第47話『俺、頭を下げにきた』
コメントは、どんな形であれ嬉しいですね。
ちょっとした一言でも、読んでくれてるんだなって思える。
なので、よかったらお気軽にどうぞ。
本編のついでに一言添えてくれるだけで、めちゃくちゃ元気出ます
みつもりの事務所に足を踏み入れた瞬間――
目の前で広がるのは、まるで勝者のパーティ会場のような空気だった。
ふかふかのソファにふんぞり返り、グラス片手にくつろぐ男がひとり。
「おやおや〜? これはこれは、我らが“伝説の社長”様じゃありませんか〜?」
みつもりシンが、ニッコリとした“営業スマイル”で出迎えてくる。
……その笑顔が、死ぬほどムカつく。
「いやぁ〜、まさかほんっとうに来るとはねぇ! あれでしょ、今頃“あの時ハンコ押さなきゃ…”とか考えてるでしょ?」
「……」
「ひっひっひっ、図星ですかぁ〜!? やー、助かりましたよ! あなたのハンコ一発で、私の人生ひと山超えちゃって〜! まさに感謝感激雨霰! さっすが凄腕社長様! いや〜まいったまいったぁ!」
うるせぇ、黙れ。
心の中では何度もそう叫んだ。でも、口には出せなかった。
俺はダメ元で、ウインドウを開く。
【奪取対象:三ツ森シン】
・悪事:インサイダー/乗っ取り/詐欺
・スキル一覧:証拠隠滅(Lv6)/捜査遮断(Lv7)/株式適正(Lv6)/話術(Lv8)/印象操作(Lv7)/煽り(Lv6)/魅力(Lv6)
この対象から、ランダムに1つスキルを奪取しますか?
〔YES〕/〔NO〕
……これが全部あって、俺たちは負けた。
たとえ今、ひとつ奪ったところで――何が変わるってんだ。
俺は黙って、〔YES〕を選んだ。
奪ったスキルなんて、もうどうでもよかった。
ウインドウが静かに閉じる。
そして、俺は深く頭を下げた。
「……お願いします。あいつらの居場所だけは……壊さないでください」
背筋が折れるほど、額を床に近づけた。
これが、今の俺にできる“すべて”だった。
――だが。
「ん〜〜〜〜〜〜? なぁ〜んか、足りなくないっすかぁ?」
みつもりが、わざとらしく耳を傾けるようなポーズを取る。
「“誠意”って、頭下げるだけじゃ伝わんないんですよぉ〜社長ぉ〜? 他には? ねぇねぇ? なんか持ってきた? 感動スピーチとか?」
「……っ」
「まっさかとは思いますけどォ〜……手ブラで来ちゃった感じ? ははっ、ウケる! 社長自ら、敗北宣言だけしにきましたぁ〜!? そんなの、惨めっていうんだよ? わかる?」
煽りが止まらない。
いや、もう“煽り”というより、“徹底的な踏みつけ”だった。
「そ〜れにぃ〜……守るとか言ってたよねぇ? 仲間? 部下? ハーレム? ははっ! アレ? おっかしいな〜? 誰も一緒に来てないよぉ?」
言葉が、刃みたいに突き刺さる。
全部、図星だったから。
「いいっすね〜これ! 明日の株主総会、ぜっっったい見応えありますよぉ〜! “社長自ら、退任をお願いに来ました”って、最高の話題性!」
「……っ」
「引退スピーチ? やろやろ! やっちゃいましょうよ! 最後に“お涙頂戴”かまされたら〜……そっから私が、ハイ乗っ取り〜ってなったら、劇的すぎません?」
「…………」
「なーんにもできないくせに、最後に頼るのが“お願い”だけって、すごいよねぇ〜。いやあ、尊敬するっスわぁ」
俺は――ただ、黙って、頭を下げ続けることしかできなかっ
「いや〜でもね、ほんっと楽しみなんですよぉ、明日の株主総会!」
みつもりは腕を組み、にやにやと笑いながら俺を見下ろす。
「だってさぁ? “無能のレッテル貼られて退任する社長”って、なかなか生で見れるもんじゃないっしょ? てか、俺、明日ぜっっったい笑っちゃうから! 堪えられる自信ない!」
「会場の空気も最高でしょ? ざわざわしてる中、満場一致で“社長解任”だもんねぇ? そりゃ〜拍手喝采! 大喝采!」
「あなたが締めの挨拶で“ありがとうございました”なんて言った瞬間、会場ぜったいクスクス笑い出すよ? 俺も一番前の席で大爆笑してる予定だから! ちゃんと見ててね?」
「はぁ〜〜、想像するだけで気持ちいいわ〜。あ、明日は録画カメラも入れとこっかな? “レジェンド社長の最後の姿”ってね? あはははっ!」
……全部、わざとだ。わかってる。
でも、それでも。
俺は何も言えなかった。
先日頂いたコメントへの返信もしましたが、改めてこの場でも説明させてください。
この作品の目標は、「面白いと言われたい」とか「読まれたい」とか、そういう評価ではありません。
もちろん、そう言っていただければ嬉しいに決まってますが――
それよりも何よりも、
ヒロイン達を好きになってもらえること。
この子、可愛いな。
この子のセリフ、好きかも。
そんな風に思ってくれる方が、一人でもいたら、それだけで作者冥利に尽きます。
キャラを前面に出した構成になってるのも、全部そのため。
この小説は、“ヒロイン達を引き立てるための舞台”なんです。
最終的には「この子の同人誌描いてみたい」と思ってもらえるくらいになれたら……なんて夢もありますが、まぁ、それは夢のまた夢でしょうね。
でもそれでも、熱量はキャラ9:小説1。
完全にそっちに偏ってます。
正直、生粋の読者さんや小説好きな方にはウザがられるかもしれません。
でも、それでもいいと思ってます。
創作って、自分の「好き」を形にするためのものだと思うから。
たまたまそれが、小説だった。
だから、この場所でやってます。
嫌われても、理解されなくても、それは受け止めます。
でも、一人でも「このキャラのここが好きだ」って思ってもらえたなら――
俺は、やってよかったって胸を張れます。
本当に、読んでくれてありがとうございます。