第48話『俺、株主総会に立つ』
「才能を奪って、成り上がる!」
無職で底辺だった俺が、美少女ヒロイン達とともに現代社会を攻略していく物語、ぜひ覗いてみてください。
ちょっと空き時間に、俺の成り上がりハーレム物語をどうぞ!
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臨時株主総会。
ホテル最上階の大会議室は、重たい空気に満たされていた。
スーツの男たちがずらりと並ぶ異様な光景。取引先、株主、関係者、どいつもこいつも堅物のフルコース。
おまけに全員が、まるで“死刑執行ボタンのテスト中です”みたいな顔で、こっちをジロリと睨んでくる。
(いや、ちょっと待て……これ、絶対俺、処される側じゃん)
なんなら、俺が首輪つけられて壇上に上がるんじゃないかってレベル。
そんなんだったら犬の着ぐるみの方がよっぽどマシだったわ!
……笑いごとじゃねぇけど。
隣を見ると、みりーが俺の腕にぎゅっとしがみついている。
目が真っ赤だ。泣いたまま、まだ拭いてない。そんな顔で見られると、心が折れそうになる。
カエデは――珍しく静かだった。
腕を組んだまま、目を伏せている。いつもの「潤くん潤くん」な甘えた空気は一切なし。
あれ? これカエデの“怒る前”のやつでは……?
エンリは俺の背にそっと手を添えていた。
何も言わない。ただ、その手が「大丈夫」と語っていた。
そして、ノアの姿は――ない。
(ノア……なんで来てくれないんだよ)
その問いは、飲み込むしかなかった。
「さぁー皆様、お集まりのようですし。そろそろ始めましょうか」
壇上でマイクを握るのは、当然――三ツ森シン。
こいつが誰よりも堂々と“主役面”してるのが、マジで腹立つ。
いや、俺のイベントでなんでお前がセンター立ってんだよ。
「まずは今回の臨時株主総会の目的と、当社の現状についてご説明します」
資料の読み上げが始まる。
業績の悪化、不透明な資金流れ、人材流出、社内統制の弱さ――
次々に出てくるネガティブワード。
株主の顔が歪むたびに、俺の胃も捩じれていく。
(あああああ……これは……終わったやつじゃん……)
みりーが袖をぎゅっと掴む。
カエデが下唇を噛む。
エンリの手が、わずかに震えた。
そして――壇上の三ツ森が、俺を見た。
(……おう、分かってるよ。どうせ俺が締める番なんだろ?)
これは、俺が、
惨めに敗北宣言をする――その舞台だった。
ゆっくりと、一歩前へ出ようとしたそのとき――
「潤様! お待ちくださいっ!」
バンッ!!
会場のドアが激しく開かれる。
ギョッとした全員の目が、そちらを向いた。
現れたのは――ユズハ。
どこか誇らしげな笑顔で、手には紙袋。
何あのマックの袋…
「あ、間違えました! こっちじゃなくて……はいっ、証拠ですっ!」
――紙袋から出てきたのは、USBと書類ファイル。
その後ろから、リア。そして、ノアが続いて入ってくる。
「――その男、三ツ森シンのインサイダー行為の証拠を、持って参りました」
ユズハの言葉に、会場がざわめいた。
ついさっきまで俺を処刑しそうな顔だった株主たちが、一斉に書類を見始める。
「はぁ? インサイダー? 私からそんなものが出てくるとでも?」
三ツ森が、相変わらずの嫌味ったらしい笑みで返す。
「いえ、しっかりと――ここにあります」
リアがモニターを操作し、証言とデータを映し出す。
画面には、引き抜きの契約書、特定メールのやり取り、元社員の音声ログなどが表示される。
……え、地味に証拠力強すぎない?なんでうちに検察いんの?
「ちょ、ちょっと待て! こんなの俺じゃない! 引き抜きの契約書だって、誰が書いたかなんて分からな――」
「ええ、確かに“あなた”とは断定できません」
ノアの声は、いつも通り丁寧で穏やかだった。
でも、その言葉の奥には氷の刃みたいな冷静さがあった。
「ですが、少なくとも“誰かが意図的に仕掛けた”のは間違いありません。
そしてその結果、ここにいる株主の皆様の資産が脅かされていることも――事実です」
ノアが真っ直ぐに言い切ったその瞬間――
株主たちの目の色が、変わった。
三ツ森が、一歩引いた。
「そ、そんな……俺は……」
「そうだ! だからこそ社長は――責任を取るべきだろう!?」
三ツ森、反撃のつもりか知らんが、
今のお前、完全に“怪しいやつが焦って声荒げてるだけの人”になってるぞ?
そして、俺は思い出した。
昨日、三ツ森から奪ったスキル――
【証拠隠滅】
こいつがあったから、三ツ森はこれまで何度も逃げられてた。
でも今、それは俺のストックスキルに入ってる。
今の三ツ森は――スキルを失って、ただの悪事バレ待ちのおっさんだ。
(よし、俺もやるしかないな)
ゆっくりと、前に出る。
息を吸って、スキルを一斉に発動する。
【スキル発動】
・演者(リンク : ノア)
・魅力(Lv4)
・威圧(Lv4)
・悪意誘導(Lv8)
・笑顔共有(リンク:ミリー)
(もうやけくそだ……!)
『俺は! まだ社長として、頑張りたい!』
一言だけ。短い。でも――本音だった。
「はぁ〜? そんなワガママで会社のトップに居座る気ですかぁ〜? クックック……」
三ツ森が相変わらず煽ってくる。
お前ほんと、キャラブレないな。今すぐ煽り系Youtuber転職したほうが成功すると思うぞ。
『でも……まだ、みんなとこの会社を――諦めたくないんだ』
俺は真っ直ぐ言った。
すると――
「で? その覚悟とやらで経営できるんですかぁ〜? あっはっはっ……ははっ……っふ、ふふ……」
ん? おかしいぞ? なんか笑いが……変だ。
「……ぷっ、く、クック……あっははは! 社長がぁ~……はっはっはっはっ!」
(え、笑いすぎじゃね?)
肩が震えてる。顔が赤い。息が、上がってる。
なんかこう、“笑ってるんじゃなくて壊れてる”感じ。
(……ミリー? お前、まさか)
スキル欄を確認。
【笑顔共有】
・動揺している対象を“自分と同時に”強制的に笑わせる。
・※精神干渉耐性を持つ者には効果なし
(一見平和そうなのに……なんだこの物騒な才能は……)
俺が本気で叫んでるその横で、三ツ森が発狂みたいな笑い方してるの、
もはやコントだろこれ!?
そして、会場中が――俺と、狂笑している三ツ森を見比べていた。
会場の空気がピリつく。
いや、むしろ――笑い声が混じってきた?
「ひ、ひゃっ……ひゃひゃっ……あれ……? これ……本物じゃない?」
「本物の狂人だよ……社長やってる場合じゃないよ……」
「いや……あれと潤社長が並んでると……逆に潤さんの方がまともに見えてきたぞ……?」
(……よしッ!)
明らかに“比較対象が酷すぎる”効果で、俺の印象が“まとも寄り”に寄ってきている!
ありがとう、ミリー!
いや本当にありがとうミリー!
だけどやっぱりあとで説教はするからなミリー!
そして、俺の横で狂気をぶちまけていた三ツ森が――ついにバランスを崩して、尻もちをついた。
足をバタバタさせて、笑いながら「ち、違う! お前らが騙されてるんだ!」と叫ぶ姿は――
……完全に、アウトだった。
その瞬間、ユズハがこっそり俺に耳打ちしてくる。
「今の潤先輩、ちょっとカッコよかったですよ~? ……1.5割増しぐらいで」
「半端だな!? 2割乗せろよ!」
「2割はノアさんの“無言威圧”で上限取られてるんで~」
「そんな社内バフ上限あるのかよ……!」
そして、リアが真顔のまま、冷静にひとこと。
「三ツ森、意識混濁しています。救急車を呼ぶべきでしょうか?」
「ちょ、まだ呼ぶな!今もう少しで“敵”から“笑い者”になりきるとこなんだから!!」
「ふふっ……潤さんらしいですね」
エンリが柔らかく笑った。
それが合図のように、彼女はゆっくりと壇上へと歩き出した。
「では、私たちからも一言」
会場に再び静寂が訪れる。
さっきまで笑っていた株主たちも、その一声で姿勢を正した。
「私たちの会社は未熟で、たくさん間違えます。でも――絶対に、止まりません」
その瞬間、ドンッと大スクリーンが切り替わる。
映し出されたのは――芸能プロダクションの新設プロジェクト。
そこに並ぶのは、見たことのないロゴ。そして、モデルカット。
……あれ? どこかで見たような顔だな――
って、え?
「ノアじゃねぇか!!!!」
ドレス姿のノアが、完璧な笑顔でこちらを見つめていた。
ポーズ、目線、背景――プロそのもの。
「おいおいおいおい!? 聞いてねぇぞ!? 俺、このプロジェクトの中身すら知らなかったんだが!?」
横から、ユズハがニヤニヤしながら囁く。
「ふふ、サプライズってやつですよー? エンリさんがね、全部準備してたんです」
「いや、サプライズにしてはデカすぎるだろ!?
てかうちの看板女優、勝手にノアで決まってるのおかしくない!?俺、社長!!」
「潤様の知らないところでも、私は“仕事”していますから……当然です」
ノアが至極まっとうな正論で、俺を封じにきた。
誰か助けてくれ。俺、今この会社の“名ばかりトップ”になってる。
……でも、思う。
誰か一人でも諦めてたら――今日、この場に立てなかった。
誰もが、動いてくれていた。
俺が知らないところで。
俺が潰れそうな時に。
誰一人として――置いて行かなかった。
その事実が、体の奥から温かくこみ上げてくる。
その間にも、エンリは堂々とプレゼンを進めていた。
的確な数字と、計算された成長戦略。
それは理屈だけじゃなく、“感情”のこもった言葉で語られていた。
「……このプロジェクトは、潤さんと、私たちだからこそできる挑戦です」
俺はもう、何も言えなかった。
ただ――背中を預けていた仲間たちが、いつの間にか俺の前を歩いてくれていた。
「……まだ……っひゃひゃっ、まだ終わっ、ひっひゃひゃっ……て……ひゃはははは!」
あ、いたわ。
まだ一人だけ壊れてた。
三ツ森は完全に笑い転げたまま、椅子の下で転がっていた。
警備員が申し訳なさそうに近づいてきて、静かに彼の腕を取る。
「こちらでお預かりいたします」
「預かるって……書類かよ……」
「潤さん、静かに……笑ってますよ、あの人……」
「えっ、なに? “笑顔で退場した敵”って扱い? 最後に全部持っていくパターン!?」
警備員に引きずられていく三ツ森。
その背中に――誰も声をかける者はいなかった。
そして――
株主総会は、
社長続行と、新プロジェクトへの追加融資にて、静かに幕を閉じた。
勝ち取ったんじゃない。
“誰も諦めなかった”。
それだけだった。
いつもふざけてて、
やること全部がギャグで、
会社なんてどうせ潰れるって、どこかで思ってた――
俺が、最後に言えるのは――
『マジで、お前ら……最高だな。』
……ってことくらいだ。
【あとがき小話】
ミリー『じゅんく~ん! 夜更かし楽しいねぇ~! ねぇ、今からベランダで叫んでみよっか!』
潤『おう!「才能奪取!才能奪取ーッ!!」って叫んだら誰かスカウト来るかもしれん!!』
ミリー『うひゃー!それ最高ー!ミリーも叫ぶぅぅぅ!!』
潤『オイオイオイ、GWって自由の象徴だな!?法律よりテンションが勝つ時代だな!?』
ミリー『テンションが法律ぅ~!よし、次は“おでこ叩き合い選手権”しよ!』
潤『やってやんよ!俺のおでこは鋼だぞ!?』
カエデ『ちょ、ちょちょちょい待ち!!おでこ!?叩く!?お前らなに言うてんねん!!!』
潤『ん? カエデもやる? “三つ巴おでこ合戦”開催やで?』
ミリー『カエデちゃん、遅れたら“罰ゲーム”でおでこにキスマーク描くからね~?』
カエデ『なんで夜更かししただけでIQ下がるん!?
GW=脳の連休ちゃうぞ!?ツッコミが追いつかんわ!!』
潤『GWは自由だから!俺たちは夜の荒波をサーフィンするもやしライダーだ!!』
カエデ『もう黙れ潤ぅぅぅぅ!!』
作者:pyoco(ちなみに作者もテンションおかしい)