第43話『俺、なぜかお泊まりイベント発生中』
「才能を奪って、成り上がる!」
無職で底辺だった俺が、美少女ヒロイン達とともに現代社会を攻略していく物語、ぜひ覗いてみてください。
ちょっと空き時間に、俺の成り上がりハーレム物語をどうぞ!
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夜。
部屋の照明が、いつもよりやけに眩しく感じる。
というのも――今、俺の部屋には、
「潤様、お風呂、先にお入りくださいませ。タオルはそちらに」
「じゅんくん、これ、お風呂あがりのもやしアイスー!」
「潤君、うちの差し入れな〜。冷えたチューハイと、ガーリックもやし炒め!」
「先輩っ! ユズハが布団の準備しておきましたよ〜っ!」
「うふふ、潤さん……今日くらいは、ゆっくりしてくださいね」
――この地獄の五重奏が展開されているわけで。
いや、待ってくれ。
今日は、**“俺一人の予定”**だったよな?
いつから俺の部屋は深夜アニメの共同生活回になったんだ……。
時を遡ること、数時間前。
「うわっ、傘……ない」
夕方。仕事帰りに寄ったスーパーで立ち尽くす俺。
空はどす黒く、ゴロゴロ鳴ってるし、あっという間にバケツひっくり返したみたいな土砂降り。
(いや、傘ぐらい持てよ俺……)
家まで徒歩30分。
ずぶ濡れ覚悟してたその時――
「潤様!」
聞こえたと思った瞬間、車のドアが開いてた。
運転席から顔を出したのはノア。
黒のワンボックス。もちろんうちの社用車。
「早く乗ってください! 風邪引きますよ!」
「えっ……いや、あの……」
「ほらっ、早くっ!」
断るスキを一切与えず、俺は車内へ引きずり込まれた。
……そしてそのまま。
――ノアの判断で、**“他のヒロインも迎えに行く”**という暴挙が始まった。
カエデはちょうど居酒屋からの帰り道でテンションMAX。
ミリーはVtuberの打ち合わせ帰りにずぶ濡れになって泣いてた。
ユズハは何故か偶然ノアの後ろを歩いていて、
「やっぱり〜! 潤先輩だと思ってましたぁ!」
とか言いながら当然のように同乗してきた。
エンリは途中で合流したが、
「潤さんが風邪を引くかもしれないと聞いて、いても立ってもいられなくて……!」
と、謎の使命感で着いてきた。
――そして今。
俺の家には、5人のヒロインたちが揃い踏み。
しかも、自然な流れで**「泊まる」**という結論に至っていた。
(……なんで?)
ソファの端っこで固まる俺。
テーブルには、コンビニお菓子・チューハイ・もやし尽くしのメニュー。
誰も俺に確認してないのに、完璧に“ホームパーティ仕様”。
「ほら潤君、乾杯するで〜! 今日も生き延びたことに感謝や!」
「え、今日ってそんなサバイバルだった……?」
「先輩〜、ユズハは潤先輩にぎゅーしてもらえたら、それだけで元気出ちゃいますけど〜?」
「却下です」
「却下早っ!」
ユズハのぎゅー提案が秒でノアに切り捨てられた。
こういうの、見慣れてきた自分が怖い。
(でも、泊まりって、マジで……?)
風呂は一つ。布団は一組。
どう考えても、まともに全員寝かせられないんだが?
と、思っていたら――
「先輩! 布団、二人分しかありませんでした〜!」
「よっしゃ潤君、うちと同じ布団な!」
「えっ?」
「潤様には私の分をお譲りしますので」
「……俺、寝かせてもらえるんですか?」
――修羅場の香りが、濡れた窓越しにじわじわと漂っていた。
「はい! というわけで、お風呂順番じゃんけん大会やりまーすっ♪」
ミリーの声が響いた瞬間、場の空気が“修羅場モード”に突入した。
いやいや、なにその地雷スイッチ。
もはや風呂が戦場。タオルが武器。
「じゃあ潤様が最初で」
「潤くんは最後や! うちが最初にもらうで〜!」
「いやいや、ユズハが先でしょ? 先輩に一番いい香り届けたいし〜♪」
「……むしろ、全員シャワー禁止で良いのでは?」
「それは論外ですノアさんっ!」
全員ガチすぎて逆に怖い。
もうジャンケンしろよ!って言いたいけど、誰一人として譲る気ゼロ。
そのとき、なぜか視線が俺に集まった。
「潤さんが、決めてください」
「潤様のご判断なら従います」
「じゅんくんの指名なら、ミリー、誰にでも負けてあげるっ!」
「せんぱ〜い? 誰が一番、癒されそうですか〜?」
「潤くん、選ぶんやで? 地雷踏むんやで?」
――詰んだ。
地雷原のど真ん中で、センサー付き地雷を4本同時に踏んだ気分。
どこにも逃げ道がない。
「え、えっと……じゃあ、年齢順で」
そう、俺は現実から逃げた。最大限に曖昧な安全策。
「じゃあエンリさんから!」
「異議なし!」
「ふふ……ありがとうございます、潤さん」
エンリが優しく微笑んで、風呂場に消えていく。
……助かった。心底、エンリで良かった。
その後――
なんとか無難に順番が決まり、風呂問題は回避。
だが、地獄はこれで終わらなかった。
「じゃ、寝る場所どうする〜?」
ミリーが布団をポンポン叩きながら聞く。
それは俺の布団。唯一の、俺の聖域。
「潤様はこちら、私のブランケットで」
ノアがシルクっぽい寝具を差し出す。お前いつの間に持ってきた。
「潤くん、そっちあかんて。ノアちゃんのやつ、触れたら魂持ってかれそうな気配あるやん?」
「いや〜、先輩はユズハと同じ布団が安眠できるってこの前言ってましたし〜♪」
「じゅんくん! ミリーのおなか、あったかいよっ!」
聞いてない。誰も、俺の話を聞いていない。
誰も“潤は一人で寝たい派”ってこと、思い出してくれない。
てか選択肢が「誰と寝るか」であって、「どこで寝るか」じゃないのおかしくないか?
「じゃあ、潤さんはソファにしましょうか?」
エンリだけが慈悲深い。だが――
「え、それだけはダメですっ!」
「潤様が冷えるなんて、論外です」
「じゅんくんと別々なんて、イヤ〜!」
「ソファで寝かせるなんて! ダメですダメです!」
まさかのエンリ提案すら却下される始末。
結果――
最終的に、ジャンケンで俺の“隣”の権利を決めることに。
そして――
勝ったのは、ユズハだった。
「せんぱ〜い、ありがとございまーすっ!!ユズハにぃ変なことしないでくださいよ〜♪あっでもでも少しはしてくれても〜」
やらんわ!
そんな俺を無視し…ユズハは…
全力ガッツポーズでテンションMAX。
いや、もうちょっと静かにして。
布団に入る前に勝利の舞いとかやめて。ベッドが揺れる。
「……潤様の隣、ユズハさんですか」
ノアの目が死んでる。あと手が震えてる。たぶん怒りゲージ貯まってる。
「まあまあ、順番や順番! 明日はうちやな!」
「えっ、これローテーション制なん……?」
「先輩〜、一緒の布団うれし〜♪ えへへ、あったか〜い♪」
くっつくな! 腕を絡めるな! 息を耳元にかけるな!
いや、ちょっと待て。やばい。近い。距離感どこ行った。
(俺、明日の朝、ちゃんと目覚めるかな……?)
――修羅場の夜は、まだ始まったばかりだった。
深夜二時。
俺は、起きていた。
いや、正確には――寝られなかった。
「すぅ……すぅ……んふふ〜せんぱい〜……あったかい〜……」
右腕に、柔らかい何かが絡みついている。
しかも微妙に動いている。しかも無意識だ。
「……ん? 先輩? もう寝ちゃいました〜?」
やばい、起きてるのバレた。
「えへへ〜……じゃあ……ユズハが添い寝でぎゅーしてあげるね〜……」
ぎゅー、じゃない!それ普通に抱きついてるからな!
距離ゼロどころか、もはや俺のパーソナルスペースが全消去されてる。
てか暑い。物理的に暑い。
「……ふふ……先輩……いいにおい〜……」
いやいや、鼻を押し付けるな。吸うな。嗅ぐな。人間をアロマ代わりにするな。
俺は全力で寝たフリモードに入る。
しかし、ここで安心してはいけない。なぜなら――
ガチャッ……
ドアが、ゆっくりと開いた音がした。
(うわ、まさか……来た……!?)
そっと薄目を開けると、そこには――
ノアが立っていた。
しかも、真顔。
「……巡回に来ました」
巡回!?
警備員か! いや、ある意味一番の脅威ではあるけども!
ノアはゆっくりと部屋に入ってきて、俺のベッドの横で止まる。
そして、そっと――
「……潤様。……寝ていらっしゃいますね」
語尾にほんのり殺意混じってません?
俺は死んだフリ継続。
ノアは微動だにせず、じーっと俺とユズハを見下ろしていた。
その姿はもはや夜の女神というより、完全に“深夜の地縛霊”。
しかし、彼女は何もせず――一言だけ残して去っていった。
「……明日、覚えていてくださいね」
こっわ!!
あのトーンで“覚えておいてください”って、裁判の証言か何か!?
ようやくノアが去ってホッとしたのも束の間――
「……じゅんくん? 起きてる?」
今度はミリーだ!
どこから湧いた?!
てか君の寝床、反対側じゃなかったっけ!?
「ミリーも混ざりたくて〜……ダメ、かなぁ?」
ごめん、囁くな。距離感が0センチ。目が合ったら魂持ってかれそう。
しかも、なぜか寝巻きの上から猫耳つけてる。どこに隠してた。
「ユズハちゃんばっかズルい〜! ミリーもじゅんくんと……ぎゅっ……」
って、こら! やめろ! 挟むな! サンドイッチ寝具は俺が潰れる!!
そこへ――
「やかましわっ!!」
バッ!と電気がついて、カエデ乱入。
チューハイ片手に立ってるその姿は、深夜の番長感すらある。
「アンタら! ここ潤君の部屋やで!? なに占拠しとんねん!」
カエデの声に、ミリーもユズハもビクッと反応して離れる。
「ていうか潤君、寝れてへんやろ!? 無理に笑ってんの、バレバレやで!」
うっ……なんか、カエデだけめっちゃまともに見える……。
いや、錯覚か? 幻覚か?
「もうええ! 潤君、こっち来な! ソファ空けといたから!」
「え、マジで? 天使? 救世主?」
俺は迷わずカエデの後ろについていく。もはや脱出劇。
――そしてリビングのソファに到着。
やっと、やっと安らげる……!
「……って、あれ?」
「……潤さん?」
そこには、毛布をかぶったエンリがいた。
「え、あの……もしかして……」
「ふふ、潤さんが夜中に逃げてくると思って、待ってました」
完全に張られてた!!!
「さあ……どうぞ。こっちの毛布、分けてあげますから」
おそるおそる隣に座る俺に、エンリが微笑みながらそっと肩を寄せてくる。
……癒し系ヒーラーのはずなのに、今この流れでは一番重い気がする。
「潤さん……一緒に、ぐっすり寝ましょうね?」
お、おう……。
こうして、俺は。
ノアの警戒。ユズハの密着。ミリーの乱入。カエデの脱出ルート。そしてエンリの包囲網――
あらゆる修羅場を越えた結果。
……たぶん、今夜も寝られない。
【あとがき小話】
作者『本編……お泊まり回だってさ……ふーん……へぇ~~……なるほどねぇ……』
潤『お、おい……その笑顔、全然目が笑ってねぇぞ……?』
作者『……藁人形と五寸釘……準備しておこう……』
潤『おい怖いって!!なんで!?なんで作者が俺に呪詛飛ばしてんの!?』
作者『だって! 俺だって潤の立場になりたいんだもん!!
一緒にお布団並べて!「おやすみなさい」って言われて!夜中にそっと手握られて!』
潤『言語化が生々しいんだよ!!あとこの人ガチで妬んでる!!』
作者『あのシーン書いてるとき……キーボード叩きながら涙出たよ……!
なんで俺じゃないんだ……って……!』
潤『お前が俺を生み出したの!!その恋愛も全部自業自得!!』
作者『潤様(呪)潤様(呪)潤様(呪)』
潤『名前書くな!!藁人形に俺の名前連打すんな!!』
作者:pyoco(枕を涙で濡らしながら本編を書きました)