第49話『俺、ワンダフルくん』
「才能を奪って、成り上がる!」
無職で底辺だった俺が、美少女ヒロイン達とともに現代社会を攻略していく物語、ぜひ覗いてみてください。
ちょっと空き時間に、俺の成り上がりハーレム物語をどうぞ!
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今日は会社の再出発を祝って、みんなでミッチーランドに来ていた。
まさか、こんな日が本当に来るとは。社長業はまだまだ落ち着かないけど、たまには息抜きも必要――だと、俺は信じている。たぶん。いや、信じさせてくれ。頼む。
「お土産コーナー、先に見てきますねーっ!」
開園と同時に飛び出していくヒロインズ。そのスピードたるや、すでにアトラクション。
俺が口を開く間もなく、四方八方に散っていく背中。声なんて、届くはずもなかった。
……いや、もうちょっと落ち着いて行動しろよ。せっかくの記念日なんだからさ。
「せんぱーい♪ こんなパンツありましたよー!」
何かをぶんぶん振り回しながら、ユズハがこっちへ走ってくる。その手にあるのは……え、なにこれ。
「ユズハが選んであげましたから、今履いてみますぅ?」
どう見ても犬の顔がプリントされた、謎すぎるボクサーパンツだった。
「履かん。断じて履かん。てか、誰向けなんだよこのセレクト……!」
続いて現れたのは、頭にウサ耳をつけてぴょこぴょこ揺らすミリー。
「じゅんくん!ミリーもお耳買ったのー! 可愛いでしょー?」
うん、ウサ耳は分かる。テーマパークだしな。
「じゅんくんもこのマッチョポリスメンの大胸筋パッドつけよーよー!」
……なんで方向性ぶっ飛んでんだよ!
「待て待て、どこの層狙ってんだそれ!? 何で俺が筋肉パッド装備しなきゃならんのだよ!」
後ろからぬるりと伸びてくる、カエデの腕。
「潤くんはこのカップル手錠、うちとつけなー?」
見た瞬間分かる。コレ、絶対トイレ行けないやつだ。逃げ場ゼロの監禁アイテム!
「即却下! どこの地獄の拷問グッズだよこれ!」
さらにトドメのように、まっすぐ迫ってきたノアがパンフレットを手に、涼やかに宣言した。
「潤様!こちらには貸し切り結婚式のプランがございます! お衣装合わせも本日可能と――」
「飛びすぎだろ話が!! 流れが完全にプロポーズ後なんですけど!!」
一人ツッコミラッシュ。めまいがしてきた……。
「潤さんは、あちらのベンチでお休みになってください。私たちで少し見てまいりますので」
エンリ……君が女神か。
指定されたベンチへと、ふらふら移動していく俺。背中ではヒロインズが再び盛り上がり始め、耳元では永遠に流れるテーマソング。
ミッチーランド、おそるべし。
* * *
どれくらい歩いただろうか。ふと、視界にぽつんと置かれた一体の着ぐるみが入った。
その姿は、日差しを浴びてぐったりとしぼんでおり――どこか、哀愁を漂わせている。
「……ん? 着ぐるみ?」
近づいてみると、どう見ても犬。耳がぴょこぴょこ、鼻がつんとしてて、尻尾もくりんとカールしてる。
あーこれ、“ワンダフルくん”とかいうミッチーの仲間キャラじゃなかったっけ? たしか人気投票124位とかで、ギリギリ生存ラインだったような。
「ちょっとだけ、触ってみ――」
「お疲れ様です! 写真会の時間です!」
「はぁ!? ちょっ――」
気づけば係員に両脇をがっちり固められ、着ぐるみを強引に被せられ――
──俺、今、犬になってる。
しかも周囲には、ずらりと並ぶキッズたち。小さな瞳が一斉にこっちを見つめている。
うわっ、これマジで“ワンダフルくんの写真会”じゃん!?
やばいやばいやばい、下手に動いたら夢ぶっ壊すやつだ!
「えーと……ワンワン?」
ぎこちない声と動きで、手を振ってみた。
【ユニークスキル発動:演者】
対象になりきり、そのキャラらしい動作・表情・声質を再現する。
※演技の完成度は使用者の知識と想像力に依存します。
首を傾げ、耳をピクピクさせ、尻尾(的な何か)を振ってジャンプ。
だが――
「ママ! ワンダフルくん、二足で歩いてるー!」
「こわい! ワンダフルくんが人間になってる!」
……まさかの逆効果。
「な、なんで!? 普通に犬やってるだけなんだけど!?」
二足歩行がアウトか!? じゃあ四つん這いになればいける!?
……着ぐるみで四足歩行とか、地獄以外の何物でもないんですけど!?
「よいしょ……うぐっ……せいっ……!」
息切れしながら、必死に四足歩行スタイルに切り替える。汗が滝のように流れ、視界はゼロ。呼吸もキツい。
「うわあ!ワンダフルくん、変な歩き方してるー!」
「ワンダフルウォークじゃなーい!」
「なんかキモい……」
な、なに!? ワンダフルウォーク!? 必殺技か何か!?
俺のはむしろ、ワンダフル四肢崩壊スタイルなんだが!?
脳内に浮かんだのは、あの伝説のホラー映画。
――そう、エクソシスト。
思い出したら身体が勝手に動いた。
四つん這いの状態から、背骨をミシミシいわせてグニャグニャにくねらせ、グリングリンと地を這うように前進!
これぞ、俺流“ワンダフルウォーク・カオスver(仮)”!
「キャーーーーッ!!」
悲鳴。いいえ、歓声でした。
「すごい!ワンダフルくん、バク転しそうー!」
「ガクガクしてるのがリアルー!」
なぜウケた。今のどこがウケた。
お前ら、感性ぶっ飛びすぎだろ!?
──とはいえ、助かった。拍手喝采されるワンダフルくん。俺じゃなくて、中の“彼”が讃えられてる気がして、ちょっと複雑だが。
……まだ続きます。
* * *
写真会をなんとか乗り切り、全力でゼェゼェ言っていた俺の耳に、さらなる地獄の鐘が鳴り響いた。
「パレード、出番でーす!」
「……まだあんのかよおおおおおおお!!」
魂の叫びもむなしく、俺はそのままワンダフルくんのまま、パレード列の先頭に配置された。
音楽が鳴り響く。装飾がきらめく。後戻りなど許されない――完全に、詰み。
「ハイ、ワンダフルくん、元気よくいってくださーい!」
……ああもう、やってやるよ!!
「ワンダフルくんーーー!!」
「こっち向いてー!」
子どもたちの歓声。俺は手を振り、跳び、回転し、スピンまで加えて踊る。
完全オリジナルの、ワンダフルダンス(俺解釈)。
……あれ? ちょっと楽しいかもって思った自分をぶん殴りたい。
蒸し風呂のような着ぐるみの内部。視界ゼロ。変なところに肩当てが食い込む。たぶん、さっきのバク転もどきで腰いった。絶対湿布必要なやつ。
「ワンダフルくん、汗だくだー!」
「本物だー!」
なんで“リアリティ”で感動されてんの!? 俺、役者魂見せに来たわけじゃないんだけど!?!?
途中、何度か足を滑らせかけたけど、スキル《演者》の補正なのか、体勢は神業レベルでリカバリー。っていうか、これ絶対中の人変わったとか言われるパターンだよね……。
それでも、俺は前を向いていた。全力でジャンプし、回転し、地面を転がる。
子どもたちは、笑っていた。歓声をあげていた。
それだけが、俺の支えだった。
──そして、ついにパレード終了の合図が響く。
スタッフが拍手で出迎える中、俺はバックヤードに転がり込んだ。
ゴロンッ!
着ぐるみを脱ぎ捨てた瞬間、全身から湯気が上がるレベルの汗が吹き出す。シャツもズボンも、絞れるどころか、洗濯機を2回回した後みたいな有様だった。
呼吸は荒く、体は限界。腕も、足も、腰も、すべてが悲鳴をあげていた。
でも――
「……終わった……俺、ワンダフルくん、完走した……」
その瞬間だった。
「じゅんくーん!!」
勢いよく飛び込んできたのは、ミリー。
「やっと見つけたーっ! もう、どこ行ってたのーっ!」
抱きついてくるミリー。うっ、汗が……いや今はそれどころじゃないか。
「潤さん、どこに行かれてたんですか?」
静かに、しかし確実に詰め寄るリア組の筆頭、エンリ。
『先輩〜、お土産はパンツじゃイヤですかぁ?』
またパンツの話かよ、ユズハ……!
『潤くん、勝手に消えたらあかんよ〜? ウチ、心配で泣きそうやったわ〜』
泣いてないやろその顔!
『潤様……もう二度と、私の目の前から消えないでください……』
あっ、なんかすごい本気な顔のノアが来た。
「ちょ、ちょっと待て、みんな……!?」
俺、そんなに心配されてた……?
「ちょっと、ワンダフルくんをリスペクトしてたわ」
『え〜っ!? 先輩が!? マニアックすぎますぅ〜!』
ユズハの目がギラギラ光る。やばい、何かスイッチ入ったぞ。
『ワンダフルくんって人気投票124位の……えっと……骨付き肉が好物のやつですよね〜?』
なんでマイナーキャラのプロフィールそんなに詳しいんだよ。
「……もう、なんでもいいよ。今日から俺、ワンダフルくんのファンになるわ」
『じゅんくんっ!じゃあ、ミリーとお揃いの耳もつけよっか!』
「断るぅぅぅぅ!」
──こうして、俺の“ワンダフルくん”初出演は幕を閉じた。
体に染み付いた汗と羞恥と筋肉痛が、この日を忘れさせてくれそうにない。
でも、不思議と――ちょっと、楽しかったかもしれない。
それが、演者の力なのかは知らないけど。
【あとがき小話】
作者『じゃあお待ちかね!魔法少女――いや、“魔女っ子リア☆彡”の変身シーン、どうぞッ!!!』
リア『……本気で、やるのですか?』
作者『本気と書いてマジだよ!頼むよリア……!俺の魂がこれを見ないと成仏できないんだ!!』
潤『いやお前まだ死んでねぇだろ。生きてるよね?』
作者『お願いぃぃぃぃキュピィィィィィンッ!!!』
リア『……はぁ……』
(※リア、目を閉じて一瞬だけ深呼吸)
リア
『……いきます。……あ、あくまで演技ですからね……?』
\★彡━━━━━━━━━━━━━━━/
リア『漆黒の夜に知性の雷!
ページをめくるその指先に、運命が踊る――!』
リア『知の魔導書、今こそ解禁!
魔女っ子リア――キュ☆ピ☆キュ☆ピ☆変身完了です……っ!!』
\━━━━━━━━━━━━━━━★彡/
(※魔法陣エフェクト出た気がした)
潤『…………』
作者『さいこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!(バンザイ土下座)』
潤『リア、今の……本気でやってたよな?しかも星飛ばしてたよな?』
リア『……死にたい……(顔真っ赤)』
作者『尊い……これは人類の叡智の結晶……!!俺のなかの魔力が浄化される音がする!!』
リア(小声)『……作者さん』
作者『へっ?(とろけ顔)』
リア『“完全消滅魔法”……詠唱、完了しました』
作者『──あっ』
(※数秒後、作者が光に包まれ転送されました)
作者:pyoco(魔力消失中。復旧未定)