第53話『俺、ヤスシ』
「才能を奪って、成り上がる!」
無職で底辺だった俺が、美少女ヒロイン達とともに現代社会を攻略していく物語、ぜひ覗いてみてください。
ちょっと空き時間に、俺の成り上がりハーレム物語をどうぞ!
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はぁ……。
今日もまた、上司に怒鳴られて、営業先では冷たくあしらわれ、コンビニに寄ればレジに忘れられる。
今日だって、老人の道案内をしてたら、冗談みたいに遅れ、取引先にめちゃくちゃ怒られた。
(……なんなんだ、もう……)
夜の帰り道。
人気のない裏路地で、俺はとぼとぼ歩きながら、愚痴をこぼしていた。
「ついてねぇなぁ……ほんと、ついてねぇ……!」
「真面目にやってるだけなのに……ほんと報われねぇ。
世の中クソだ!……はぁ……」
気分が沈みすぎて、思わずそこに転がっていた空き缶を、ヤケクソで蹴り飛ばした。
カコーン!
小気味よい音を立てて、空き缶が宙を舞う──が。
カコーン!!
蹴った缶が勢いよく何かにぶつかる音。
缶は見事に、道端に停まっていた黒塗りの高級車に直撃していた。
(……やった……完全にやった……!!)
ピカピカのボディに、ビリビリっと走る白い傷跡。
震える手を見下ろしながら、俺は絶望した。
やばい……ここは──
そう。
地元でも有名なヤクザの事務所前。
当然──
バンッ!
「オラァァァ!!」
ドアが開き、黒スーツにサングラス、見るからにアウトな雰囲気の男が飛び出してきた。
「てめぇ、どこのもんじゃコラァ!!」
コワモテヤクザが凹みを確認すると、鬼の形相で迫ってくる。
(ああ……詰んだ……)
胸ぐらを掴まれ、
「ワレェ! 舐めたことしやがって!」
(ああ……ついてない……ホントについてない……)
ガクガク震えながら、必死に謝る俺。
だが、完全に逃げ場なし。
その時だった。
「……ん?」
ふと、視界の端に違和感。
路地の隅、電柱の影から、妙に場違いな男が歩いてきた。
――黒Tシャツ。
――デカデカと「I LOVE もやし」のピンクプリント。
(……な、なんだ、あのセンス……!?)
冴えないどころか、異次元にダサい。
だがその男は、誰にも気づかれないようにするりと車に近づくと──
俺が缶をぶつけたところを、念入りに何かしている。
(は?……何してんだあいつ……?)
「ワレェ! 聞いとんのか! おお?」
「は、はいー聞いてます!」
その間にも、もやしTシャツの男は首を傾げたりしながら車に何かしている……。
(あいつ……面白がりやがって……さてはイタズラを……?)
「ワレェ、いい加減にせぇ!」
「……あっ! あれ……!」
俺はもやしの男を指差すが──
ヤクザは目もくれず、さらに激昂する。
「おぉテメェーが傷つけたんだろがァ!?」
(いや……イタズラされてるって……)
そんなやり取りをしている間に、もやしTシャツは満足そうな顔をして、そのままフラリと去っていった。
何事もなかったかのように、フラフラと。
(……え、え、あいつ行っちゃう!?)
思考が追いつかない俺を無視して、ヤクザは俺の肩をガシッと掴み直した。
「来いやテメェ!! 傷、確認させたるわ!!」
引きずられるようにして車のボディへ連れていかれる。
ゴクッ。
生唾を飲み込む。
「ほら、ここ見てみやコラァ──」
ヤクザの指が指し示したボディを、俺はおそるおそる見た。
──そこには。
ツルッツルに輝く、完璧な鏡面仕上げ。
傷、ゼロ。
(…………は?)
「……あ、あれ……?」
ヤクザも固まる。
「いや、確かに、さっき……いや……」
しどろもどろになりながら、額に脂汗を滲ませるヤクザ。
(……え、なにこれ怖い)
「……ま、まぁ……」
ゴホンと咳払いし、ヤクザは目をそらしながら言った。
「今回だけは……見逃してやるわ」
めっちゃ気まずそうに、俺の肩をポンと叩くと、そそくさと車に戻っていった。
バタン!
ドアを閉める音だけがやたらと大きく響いた。
……俺、助かった?
いや、ほんとに?
何もしてないのに?
思わず、さっきの黒Tシャツの男を探すが、もうどこにもいなかった。
ただ──
ビルの陰に消えていく背中だけが、ぼんやり見えた気がした。
* * *
コンビニの袋を下げながら、またとぼとぼ歩く。
夜風は冷たいけど、不思議と心はあったかかった。
(……世の中、悪いことばかりじゃないんだな)
缶ビール片手に空を見上げる。
星は見えないけど、それでも今日は、少しだけ世界が優しかった。
(もうちょっとだけ、頑張ってみるか)
そう思って、俺は歩き出した。
「よし、ついてない日も……たまには悪くない!」
笑った顔を、夜の風がそっと撫でた。
【あとがき小話】
ユズハ『……昼マックって、なんかこう……背徳感すごいですよねぇ~』
カエデ『せやせや。あの匂いに負けて食べてもうた時な、
体重計乗る瞬間に「あ、終わったわ……」って悟るんよな』
ユズハ『わかりますぅ~。あの“昼間からこれはアウトじゃない?”って罪悪感……
なのにポテトはやめられないんですよねぇ~』
ミリー『えー? ミリー、昼マックだーいすきっ!
ポテトもシェイクもバーガーも、いっぱい食べちゃうもんっ!』
ユズハ&カエデ『こいつ!!!!!』
カエデ『なんであんたは罪悪感のカケラもないん!?』
ユズハ『共感する気持ちとか、申し訳なさとか、ちょっとは持ってくださーい!』
ミリー『えへへ~!罪悪感もミリーのお腹に消えちゃった~っ♪』
ユズハ『消化すな!!!』
カエデ『ほんま、もぉ~~ミリーは“胃袋の背徳系ヒロイン”やで……』
ミリー『じゃあ今度、みんなでお昼マックしよ~っ♪』
ユズハ&カエデ『行くけどな!?』
作者:pyoco(結局全員行くの、好き)