第44話『俺、社長だけど空気扱い』
「才能を奪って、成り上がる!」
無職で底辺だった俺が、美少女ヒロイン達とともに現代社会を攻略していく物語、ぜひ覗いてみてください。
ちょっと空き時間に、俺の成り上がりハーレム物語をどうぞ!
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「では本日は、“今最も注目されているベンチャー企業”の現場に迫るということで……こちらが、話題のセキュリティ&地方創生企業『悪党リクルートエージェント』さんです!」
朝、出社したら――会社の前がテレビ局になってた。
いやマジで。カメラ、照明、音声、台本らしき紙を持ったアナウンサーまでいる。
え、なに? なんか俺、バズった? 急に芸能人枠??
「……あ、はい。次は社員さんの導線に合わせてカメラ回しましょう」
スタッフがバリバリ準備中。
完全に“番組収録”って雰囲気だ。
俺、当然のようにそこを通過し――
(ふっ、いよいよ俺の時代が来たか……)
社長としてインタビュー。俺の名言がテレビで全国へ。
そして会社の未来を語る俺の姿に、視聴者は――
「すみませーん! そちらの社員さん、お話うかがっても?」
……ん?
俺……呼ばれた?
「地方の農業改革、警備事業、Vtuber進出と、広く展開されてますが、社員として見た社長はどんな方ですか?」
……あれ? 俺、社員枠?
いやいやいやいや、違うやろ!
俺やがな!? その“社長”っての!!
「実はお――」
「よう、坊主。今日も嬢ちゃんら、頼んだぞ〜」
え?
後ろから現れたのは、警備部の田村さん(通称:ゴリラ先輩)。
黒スーツにサングラス、声デカいし怖いけど中身はチョコ好きな優しい人。
「取材中だったか? おう、俺でええならいくらでも話すぜ!」
アナウンサーの食いつきがエグい。
「おお〜頼もしい! 社員歴は長いんですか?」
「へっ、長いも何もよ――」
田村、語り始める。
「俺が社長に惚れたのはな……ヤクザどもに囲まれてたときだ」
「目の前で組を潰して、こう言いやがったんだ。“俺についてこい。正攻法で世界を取らせてやる”――ってなァ!」
「くぅ〜〜っ、あんときゃ痺れたぜ……!」
……誰だよそいつ!?
いやマジで、どの世界線の俺だよ!?
そんなイキり社長やってた記憶、微塵もねぇぞ!?
てかあんた普段、「嬢ちゃん頼んだぞ〜」しか言ってなくね!?
「それから俺ァ、この人に一生ついてくって決めたんだよ。社長は、俺の――英雄だ」
完全に“物語”になってるやん。
BGM鳴ってない? 感動テロップ流れてない?
スタッフ「これ……採用ですね。神回だ」
無理無理無理。流れる流れる。誤情報が全国ネットで流れる。
アナウンサー「次の方いらっしゃいますか〜?」
……いや、俺もういいです。
取材の邪魔にならないよう、会社の中へ静かにフェードアウトする。
俺、空気読めるし。
涙なんか――流してないし……。
******
「うちの会社、めっちゃテレビ出とるやん!」
カエデがソファに寝転がりながら、スマホをぐりぐりスクロールしてる。
顔はニッコニコ。たぶん今、3秒先の未来が楽しい。
「農業コンサル事業の特集やって〜、セキュリティの密着映像もバズってて〜、今度はVtuber進出やろ? そら注目されるっちゅう話やで?」
「……まぁ、そうなんかな……」
俺はというと、部屋の隅で体育座り。今日の“名ばかり社長ショック”が意外と効いている。
「なんですかそのテンションは〜? もっと胸張ってくださいよ〜? 先輩がいなかったらこんな会社できてないんですからね〜?」
ユズハがクッション抱えて、俺の目の前にドーン。
いや、ほんと物理的に近いって。あと顔近い、セーフティディスタンス守って。
「それに……じゅんくんがいたから、ミリーは笑えるようになったんだもん!」
ぴょんっと跳ねるようにミリーが飛びついてくる。
満面の笑顔で、ぎゅうっ。
いや、かわいい。けど近い! 重い!(物理的に)
「潤君はな〜、なんもしてへん思ってるかもしれへんけど、そんなんウチが許さんで?」
今度はカエデがスマホ片手に起き上がり、ニヤッと笑って見せる。
「社長ってのは、前に立って、迷ってる人の背中押すんが仕事や。せやから、潤君がちょっとフラフラでもええ。私らが支えるから、気にすんなや」
くっ……そういうことだけキレイに言ってくるの、やめろって。
フラグみたいなこと言うなって。泣きそうなるやろ。
「潤様」
最後に、ノア。
いつも通りピシッと正座、静かに、でもはっきりと。
「この先も……どうか、私たちの“旗”でいてください」
一瞬、時が止まる。
いやいや、名言出すタイミングか!
俺、さっきまでインタビューもスルーされた一般社員なんだけど!?
だけど――
みんなの言葉が、じわじわ心に染みてくる。
そうか。
俺が作ったわけじゃない。
だけど、いつの間にか、ここは“みんなの居場所”になってた。
俺がふらふらでも、なんとなく前に立ってたから、こうして一緒に笑えてる。
なら――守るしかないやろ。こんな、最高の仲間たちを。
「おーい、潤さーん。お昼どうする?」
――そのタイミングで、ドアの外からエンリの声。
「今日のランチ、取材入ってますから、メディアの方も来ますよ?」
マジか。またかよ。まだ終わってなかったんかこの日。
てかランチにまで取材て。俺、今日だけで何枠こなしてんの?
「……俺、いつから芸能人扱いになったんだ……?」
そう呟いて、頭を抱えた。
*******
そして昼過ぎ――。
「潤様、本日最後のご予定です。投資会社の方が来られています」
ノアに案内され、俺は応接室に向かった。
そこにいたのは――
三ツ森シン。例のファンド会社、スリーシグマキャピタルの代表。
スーツ姿、清潔感、立ち居振る舞い。なにからなにまで完璧なビジネスマン。
「改めまして、三ツ森と申します。今日は短い時間ですが、御社の未来についてご相談できればと思いまして」
「……未来っすか」
「はい。御社の勢い、社会貢献度、そして“拡張性”。このまま上場すれば、国内外からの信頼を一気に得ることができます」
まるで、投資先の“理想形”みたいに語るその姿は――胡散臭さゼロ。
というか、説得力がすごい。
「でも、うちってまだベンチャーですし……そんなに早く上場って現実的なんですかね?」
「もちろん、即断はしません。ですが、準備段階として、“株式の一部だけ”を譲渡いただければ……それだけで市場の評価は変わります」
そう言って出してきたのは、薄い紙束。
パッと見、ただの概要資料。
「これは……?」
「株式の一部をスリーシグマキャピタルが“保持する”というだけの確認書です。代表権や経営には一切口を出しません」
三ツ森は、にこっと笑った。
その笑みが――なんだろう、怖いくらいに“信用できそう”だった。
「……皆さんにもお配りしているので、必要であれば事務局に提出するだけで大丈夫です。もちろん、サインは任意です」
そう言って、さらっと差し出された印鑑欄。
「あー、はいはい。ふつうの確認ね……」
書類の文面は細かい。言ってることはよくわからない。
でも、全体の空気が「今、これにサインするのが流れ」みたいな雰囲気で。
俺も思わず、手を伸ばして。
ぺたん。
……ハンコ、押しちゃった。
「――ありがとうございます」
笑顔の三ツ森が、ゆっくりと書類を回収する。
ノアが、背筋を伸ばして控えめに手を挙げた。
「潤様、それ……後ほど確認させてくださいね」
「え? まぁ、別にいいけど……」
そのまま、応接室のドアが閉まった。
静かな空気。
でも、誰も疑ってない。
みんな、“いい出会いだった”って思ってる。
そして会社は、明るく、好調に進んでいく――。
……このとき、誰もまだ気づいていなかった。
そのハンコが、“始まり”だったことに。
【あとがき小話】
ミリー『ねぇねぇ、読者さ~んっ♪』
ミリー『ミリーね、本編ではまだまだ甘えたりないのっ! だから……』
ミリー『“ブックマーク”、してくれたら……ミリー、もっといっぱい甘えちゃうからねっ♪』
潤『……おいミリー、さりげなくご褒美みたいに言ってるけど、それ“おねだり”っていうか“脅し”に近いからな?』
ミリー『えへへっ、潤くんがヤキモチ妬くのも、ちょっと嬉しいかも~♪』
潤『いや妬いてねぇよ!? あと俺より読者に構うのやめろ!!』
ミリー『じゃあ、潤くんもちゃんと“ミリーのお願い”、聞いてくれる……?』
潤『ぐっ……ずるい、この無邪気攻撃……!!』
ミリー『えへへっ! というわけでっ!
“ミリーをいっぱい甘やかしてくれる人”は、ぜひブックマークお願いしま~すっ♪』
作者:pyoco(ミリーに甘えられる人生がほしい)