第50話『俺、ミッチーランドを満喫した』
「才能を奪って、成り上がる!」
無職で底辺だった俺が、美少女ヒロイン達とともに現代社会を攻略していく物語、ぜひ覗いてみてください。
ちょっと空き時間に、俺の成り上がりハーレム物語をどうぞ!
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――パレード地獄を終えた俺に、休息は訪れなかった。
「潤様〜っ! あの観覧車、カップル専用みたいですっ! 潤様と二人で乗れたら私は……」
ノアが指差すその先には、煌びやかなイルミネーションに包まれた巨大観覧車。
するとミリーが駆け寄り、俺の腕にぎゅっと抱きつく。
「じゅんくんっ! こっちこっちー! ミリーね、あのメリーゴーランド! じゅんくんと乗りたーい!」
続いてカエデが擦り寄り、
「潤くん、うちはジェットコースターや! 叫んだらストレス発散やで〜!」
その声の先には、異様なオーラを放つアトラクションの看板。
【心臓の弱い方、高齢の方、幼児──その他大勢、自己責任でご乗車ください】
えっ……自己責任って、もはやエンタメ名乗っちゃいけないレベルじゃねぇの?
「潤さん、お化け屋敷もあるようですよ。……ふふ、怖がる潤さん……楽しみですね」
エンリが涼しい顔でパンフレットをめくりながら、不穏な微笑みを向けてくる。
あの、俺、まだ何もしてないよね?
するとユズハが俺の腕に飛びつき、耳元で甘ったるい囁き。
「せんぱ〜い! ユズハはぁ〜、先輩とぉ〜、二人きりでぇ〜、お化け屋敷入りたいですぅ〜」
「きゃーこわーい!って抱きついちゃったりしてぇ〜?」
おい、待て。
何、その可愛さに全振りした爆弾。
「もしかしてぇ〜、想像しちゃいましたぁ? 顔、真っ赤ですよぉ〜?」
ユズハがにっこり。
やめろ、ほんとやめろ。
視線が、視線が刺さる!
そんな俺に、ノアがピシッと指差す。
「潤様から離れてください! 潤様は、私とペアになるべきです。他は──補欠!」
「えーずるいですー! ねぇせんぱ〜い? ユズハとペア、嬉しいですよねぇ〜?」
「ミリーもじゅんくんと一緒がいいのー!」
「潤君、うちといこな? スリル満点で絆深まるでぇ?」
五人五様の押し寄せる欲望。
全員ガチ。
俺、サンドバッグ。
そこでエンリが、天使の微笑みで仲裁に入った。
「潤さんは……みんなのもの、ですから」
……は?
みんなの、もの?
俺、人間だよね!?
所有物じゃないよね!?
ツッコミを入れる間もなく、俺は左右から引っ張られ、背中を押され、首根っこを掴まれ、強制連行されていた。
まぁ──
こんなのも、悪くないかなって思ったのも束の間だった。
* * *
【ジェットコースター:ミッチードリームライド】
「ほら行くでー潤君!」
連れられてきたのは、
ミッチーランド名物──ドリームライド。
いや、名前めっちゃ可愛いけど、
注意書きに「自己責任」って普通書くか!?
てか、「搭乗には誓約書提出を求めます」ってどういうことだよ!?
ユズハが俺の腕に絡みつき、顔を覗き込んでくる。
「せんぱ〜い、もしかしてー? 怖いとかぁ? 今ならユズハちゃんが助けてあげてもいいですよぉ?」
「言うか!!」
俺は胸を張った。
この幾多の修羅場を潜り抜けた俺が、こんな子供向け遊園地の乗り物にビビるわけ──
──そう思ってた時期が、俺にもありました。
『きゃああああああああああ!!!』
甘かった。
嵌められた。
完全に罠だった。
気づいた時には、
俺は一人用の「特等席」──ジェットコースター先頭に座らされていた。
後ろからは、カエデとユズハの爆笑と、ミリーの黄色い悲鳴が重なる。
「きゃー潤くーん!」
「先輩、顔死んでるぅ〜!」
「じゅんくん、がんばれぇ〜!」
(うるせえぇぇぇ!!!)
ジェットコースターはギチギチと音を立てながら坂を上る。
視界には、地平線と──やたらくっきり見える地面。
……高ぇ。
これ、高すぎるって。
てか、景色見えた瞬間に冷静になるやつじゃない、これ。
ゴゴゴゴゴゴゴ!!!
落ちた。
世界が。
「もぉぉぉぉやめでええええぇぇぇぇ!!!」
俺の絶叫は、ミッチーランド中に響き渡った。
隣で、ユズハとカエデが腹を抱えて爆笑してるのが、逆にスローに見えた。
魂、置いてきたわ──。
『せんぱーい泣いてますぅ? 慰めてあげましょかぁ?』
ユズハが、満面の悪戯顔で俺の右腕にぶら下がってくる。
『潤君、きゃーって叫びすぎや! あんなん初めて聞いたわ〜!』
カエデが涙流して笑ってる。
くそっ、絶対今度は逆に泣かせてやる……!!
「次はミリーの番だよー! メリーゴーランド行くのー!」
ミリーとエンリに手を引かれ、辿り着いたのは──
【ミッチー名物・メリーゴーランド(馬車ver)】
「じゅんくんは、あのお馬さんねーっ!」
ミリーが指差したのは、白馬型のライド。
「ミリーとエンリさんは、こっちの荷馬車〜!」
俺が白馬にまたがり、
ミリーとエンリが後ろの荷馬車に乗り込む。
ポップな音楽が流れ始め、場が無理やり盛り上がる。
「えーいえーいっ!」
ミリーが腕を振ってノリノリではしゃぐ。
「えーいえーい♪」
エンリも微笑みながら合わせてる。
負けてられるか!
男としてここで乗らずにどうする!!
「よーっし!! えーイェーイ! えーいえーい! ふぉーふぉー!!」
「えーいっ! ふぉーふぉー!」
ミリーもエンリも楽しそうに返してくれる。
段々、音楽もテンポアップ。
盛り上がる俺たち。
(……いや、俺たち、だよな?)
そのとき、後ろから──
「ままー、みてー! あのおじさん、すっごく楽しそうー!」
「ほんとね〜。ああなっちゃダメよ?」
「うん、ぼく、やらないー! 恥ずかしいもん!」
え?
振り向くと──
ミリーとエンリは既に、女子トークモードに戻ってた。
俺一人だけ、白馬の上で、全力ハイテンション。
……恥ずかしいっ!!!
顔から火が出そうなまま、俺は白馬を駆け抜けるしかなかった。
ミッチーランド名物──【ミッチー恐怖の館】。
俺も名前だけは聞いたことがある。
なんでも、日本の「本当に怖いお化け屋敷ランキング」に載ってるらしい。
──が、俺は内心、ちょっとだけワクワクしてた。
普段は凛としたノア。
あの完璧超人が「きゃー!」とか「こわい〜!」とか、そんな姿を見られるかも――
「潤様、こちらへ!」
ノアが差し出す手。
「潤様、離れないでくださいね?」
……いやいや、エスコート完璧すぎだろ。
暗がりの中、ピシッと背筋を伸ばして、頼もしさ全開。
むしろ、俺がヒロインみたいな扱いされてるんだが?
「潤様……私だけを見ていてください」
(いや、怖いのお化けじゃなくて君じゃない?)
「ありがとう、ノア……。うん、怖くないや……お化け屋敷なのに」
ここ、恐怖を楽しむ施設だよな?
今、ただただノアの堅牢な守備力に安心してるだけなんだが。
「潤様……一生私と……」
「潤様、結婚式はいつにしましょう?」
……え?
「潤様……私以外、見ないでくださいね?」
おい待て、さっきからサラッとすごい単語混ぜてきてるよな?
「ちょっとノア? 今なんか、物騒なこと囁いてなかった?」
「いえ? ほら、潤様。もっと、近くに」
そう言って、ふわりと俺に寄り添ってくる。
「ノアって、こういうの平気なんだな……」
「はい。潤様……私がすべて、お守りしますから」
(いや違う、そうじゃない)
本来なら、もっと「ぎゃー!」「怖いよー!」ってなるところだろ!?
なのに俺の手をぎゅっと握りながら、涼しい顔で刷り込み作業してるんだけど!!
しかも、時々――
「潤様……一生離れません……」
ボソッと呟くのが、地味に怖ぇんだわ!!!
結局、俺は一度も「恐怖の館」でビビることなく、
ただただノアに密着され続けた結果。
(ランキング入りって何……?)
ミッチー恐怖の館、潤の心には一切恐怖を刻めず、ただノアの存在だけが焼き付いたのであった。
* * *
ジェットコースターとメリーゴーランドという魂削りイベントを終えた俺たちは、
ようやく、ようやく「休憩」という言葉に辿り着いた。
「潤さん、こちらへどうぞ」
エンリが、ミッチーランド内のラウンジに案内してくれる。
そこは──まるで別世界だった。
落ち着いたジャズが流れ、ふかふかのソファ、完璧な空調、そして──人がいない。
(ここ……天国かな……?)
俺は崩れるようにソファへ沈み込んだ。
天井を見上げる。何もない。
つまり、何も起きない。誰も叫ばない。誰も絡んでこない。
これが……これが文明ってやつか……!!
「じゅんくんっ!」
はい、終了ーーー!!!
ミリーがトコトコ駆け寄り、俺の膝に頭を乗せてきた。
「おつかれさま〜。ひざまくらサービスだよっ!」
──って、ミリーがされる側なのね?
「いや、サービスとかじゃ──」
言いかけた瞬間、右肩に何かが乗っかる。
「せんぱ〜い、マッサージさせてあげまーす♡」
ユズハだった。
──てか、俺がする側かよ……。
さらに左手に、冷たいジュースが押し付けられる。
「潤くん、これ、うちのスペシャルブレンドや! 一気飲みやで!」
カエデの無邪気な笑顔。
(いや、どんなブレンドかくらい説明しろよ!!
絶対ろくなもん入ってないだろ!)
追い討ちをかけるように、ノアがスッと隣に座る。
「潤様、これ……申し込み書です。どうぞ」
──なんの!?
(休憩とは!?)
「みんな──少し、落ち着きましょうか?」
エンリの柔らかな声。
穏やかに、天使のように微笑む。
──しかし。
そこには、圧倒的な威圧感があった。
空気が、ビシッと引き締まる。
彼女が一歩前に出るだけで、ミリー、ユズハ、カエデ、ノア。
全員の動きがピタッと止まった。
(なにこの支配力……エンリさん、前世、絶対王だっただろ……)
「潤さんは、たくさん頑張ったんですから。ゆっくり休ませてあげましょうね」
そう言って、エンリは俺の横にそっと座った。
──なにも押しつけない。
──なにも強制しない。
ただ、微笑んで寄り添うだけ。
(……あぁ、やっぱ、女神だわ)
俺は目を閉じた。
心地よい温度と、安堵の香りに包まれて──
しばし、本当に、眠りに落ちそうになった。
──そして、聞こえた。
「エンリさん、怒らせたら、あかんな……」
「せんぱい、エンリさんって、実は一番こわ……」
「潤様も……きっと、もうお気づきですよね?」
ヒソヒソと、耳打ちするヒロインたちの声。
(いや、全部聞こえてるからな!?)
ラウンジ休憩という名の天国(と地獄)を終えた俺たちが辿り着いたのは──
夜空に浮かぶ、ミッチーランド最大のランドマーク。
観覧車。
「潤様っ! あれ……カップル専用みたいですっ!」
ノアが指差す先には、夜空に浮かぶ煌びやかなゴンドラ。
「じゅんくーんっ! 一緒に乗ろーっ!」
ミリーが駆け寄り、
「せんぱーい! ユズハは〜っ、先輩のお膝がいいですぅ〜!」
甘えた声でユズハが腕に絡み、
「潤君、うちはぎゅーっとしながら乗るわ!」
カエデが笑顔で抱きつき、
「潤さん……寒かったら、私が温めますね」
エンリが優しく微笑む。
(……え?)
(このゴンドラ、密室だよな? 逃げ場ないよな??)
気づいたときには、俺はすでにゴンドラに押し込まれていた。
もちろん──全員セットで。
ゴンドラがふわりと浮かび上がる。
夜景がゆっくりと広がっていく。
「今日は楽しかったねー!」
ミリーが足をパタパタさせながら、無邪気に笑った。
「先輩の〜悲鳴をあげながらのジェットコースター、顔が酷かったんで〜写真買っときましたぁ(笑)」
ユズハがにやにやしながら写真を見せてくる。
(……うっ、確かに酷い)
写っていたのは、白目を剥いて、口をあんぐり開けた俺の姿だった。
「潤君、ありがとうな♪ またみんなで来ような〜!」
カエデがニコッと笑い、
「ええ、ぜひ。また皆で来ましょう」
エンリが穏やかに頷いた。
「そうだな……また来ような」
俺も、自然に笑顔になっていた。
会社も持ち直し、こうやってみんなと笑える日常が戻ってきた。
こんな、普通の幸せが、何よりも温かい。
しかし──
その空気を、たった一言が打ち砕いた。
「潤様……」
ノアが、静かに俺を見つめる。
「どうした、ノア?」
「この観覧車には──ある噂がありまして」
ノアはそっと視線を落とし、顔を赤らめた。
「その……てっぺんでキスをしたカップルは……永遠に結ばれると──」
時が、止まった。
今日一日、笑い合っていたヒロインたちの顔が。
にこやかだったその笑顔が。
一斉に──
獲物を狙う猛獣のそれに、変わった。
(え、ちょ、待っ──)
「潤様、こちらに」
「じゅんくん、こっちー!」
「せんぱーい! こっちですよぉ!」
「潤君、うちが先や!」
「潤さん……私と──」
俺を巡って、全員が一斉に迫ってくる。
「いーやーーーーーーーーーーーー!!!!」
俺の悲鳴が、ゴンドラの中に木霊した。
【あとがき小話】
作者『なぁ潤……覚えてるか?』
潤『何がだよ』
作者『前に言ったじゃん?ヒロインにてー出したら、カリブ海背泳ぎ横断回書いてやるって』
潤『あー……あの、俺の自由意志ガン無視の脅迫文句な。忘れてねぇよ』
作者『実はさ……GW、各ヒロインとのデート回、書くんだよね』
潤『………………あ?』
作者『つまり、ノア、カエデ、ミリー、エンリ、ユズハ……もれなく、てー出すイベントあります』
潤『おい待て、じゃあ俺カリブ海5往復か?背泳ぎで?魚雷撃たれながら?』
作者『当然だよ? 俺の作品だから、ルールも俺が決めるの。あと全距離GPSで管理するからズル禁止な』
潤『どこが作品のあとがきでGPS管理の話してんだよ!?完全にブラックな裏社会じゃねぇか!!』
作者『ちなみにね……すごく悩んだの。
13話に登場した“浦間サチコ”――あの悪徳占い師のババアとのデート回も挟もうかって。ちょっとだけ気ぃ遣ってさ』
潤『気ぃ遣った結果それ!? サチコって名前だけで不安しかねぇのに!?』
作者『でもね、やめた。優しさってこういうことだから』
潤『……お前の優しさ、地獄から生えてるの?』
作者『じゃ、“潤、地獄のGWデート連発編”、よろしくな!!』
潤『もはや本編より俺の寿命が気になる構成なんだが!?』
作者:pyoco(あとがき=潤制裁予告所)
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