第59話『俺、パパ?』
「才能を奪って、成り上がる!」
無職で底辺だった俺が、美少女ヒロイン達とともに現代社会を攻略していく物語、ぜひ覗いてみてください。
ちょっと空き時間に、俺の成り上がりハーレム物語をどうぞ!
感想・評価・ブクマ、ぜんぶめちゃくちゃ励みになります。
書く気力が120%になるので、応援よろしくお願いします!
ブックマーク&評価をいただけると、次の展開の原動力になります!
感想も全部読んでますので、お気軽に一言でも残してくれると喜びます!
.
ゴールデンウィーク二人目の相手は、ミリーだった。
『じゅんくーん! はやくはやくっ!』
待ち合わせ場所に駆け寄ってきたミリーは、今日も元気いっぱい。
手をぶんぶん振りながら、ぴょんぴょん跳ねている。
この子、20歳なのにテンションだけは完全に幼児。
今日も今日とて、俺はその暴れ馬の手綱役だ。
『ほらミリー、走ると危ないって。』
『じゃあ〜っ、じゅんくんと、てーつなぎ!』
ニコッと笑って、俺に手を差し出す。
(……無敵かよ)
観念してミリーの手を取ると、そのまま水族館のエントランスへ向かう。
ミリーはぴょんぴょん跳ねながら、俺にくっついて離れない。
まるで――
(……いや、親子かこれ)
そんなツッコミを胸にしまったまま、二人は水族館へと入場した。
* * *
『じゅんくーん! みてみてー!』
ミリーがガラスに張り付いて、指差す。
その先には……ぷかぷかと漂う、気の抜けた顔の魚。
(……やる気ゼロ、漂流スタイル)
『じゅんくんに、にてる〜!』
うるせぇよ。
『なぁミリー? 俺ってそんなに無気力そうか?』
『えへへ〜、じゅんくん、いつもぽわぽわしてるもん!』
なんだよぽわぽわって。
ミリーは満足げに笑い、また違う水槽へと走っていく。
次に向かったのはクラゲコーナー。
『みて〜! ふよふよ〜っ! じゅんくん、ふよふよしてるよ〜!』
『俺はクラゲじゃねぇ!』
ミリーは嬉しそうに俺の腕にしがみつきながら、水槽の前を回る。
手を引っ張ったり、寄りかかったり、とにかく距離感ゼロ。
(これ……はたから見たらどう見えるんだ……?)
チラッと周りを見ると、何組かの親子連れが俺たちを見てニコニコしている。
(……完全に親子だと思われてるな)
ため息をつく暇もなく、ミリーはまた違う方向へと俺を引っ張っていった。
* * *
カフェスペースで小休憩。
『じゅんくーん、ソフトクリームいっこ買ってきたぁ! はんぶんこしよっ!』
『いや、二つ買えばよかったろ……』
『だって〜、じゅんくんと半分こしたかったんだもん!』
満面の笑みで差し出されるソフトクリーム。
しゃーねぇな、俺はそれを受け取って、一緒に食べ始める。
ミリーは、ソフトクリームにかぶりつきながら、こっちをちらちら見てくる。
『じゅんくんって……パパみたいだねぇ〜』
『は?』
『うふふ〜っ。だって、ミリーのこと、ずっと手ぇ繋いでくれて、危ないとき守ってくれるし〜。』
(それ普通に男友達としてもやるだろ)
『じゅんくん、ミリーのパパ決定だねっ!』
『やだよ! 二十歳の娘がいる設定とか重すぎるわ!』
ミリーはケラケラ笑いながら、また俺にぴったりくっついてくる。
(……完全に親子にしか見えないな、これ)
* * *
タッチプール。
『じゅんくん〜っ! ほらほら〜! ナマコさん〜っ!』
ミリーは興味津々でナマコに指を伸ばしている。
『うにょ〜ってしてる〜! じゅんくんもさわろ〜っ!』
『やだよ……なんかヌメヌメしてそうで……』
『だめーっ! じゅんくんも一緒にふれあいっ!』
ぐいぐい腕を引っ張られ、ナマコタッチを強要される俺。
(……ミリー、テンション高すぎだろ)
けどまあ、楽しそうなミリーを見てると、断れなくなるんだよな。
結局、俺もびくびくしながらナマコを触る羽目になった。
* * *
出口付近のお土産コーナー。
『じゅんくーん! みてみて〜っ!』
ミリーが抱えていたのは、ふわっふわのイルカのぬいぐるみ。
『じゅんくんとおそろいにしたいなぁ〜! これ、買ってもいい?』
『自分で買えよ。』
『だって〜、じゅんくんにおそろいにしてほしいんだもん〜!』
――結局、二人で色違いの小さなイルカを買うことになった。
(……はたから見たら、ほんとに親子にしか見えねぇな)
* * *
一息ついたところで、ミリーがぽつりと言った。
『ねぇじゅんくん?今日、楽しかった?』
『……まぁな。普通に楽しいよ』
『そっかぁ〜よかったぁ〜』
ほっとした顔で笑うミリー。
……なんだよその顔、反則かよ。
『……でもね、ミリーちょっとだけ思ったの』
『ん?』
『もしかして……周りの人から見たら、じゅんくんとミリーって親子に見えてない?』
え?
言われてみれば……あれ?
いや、確かにミリーは小柄で童顔、テンション高い。
俺は……まぁ無気力系で年相応だ。
『あれ……ほんとに……パパ……?』
『いや違うわ!!』
って俺が全力でツッコんだタイミングで、横の席の子どもが、
『ねーママーあのお姉ちゃんとおじちゃん、パパと娘?』
って言った。
ミリー、くすくす笑ってる。
『ほら〜やっぱり〜!じゅんくん、パパ〜♪』
『二十歳の娘がいるわけないだろ!てか、こういう時は彼氏とかでいいだろ!』
『えっ!?』
俺の発言に、ミリーが硬直する。
しまった。
今の、わりとガチトーンだったか?
……やっべ。
『じゅ、じゅんくん……今、それって……』
『いや、ちがっ、まぁ、つまり……その、彼氏“候補”としてはだな……』
『ふふっ』
ミリーが、ふにゃあと微笑んで、俺の手をきゅっと握る。
『じゃあ、じゅんくんはミリーの“パパ”じゃなくて、“だいすきな人”ってことで決定だねっ!』
『……はいはい。』
そんなつもりで言ったのでは無かったけど…
なんか言わされた感じもする…
顔が熱い。絶対、顔真っ赤だこれ。
そのとき、近くを通ったおばちゃん集団が、
『娘さんとデートだなんて、仲良しねぇ〜』
なんて言ってるのが、しっかり耳に入った。
『……俺、そんな老けてる?』
思わずぼそっと漏らすと、
『じゅんくん! おじさーんっ!』
ミリーが無邪気に追い打ちをかけてきた。
『誰がおじさんじゃ!!』
思わず本気のツッコミを入れる。
でもまあ――
こんなふうに笑ってくれるなら。
ちょっとくらいパパ扱いでも、まあ、悪くないかもしれない。
そんなことを思いながら。
俺は、はしゃぐミリーを引き連れて、ゆっくりと歩き出した。
【あとがき小話】
作者『なぁ潤……お前ってさ、ユズハとかノアとか……
毎日ヒロインに囲まれてんじゃん……』
潤『……急にどうした?』
作者『いや、なんかさ……羨ましいなって。
俺なんてユズハに煽られて、ノアには本気で心配されて、カエデには笑われて、
エンリには「無理は禁物です」って普通に看護されてるし……』
潤『いやそれ、お前も囲まれてる側だろ』
作者『でも違うんだよ潤!お前は“物語の中で中心”にいるじゃん!
俺はあとがきでギャグ枠だぞ!?ステージが違う!』
潤『……いや、それはそれでキツいぞ?』
作者『えっ?』
潤『四六時中、好意と嫉妬と干渉が渦巻いてて、
ちょっと間違うと修羅場確定なんだぞ……?
“癒される日常”が“命を削る戦場”になるんだぞ……?』
作者『……そっちにも地獄があるのか……』
潤『あるぞ。たぶん、目に見えない地雷原の上で恋愛してる』
作者『……お互い、立ち位置は違えど業が深いな』
潤『だな……』
(ふたり、黙って虚空を見つめる)
作者:pyoco(あとがきにはあとがきの戦いがある)




