第56話『わたし、モエ』
「才能を奪って、成り上がる!」
無職で底辺だった俺が、美少女ヒロイン達とともに現代社会を攻略していく物語、ぜひ覗いてみてください。
ちょっと空き時間に、俺の成り上がりハーレム物語をどうぞ!
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今から少し先の未来
「マーマー!」
「もえちゃーん!いっぱい遊んだねー!」
「うん!」
「そうか、モエ。モエは大きくなったら、どんな子になるのかなー」
「あなた、もう……気が早すぎるわよ」
「ははは! でもあの時、やっぱり君と一緒にいるって選んだから、今こうして幸せなんだ。本当に」
「もう、あなたったら……」
「マーマー照れてるー!」
「こーら、からかわないの!」
「でも、モエは可愛いからなー。ママみたいに綺麗になるぞー!」
「ふふっ、あなたったら。でもモエちゃんの名前には出会うと誰でも笑顔にしてしまう…
もやしの妖精さんの字が入ってるから、きっと可愛く育つわね」
「いつかあたしも、ママとパパみたいになるー!」
「そうだな……でもパパ、モエちゃんがお嫁に行くの耐えられないよー!」
「あなた、気が早すぎ!」
――あははは。
* * *
時は遡り、現在――。
別れは、唐突に告げられた。
「僕……やっぱり……夢のために引っ越そうと思ってる……」
「えっ……」
私たちは、物心ついた頃からずっと一緒にいた幼馴染だった。
高校に入って、彼からの告白で交際を始めた。
このまま二人で未来へ歩いていくんだと、信じて疑わなかったのに。
高校卒業を控えたある日。
彼は、突然別れを告げてきた。
動揺と、裏切られたという気持ちで、私は感情を抑えられなかった。
「なんで!? ずっと一緒にいてくれるって、言ったじゃない!」
「言ったさ……でも、俺、やっぱり自分のやりたいこと、やってみたいんだ! 挑戦したくて……YouTuber!」
(……YouTuber!?)
なぜよりによってYouTuber?
彼は昔から少しズレていた。
でも、そんな不器用なところに惹かれていたはずなのに。
「大体! いつもいつも、あなたは私の気持ちなんてわかってない!」
本当はこんなこと言いたくなかった。
でも、どうしていいかわからなくて、つい口から出た言葉は、どうでもいい文句だった。
「この前だって、もう少し寝かせて欲しかったのに、無理やり起こして……!」
(違う……こんなことが言いたいわけじゃない……)
私の、悪い癖だ。
「君が映画を観たいって言ってたから! 朝誘ってあげたんだよ!」
「はぁ? 誘ってあげたぁ? なによ偉そうに!
そもそも告白してきたのはそっちじゃない!
仕方なく付き合ってあげただけ!」
(あっ……言っちゃダメだった……)
違う。
私は、本当はずっと、彼のことが好きだった。
告白された時だって、家で飛び跳ねるくらい嬉しかったのに。
「お願いされたから仕方なく? そんなふうに思ってたのか?」
彼の声が、かすかに震えていた。
最悪の空気。
付き合い出して以来、いや、幼馴染の頃からでも、こんなに最悪な空気はなかった。
「ええ……そうよ。お願いされなければ、あんたなんか……」
(違う! 違うのに!)
引き止めたくても、素直になれない。
――ふと、前を見ると。
黒Tシャツに、ピンクの大きな文字。
【I LOVE もやし】
なんだか……変な人が立っていた。
(なにあれ……)
その男を見た瞬間、私は、どうしてか――笑いがこみあげてきた。
(こんなときに、笑いたくないのに……!)
「もういいわ……ぷっ……あん……た……ふふふっ」
「はぁ? なに笑ってんだよ!」
彼も怒ろうとして、でもつられて吹き出していた。
「おれ……く……しん……くく……けん……はっはっはっ」
(なんでこんな状況で笑っちゃうの!?)
でも、止められなかった。
止めたくても、止まらなかった。
「……あんたなんか……ぷくくく……ふ、ふふふっ」
まるで思ってもない事を言ってしまうのを止めるかのように、涙と笑いが一緒に込み上げる。
「僕……やっぱり……君と一緒に──」
(えっ……でも……)
「私は……」
言いたい。
自分から、ちゃんと言いたい。
でも、怖い。
いつも、彼から告白してくれた。
私はただ、待っているだけだった。
勇気が、出ない。
そのとき。
さっきの、もやしTシャツの男が、こちらを向いてガッツポーズをした。
まるで、「頑張れ」と言っているみたいに。
(……そっか)
私は震える声で叫んだ。
「いや! 絶対いや!
そもそもYouTuberなんて、なれるわけないじゃない!
私と一緒にいなさいよ……いてよ……
ずっと、一緒に……」
涙が、あふれた。
初めて、自分から言えた。
「本当は怖かったんだ……。
僕から告白して、君を縛ってしまったんじゃないかって……」
「バカね……。
それなら一生、責任取りなさいよ……」
──ふと前を見ると。
さっきまでそこにいた、もやしTシャツの男の姿はもうなかった。
まるで最初から、いなかったみたいに。
(……ありがとう)
心の中で、小さく呟いた。
ふたりは、そっと手を取り合った。
夜の風は少し冷たかったけど、心はあたたかかった。
【あとがき小話】
潤『……最近、思うんだけどさ』
潤『この作品のヒロインたち、ファンサ良すぎじゃない?』
ミリー『えへへ~っ♪読者さんが楽しんでくれるなら、ミリーいくらでも“ぎゅーっ”ってしちゃうよ~?』
ユズハ『ねぇ先輩? 甘やかされた読者さんが、そのまま“私のファン”になっちゃったら……困りますぅ?』
カエデ『うちはなぁ、読者さんが笑ってくれたらそれで幸せやねん♪
せやから今日も“おかえり”言うてあげるで~?』
エンリ『ふふ……私は、ただそこに“癒し”があれば良いんです。
誰かの夜に、そっと寄り添えたら……それが何よりの贈り物ですから』
ノア『潤様の作品を支える皆様……私、全員にお礼を差し上げたい気持ちでいっぱいです。
ですので、“ブックマークしてくれた方”には、特別に、夜のお祈りを……』
リア『……私は、“読んでくれる方がいる”という、それ自体を尊いと捉えます。
つまり、応えるのは当然です。ファンサではなく、誠意です』
潤『ちょっと待って!?今これ、読者がヒロイン5人から好意一斉砲浴びてない!?
全方位で落としにきてるよね!?』
作者『それが“ファンサ型地雷原”。踏んだら最後、全員好きになる』
潤『こえぇよこのあとがき!?ハーレムってそういうもんかよ!!』
作者:pyoco(読者よ、逃がさん)