』
スタッフの声が、式場に響き渡った。
(……セーフ! いや、アウト!?)
『潤様……もしかして、ほんとうに……キス、してくれようと……?』
『は、はぁ!? いや、体験だからな!? 決してその、深い意味は――』
言い訳をしてる時点でもうダメな気がした。
* * *
式の最後は、誓約書へのサイン。
もちろん、体験用のサンプルだ。
ノアが名前を書き込み、俺の番になる。
と、内容を確認してみると――
・LINEは10分以内に返すこと
・他の女性を視界に入れないこと
・外出時はGPS端末を所持すること
・就寝時は必ず手を繋ぐこと
・キスは朝・昼・晩の三回
・電話は2コール以内で出ること
・浮気未遂でも罰金制度あり
・目を合わせなかった日は説教タイム発動
『重すぎるわ!!!』
俺は叫んでた。心の中じゃなく、声に出して。
『え? これって、誓約っていうか……奴隷契約?』
ノアは穏やかに笑う。
『うふふっ。潤様と私が一緒に生きるなら、これくらいがちょうどいいかと』
どこがだ。
『自由とは……? 憲法とは……?』
『安心してください。潤様が他の女性に浮つかない限りは、すべて楽しい日常ですから♪』
……浮つかない限りね。
この時点で、未来の俺は確信した。
たぶん、一歩でも踏み外したら、
――本気で、制裁される。
式が終わり、控え室へ戻る。
肩の力が抜けたというより、魂が抜けかけていた。
『潤様?』
ノアが、そっと隣に座る。
挙式用のドレスを着たままで、さっきまでの幻想のような時間が、まだ続いているかのようだった。
『今日は……本当に、ありがとうございました』
ノアは、深く頭を下げた。
『いや、お礼言うのは俺の方だよ。あの時、ノアが声をかけてくれなかったら――俺、きっと違う道に進んでた』
それは心からの言葉だった。
俺の“奪う力”は危ういものだ。
自分が正義だと勘違いすれば、人を壊す側になっていたかもしれない。
けど――ノアがいてくれた。
ずっと、側にいてくれた。
『ノア』
『はい』
『ありがとう』
その言葉を聞いた瞬間。
ノアの頬が、ふっと赤くなった。
目元が少しだけ揺れて、ゆっくりと、微笑みに戻る。
『ふふ……潤様にそう言っていただけるなら、どんな労力も、どんな犠牲も、全て報われます』
なんかまたとんでもないこと言ってるけど――
その笑顔が、全部包んでしまう。
『あの、潤様……』
『ん?』
『本当の挙式も……いつか、してくださいますか?』
目を逸らすようにして言ったその言葉は、
さっきの小悪魔たちの仕掛けとは違う。
本当に、本当に真剣な――“本音”だった。
『……どうかな』
『えっ……』
ノアの表情が、一瞬だけ曇った。
『でもまあ、もし本当に“その時”が来たら――』
俺は軽く笑いながら、指を一本立てる。
『誓約書の内容だけは、交渉させてくれ。頼む』
ノアは、ぽかんとした後、ふふっと笑って頷いた。
『……その時は、ちゃんと話し合いましょうね。潤様』
──挙式体験。
それは“もしも”の未来の、ほんの断片だったのかもしれない。
けど――
たぶん俺の中では、もうその断片が、しっかりとした輪郭を持って浮かび始めていた。
この先、何があっても。
誰よりも俺のことを見て、誰よりもそばで支えてくれる、この人と――
一緒に、歩いていける気がした。
【あとがき小話】
作者『いや~特別回ありがとね!えー最後に一言だけ……
“誰か薄い本とか描いてくれてもいいんですよ?”(小声)』
潤『お前、また言ったな……!?』
──その夜──
ユズハ『作者さん?』
作者『うぇ!?な、なんですかユズハさん!?笑顔が刺さってるんですけど!?』
リア『記録確認済み。“薄い本、誰か描いてくれても”──と。証拠は十分です』
ノア『……“私のどの部分を、描いていただきたかったのですか?”』
カエデ『ちなみに“どこまで”の内容想定やったん?』
エンリ『ふふ……まさか“服装の詳細や状況設定”まで脳内で……?』
ミリー『もしかして……ミリーのこと、すっごくえっちな目で見てた~?』
作者『いや違う!違うの!!そこまで言ってないの!!!
ただ“薄い本”って言っただけで!!“何が”とか“どこまで”とか一言も──』
ユズハ『ふ~ん、“そこまで”は言ってないけど、
“想像には任せるスタイル”だったんですねぇ~?』
リア『“他人に想像を委ねる発言”は、ある意味最も計画的です』
潤『おい!俺は関係ないよな!?なぁ!?俺ガチで無関係だぞ!?』
ノア『潤様、“そういうのもアリだと思う”と以前……』
潤『それは作者が勝手に創作したセリフだぁぁぁぁぁ!!!』
作者『ほんとに!ほんとに違うんです!
“同人活動を支援したいだけ”というやつです!!“表現の自由”を!!』
リア『つまり“供給が欲しい側”だったと……』
カエデ『“描かれるの待ち”なだけやったんやなぁ~?』
エンリ『ふふっ……では、私たちからの“反撃”も、“想像に任せて”構いませんね?』
潤『想像じゃなくて“行動”に出そうな顔してるのやめてくれえええ!!!』
作者:pyoco(もう“ふんわりワード”も使いません……)